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19.正しさ
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雄大君と二人きりに戻り、お互いに、何かを見失ったかのごとく、言葉を失くしていたが、ようやく雄大君が、呆気にとられた感じで私に言った。
「何なんですか、あいつ? 宣戦布告でもしたつもりなんですかね」
「鈴木のぶ子さんの彼氏。覚えている? 」
「ええ、もちろん。調和がぶっ壊れていた人でした」
「あれをやったのは、多分白井タクヤだと思う」
「そうか。それが正されているのに気付いて、俺も彼の守りを固くしましたからね、どうやってだか知らないが、とにかく俺達の居場所を突き止めた」
「何が目的で動いているの? それが分からない」
「とにかく俺らのまともな行いが、彼にとっては邪魔、ってこってす」
「狂ったハーモニーに存在意義があることは、私にも分かるの」
「えっ、そうなんですか。狂いって、悪いことじゃないの? 」
「もちろん狂っている当事者にとっては、辛いことだよ。楽じゃないし、苦しい。でも、陰と陽。善と悪。狂気とまとも。どちらも必要で、狂うのにはちゃんと理由がある。それはそれで自然な流れとも言えるの」
「まあ、そうですよね。人の中には二面性があり、そこを否定することこそ狂気の沙汰、そんなことをしたら、異常な世界へまっしぐらです」
「私が正そうとしているのは、そうね、ズレみたいなものを、本来の道へ帰しているの。基本、そこだけをやるようにしている。大本の自然な流れに委ねようとしているし、運気を操ろうともしていない」
「なら、あいつのやろうとしていることは何? 運を掴んで開運成就? まさかね」
「私も分からないけれど、調和を歪ませていることは間違いない。それが世界の調和まで壊していることに、気付いているかしら」
「世界もなんも、自分のことしか考えていない感じです。でも、頭は良さそうでしたけどね」
「そうなの? 」
「オーラで、悟りを開いているかのような、ゴールドのオーラも出ていたんです。オーラだけ見れば、彼の不健全さは分からないです。まともっちゃあ、まともです」
「怖いね」
「何が? 」
「彼のまともな精神が、世界を破壊していくの。異常なものが世界を壊す方が、道理に適っているのに、そうじゃない。むしろ逆であるという……」
そこまで言ってから、私は白井が破壊していった運気の流れのようなものを、元に戻し始めた。戻しながら思った。彼がこんなに自由自在にハーモニーを操れるのは、彼が生来強く正しい流れを持っていることの証だ。調和を作ることのできる調和師は、気が狂っている人にはなることができない。自分が『正しく』あることが前提である。
そう、彼は正しいのだ、ある意味において。
「何なんですか、あいつ? 宣戦布告でもしたつもりなんですかね」
「鈴木のぶ子さんの彼氏。覚えている? 」
「ええ、もちろん。調和がぶっ壊れていた人でした」
「あれをやったのは、多分白井タクヤだと思う」
「そうか。それが正されているのに気付いて、俺も彼の守りを固くしましたからね、どうやってだか知らないが、とにかく俺達の居場所を突き止めた」
「何が目的で動いているの? それが分からない」
「とにかく俺らのまともな行いが、彼にとっては邪魔、ってこってす」
「狂ったハーモニーに存在意義があることは、私にも分かるの」
「えっ、そうなんですか。狂いって、悪いことじゃないの? 」
「もちろん狂っている当事者にとっては、辛いことだよ。楽じゃないし、苦しい。でも、陰と陽。善と悪。狂気とまとも。どちらも必要で、狂うのにはちゃんと理由がある。それはそれで自然な流れとも言えるの」
「まあ、そうですよね。人の中には二面性があり、そこを否定することこそ狂気の沙汰、そんなことをしたら、異常な世界へまっしぐらです」
「私が正そうとしているのは、そうね、ズレみたいなものを、本来の道へ帰しているの。基本、そこだけをやるようにしている。大本の自然な流れに委ねようとしているし、運気を操ろうともしていない」
「なら、あいつのやろうとしていることは何? 運を掴んで開運成就? まさかね」
「私も分からないけれど、調和を歪ませていることは間違いない。それが世界の調和まで壊していることに、気付いているかしら」
「世界もなんも、自分のことしか考えていない感じです。でも、頭は良さそうでしたけどね」
「そうなの? 」
「オーラで、悟りを開いているかのような、ゴールドのオーラも出ていたんです。オーラだけ見れば、彼の不健全さは分からないです。まともっちゃあ、まともです」
「怖いね」
「何が? 」
「彼のまともな精神が、世界を破壊していくの。異常なものが世界を壊す方が、道理に適っているのに、そうじゃない。むしろ逆であるという……」
そこまで言ってから、私は白井が破壊していった運気の流れのようなものを、元に戻し始めた。戻しながら思った。彼がこんなに自由自在にハーモニーを操れるのは、彼が生来強く正しい流れを持っていることの証だ。調和を作ることのできる調和師は、気が狂っている人にはなることができない。自分が『正しく』あることが前提である。
そう、彼は正しいのだ、ある意味において。
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