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119 夏休みの前の日
ドレイファスが貴族学院に入学して初めての夏休みがやって来た。
寮生活をする者は久しぶりの実家へ戻り、王都近辺に家のある者はのんびりと・・・いや、ロントン先生が出した大量の課題をせっせと片付けることになる。
しかし「夏休み」という言葉に痺れていた生徒たちには、目の前に積まれた課題など越えるべき小さな丘くらいにしか見えなかった。
「ドル、夏休みは何か予定あるのか?」
「ひしょに行くって言われてる。前に行ったことがある湖」
「ひしょなんて所、あったっけ?」
珍しくとぼけたことを言ったシエルドとドレイファスの会話を聞いていたカルルドが冷たい目で眺めながら
「ひしょは町の名前じゃないよ。避暑って言って暑いときに涼しいところに行くことだよ」
知らないの?と呆れた顔をする。
「だってドルの言い方が変だから間違えただけ!」
負けず嫌いのシエルドが言い訳をした。
「シエルはどうするの?」
カルルドが話を逸らすために訊いてやる。気配り男子なのだ。
「毎日師匠のとこに行く」と胸を張る。
将来の夢は師匠のような天才錬金術師!と既に決めて邁進しているシエルドが、カルルドには眩しく見える。
遊ぶ時間より錬金術の実験のほうが楽しいと付き合いが悪くなったのがさみしいけれど。
「カルディはどうするの?」
「うん、僕は夏休みこども生物教室っていうのに行くつもり」
シエルドとドレイファスが同じように眉を寄せて同時にこちらを見た。
双子か!
カルルドは吹きそうになったが。
「なにそれ?夏休みこども生物教室?」
シエルドが正確に聞き返してくる。ドレイファスなら間違いなく途中で噛んだだろうが。
「学院の中にポスター貼ってあったの見なかった?上級クラスで生物教えていらっしゃるミース先生が、下級生向けに生物教室をやってくださるんだ。面白そうでしょ?」
「全然」
ドレイファスは興味を失った。
「ドルの離れでトロンビー見て」
「え?うちでトロンビー?」
ドレイファスの興味が復活した。
「そう、それがすごく統率取れてて面白いと思ったんだ」
ドレイファスにとって、トロンビーはペリルの花の粉を他の花に付けてくれる大切な虫だ。
多少興味はあったが、生物教室に行きたいほどではない。
「そっか。教室教わったらあとでぼくにも教えて。ぼくひしょでお土産さがしてくるからさ」
さらりと逃げた。
「カルルド様、私も生物教室に出ようと思ってるんです。ご一緒できますわね」
「メリテア嬢が?生物に興味があるなんて知りませんでした」
意外な飛び入りがあった。サンラ伯爵令嬢のメリテアは、どちらかというと生物など苦手そうに見えるが。
「ええ、とても苦手ですの。だけど上級生になったら避けて通れなくなりますもの、今からなれようと思いましたのよ」
「えらいね!」
ドレイファスは素直に褒めた。
しかしメリテアにはもう一つ魂胆があったのだ。それはまだまだ先の秘密。
「ルートリア様とモルトベーネ様はどうなさるの?」
メリテアが親しい二人の令嬢に声をかけると、小さな令嬢たちはどちらが先に口を開くか目配せをした。
「わたくしもメーテに避暑に参りますわ」
ルートリアは海辺の町に行くようだ。
「わあ、うらやましい!私、一番上の兄さまにお嫁さまがいらっしゃるので、夏はずっと領地ですわ」
「あら、けっこんしきなんてそちらの方がステキ!ドレスは?」
令嬢たちはおしゃれの話に没頭し、ドレイファスたちの存在を忘れてしまったようだ。
しかし、これがドレイファスやシエルド、アラミスたちにはとても気安かった。一歩教室を出ると視線が突き刺さる。瞬きしろと言いたくなるほど、目をそらすこともせず不躾に凝視してくる令嬢が何人もいるのだ。
自分たちを無視しておしゃべりに興じるクラスメイトは、なかなかに稀有で大切な存在だと、さすがのドレイファスも気がついたこの頃。
彼女たちの邪魔をしないようにそっと離れると、今度はアラミスの夏休みの予定で盛り上がった。
