不死の魔法使いは鍵をにぎる

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ダモンの村の歌

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「なるほど。歌で継承してきたんだね。ダモンの村は。一度じゃわからないや。書き出していい?ゆっくり歌ってくれるか?」



ヘフテが泣き出した辺りから、私たちは足を止めていた。
細い枝を折って、地面に歌詞を書きだしていく。

足元に並んだ言葉を眺めて、マーツェは首をひねった。





「昔の言葉だね。当然ながら。難しいな。恨み、悲しみを忘れるな、か。人間に酷いことをされたってことか?人間が悪いと考える側の歌だから。祖の仇を取るともあるし」

「人に泉下に送られた、だから人間に祖が殺されたんだ」





“泉下”とは死後の世界のことである。

死後の世界は地面の下に広がっているという概念がある。
死後の世界に行く、つまり死ぬということだ。


“足”というのが今でいう土地や居場所のこと。
“足を残す”で土地や居場所を残してくれた、確保してくれたということだろうか。

“袖にされる”が冷たくされる、裏切られるということ。




今の言葉に直していくとこうなるだろう。







恨みを忘れるな
先祖が死んだ
実りを分けてくれた    
土地を確保してくれた
契りを交わした先祖    
先祖と同じ人間に殺された 
先祖は裏切られた
 
悲しみを忘れるな     
先祖が死んだ       
人間のために作り出した  
頼まれて作り出した    
居場所を奪われた先祖  
先祖と同じ人間に殺された 
先祖は裏切られた 
 
繋がりを忘れるな    
先祖がこの世に残した      
魔法陣と我ら      
先祖の血を引き継ぐわれら  
先祖の仇を取らねばならない
先祖と同じ人間に殺された
先祖を忘れるな








「すごいねゲルハルト。ええと、つまり、だ。人間が先祖を裏切った。裏切って、先祖を殺した。だから人間が悪いってことか」





ダモンが教えられた歌は、魔物側が作った歌と考えていいだろう。



先祖とされる人間と魔物が、何らかの契りを、契約を交わした。
そして、魔物の土地、居場所を確保してもらい、先祖から収穫物を分けてもらった。

先祖は他の人間から頼まれて、何かを作った。
頼まれて作ったにも関わらず裏切られ、殺されてしまった。


先祖の仇を討て。
恨み・悲しみを忘れるな。



人間への憎しみを忘れないための歌。








ーーーーーーーーーーーー
正しい日本語としては「泉下の客となる」です。
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