千年の扉

桃青

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30.

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 ニューカマーの集いがあった夜のこと。遥は自分の部屋の窓から、夜空を見上げていた。
(そうだ。・・・この空、そして宇宙には、数え切れないほどの星がある。地球もその宇宙の星の中のひとつであって・・・。
 もしかしてこの星と同じように、様々な生命で溢れ返る星が、今私が見ている空に浮かぶ星たちの中にあったとしても、それは少しもおかしなことではない気がする。
 この地球の世界ではない、別の世界。
 ―つまり異世界が存在するという考えも、実はそれほど突飛な発想ではなく、もしかしたら十分在りうる事なのかも。
 
 地球とは違った生命の存在。地球とは違う文明の存在。それがこの宇宙の何処かに・・・、ある。)
 遥はそんな事を思いながら、これから先の自分の身の振り方について考えていた。
(人間のエゴイズムに突き動かされて新天地を求めているファンタジーより、理想郷を創造する事を夢見るニューカマーの方が、私には共感できるわ。
 彼らがこれからより一層急進的になり、その思想が世界に革命を起こし、最終的に権力を追い求める方向に向かう危険性も、確かにはらんでいるとは思うけれど・・・。
 ―でも、イアンだったら大丈夫かもしれない。彼ならきっと・・・。)
 遥はそんな事を考える一方で、ふと思い出した。

 イアンの澄んだ瞳。彼の透明な思考。
 ―そして、彼からのキス。

 遥は慌てて首を振って、彼とのキスの記憶を、どこか頭の奥へ押しやろうとした。そしてまた真摯な目で空を見上げた。
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