「みなさん、二ヶ月後にまた元気な顔を見せてくださいね。課題を忘れずにやること!それでは暫しのお別れです。ごきげんよう」
ロントン先生が休みの間の注意を話して、解散の挨拶をすると、いつもならすぐ馬車へまっしぐらになるが今日はみんなその場で話し込んでいる。
「手紙書くね」とか
「近くに来るときは遊びに来て」とか、口々に二ヶ月の別れを惜しんで。
「遊びに来てとか、言ったほうがいいの?」
ドレイファスがいつも家に来ているシエルドにとぼけて言うと、なぜかルートリアが反応した。
「えっ!ドレイファス様のお屋敷に遊びに行ってもよろしいのですか?」
どうしてそうなったのかわからないが、ルートリアは自分に言ってくれたと思ったらしい。うれしそうに訊いたルートリアに、勘違いとは言い難くて。
「い、いいよ、もちろん」
噛みながら答えたドレイファスを、くつくつと笑いながらシエルドが助けてやる。
「ぼくたちはいつもドルの家に集まるんだ。よかったらその時に一緒に行けば?」
シエルドはルートリアに言ったのだが、今度はメリテアとモルトベーネが
「ええ、いいのですか?行きます!行きたいです!」
と食いつく。
そしてなぜか、他のクラスメイト数名も含めた十ニ名ほどがフォンブランデイル公爵家に遊びに来ることになってしまった。
改めてドレイファスが招待状を出すと約束し、手を振って別れを告げると、いつもの六人は固まって馬車の車寄せへ。
「シエル~!もう、あんなこと言うからー」
ドレイファスの口が尖っている。
「ごめんってば。まさかあんなことになるとは思わなくて」
へへっと笑って誤魔化そうとするシエルドだが、悪いとは思っているらしい。
「その日はぼくがみんなの面倒みるからさ」
とは言った。
屋敷に戻るとすぐ、母マーリアルの元に向かう。
マーリアルは最近ばぶばぶ言いながらよく動くようになったイグレイドをベッドに転がし、刺繍に勤しんでいたが、額に汗を浮かべて帰宅したドレイファスを見て手を止めるとハンカチを渡してくれた。
「おかあさま、ただいまもどりました。でね、おはなしがあるのです」
「あらあら、おかえりなさいも言う暇がないわね。何かしら?」
「夏休みにクラスメイトを招待することになってしまいました」
怒られるかなと、ちょっと俯いて小さな声になったが。
「まあ!ドレイファスの学院のおともだち?ステキ!お茶会の準備と招待状を作らなくてはね」
あれ?喜んでる?
そっと顔を上げると、にこにこしている。
「怒ってないの、おかあさま?」
「ん?なぜ怒るの?」
「だって勝手に約束してきたから」
「ああ、そうね。でも大丈夫。今日連れてくると言われたらびっくりしてしまうけど、今度と約束してきたのでしょう?
それに貴族にとって社交は領地経営と同じくらい重要なことなの。こどもはまだ正式な茶会や夜会には出られないけれど、こども同士の茶会を今から開催するのは公爵家の嫡男として素晴らしいことよ」
そう言って、やさしく頭を撫でてくれた。
「茶会の準備は主に女性が担うのだけど、せっかくだから今回はドレイファスも一緒に、お茶会をいつにするかと、どんなお茶会にするか。どんなメニューでおもてなしするかなどをおかあさまと相談しましょうね」
その夜、マーリアルはドリアンに今日のドレイファスの話を楽しそうに語った。
「ドレイファスのお嫁さん候補はいるかしら」
夏休み初日。
家庭教師とともに休みの課題を確認し、休み中に終わらせるスケジュールをたてると、一日分を終えて母の元へ向かった。
茶会の相談のために。
「おとうさまの了解も取りましたから、楽しいお茶会にしましょうね」
まず日時の予定をいくつかピックアップする。
そして最大参加数、その侍女侍従の控えの間の準備。馬車の車寄せを爵位順に案内させるためのリストと茶会の席順。
茶会の流れと、その中で振る舞うメニューや土産と言ったことを細かく決めていく。
「おかあさま?茶会は女性の仕事っておっしゃったでしょ?うちでお茶会があるとき、いつもこれ全部おかあさまが考えているの?」
ドレイファスの素直な疑問に、マーリアルはやさしく
「そうよ、これはおかあさまのお仕事だから」と教える。
