おんなのこ

桃青

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18.おんなのこ4

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「うわあ、そんな暗いテンションにならないでください。マリアさんは、十分奇麗だと思いますよ」
「私が、奇麗?」
「はい。いつ見てもメイクばっちりだし、愛らしい服を選んで着ているし。女の人としての努力をしているなというか。マリアさんは色白だし、メイク映えもするから、奇麗だなと思っていました。私にはできない努力です」
「私、九十キロもあるのよ」
「私も、六十五キロはあります」
「私を好きな男は、私ではなく……、私の持っているお金が好きなだけ」
「卑屈になってはいけませんよ。自信って大切だなって、最近時々思うんです」
「自分について、自信を持つこと? 」
「そう。自分に自信があると、馬鹿みたいなことで考えすぎたりしないし、アホみたいなことで落ち込んだりしないと思います。そういう人が羨ましくて、凄く凄く、自分がそうなりたくて」
「男に振られても、相手に見る目がないと思えるような? 」
「そう! そんな感じ。なんかカッコよくないですか、女としても、人間としても。あ、このコーヒー、うまーい」
「自信か……。そう言われると、私って自分を誇ることができないようなことばかり、している気が―」
「そうですか? 」
「どちらかと言うと、闇属性の人間、みたいなね」
「闇属性。闇属性の人間とは、どんな人でしょう? 」
「表舞台に立てない人のことよ。ナツの知らない世界の話」
「闇を捨てて、太陽の光を浴びよう。という訳にはいかないものですか? 」
「どのみち、闇の記憶は一生自分に刻まれたままだわ」
「黒歴史みたいな、そんな感じなのかな……、それって」
 マリアはコーヒーの味わいをゆったりと楽しみつつ、微笑んで言った。
「でも、女っていいわよね。不毛と思える話を、正々堂々と女友達に愚痴れるのよ」
「本当にそうですよね、ふふっ」
 そこでお互いの皿が空になり、コーヒーを飲み干したことを確認すると、店を出ることに決めた。

 二人は蝶のようにフラフラと、様々な店を出入りした。マリアの発達した可愛いセンサーと、ナツの身軽な行動力が結びつけば、二人は無敵である。女の子の感覚全開で楽しい時を過ごし、厳選したものをちょいちょいと買ってゆく。マリアは良く笑っている自分に気付き、とても驚いた。ホストといる時とは全く違う、ナチュラルな空気が今ここにある。
 これって、とても素敵なものね。
 通路を歩いている時、ふとナツが言った。
「女って、いいものですよね」
 マリアも答える。
「女って、いいわよね」
 そしてようやく買い物に満足した二人は、ショッピングモールの出口に向かって歩いていった。
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