おとぎの世界で

桃青

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始動

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 私は時計を見ることが恐ろしかった。もし時が止まったままなら、私たちはどうすればいいのでしょう。私がなかなか時計を直視できず、大部屋の中で時計に背を向け、立ちすくんでいました。するとライが言いました。
「ほう」
「……ほう? 」
「トイさん、時刻は十一時五分ですな」
「えっ」
 彼の言葉に釣られて、思わず時計を見ると、一番恐れていた事態が起きていました。時が、止まったままだったのです。
「……私達、どうすればいいのでしょう」
 私が呆然としてそうぼやくと、ライも、
「さあ」
 と言います。私たちが微動だにせず、ただただ時計を見つめていたその時。
 時計の秒針がまず、タッ、タッ、と動き出しました。最初はゆっくりと。それからどんどんペースが上がり始め、ボーン、ボーン、というけたたましい音と共に、ぐるぐると全ての針が回りだし、ぴたりと五時を差したところで、普通の時計のペースを取り戻し、穏やかに、一定の速さで。

 再び時を刻み始めたのです。
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