「おかあさまって大変なんだね」
そういうと立ち上がって、椅子に座った母の頭をよしよしと撫でた。
少し髪が崩れたが、それより喜びが大きすぎて思わず息子を抱きしめたマーリアルだ。
(やさしくて、なんていい子なのかしら)
この茶会は公爵家嫡男の自発的な社交の始まりとしても意味があるが、なによりも母マーリアルの息子からの評価が格段にあがった貴重な機会となった。
「さあ、では招待状を書きましょうね。
五人はいつものドレイファス団と。
そしてあら、ハミンバール侯爵令嬢もクラスメイトなのね!うふふ、楽しみだわ。サンラ伯爵令嬢、ソイラス子爵令嬢・・・ん?」
マーリアルが眉を寄せてドレイファスを見た。
「ドレイファス?このソイラス子爵令嬢って、庭師のヨルトラのご親戚かしら?」
その指摘にはドレイファスのほうがびっくりした。
「えっ?違うと思う。そんなこと聞いたことない」
「そう?じゃあ違うかしらね」
深く考えずにスルーした。
こういうところが顔だけでなく、親子そっくりと言われる所以である。
さて。
招待状を十二枚、公爵夫人の専属執事ルザールに手配させると、翌日にはすべての返事が戻ってきた。今回のメインの招待客がこどものため、その母も同時に招待をしている。誰かしら来られない者がいるだろうと思っていたのだが、全員が参加と答えてきた。
誰しもが、様々な製品を生み出しては傘下貴族と富を分け合っている、最高位貴族としては珍しいほど懐の深いフォンブランデイル公爵家と、縁を持てる機会を喉から手が出るほどほしいと思っているのだから。
侍女侍従や護衛まで入れると総勢70名近い人が訪れる大規模な茶会に、マーリアルもわくわくと胸を高まらせていた。
「すてきなお嫁さん候補、探せるかしら!うふふ」
寮生活をする者は久しぶりの実家へ戻り、王都近辺に家のある者はのんびりと・・・いや、ロントン先生が出した大量の課題をせっせと片付けることになる。
しかし「夏休み」という言葉に痺れていた生徒たちには、目の前に積まれた課題など越えるべき小さな丘くらいにしか見えなかった。
「ドル、夏休みは何か予定あるのか?」
「ひしょに行くって言われてる。前に行ったことがある湖」
「ひしょなんて所、あったっけ?」
珍しくとぼけたことを言ったシエルドとドレイファスの会話を聞いていたカルルドが冷たい目で眺めながら
「ひしょは町の名前じゃないよ。避暑って言って暑いときに涼しいところに行くことだよ」
知らないの?と呆れた顔をする。
「だってドルの言い方が変だから間違えただけ!」
負けず嫌いのシエルドが言い訳をした。
「シエルはどうするの?」
カルルドが話を逸らすために訊いてやる。気配り男子なのだ。
「毎日師匠のとこに行く」と胸を張る。
将来の夢は師匠のような天才錬金術師!と既に決めて邁進しているシエルドが、カルルドには眩しく見える。
遊ぶ時間より錬金術の実験のほうが楽しいと付き合いが悪くなったのがさみしいけれど。
「カルディはどうするの?」
「うん、僕は夏休みこども生物教室っていうのに行くつもり」
シエルドとドレイファスが同じように眉を寄せて同時にこちらを見た。
双子か!
カルルドは吹きそうになったが。
「なにそれ?夏休みこども生物教室?」
シエルドが正確に聞き返してくる。ドレイファスなら間違いなく途中で噛んだだろうが。
「学院の中にポスター貼ってあったの見なかった?上級クラスで生物教えていらっしゃるミース先生が、下級生向けに生物教室をやってくださるんだ。面白そうでしょ?」
「全然」
ドレイファスは興味を失った。
「ドルの離れでトロンビー見て」
「え?うちでトロンビー?」
ドレイファスの興味が復活した。
「そう、それがすごく統率取れてて面白いと思ったんだ」
ドレイファスにとって、トロンビーはペリルの花の粉を他の花に付けてくれる大切な虫だ。
多少興味はあったが、生物教室に行きたいほどではない。
「そっか。教室教わったらあとでぼくにも教えて。ぼくひしょでお土産さがしてくるからさ」
さらりと逃げた。
「カルルド様、私も生物教室に出ようと思ってるんです。ご一緒できますわね」
「メリテア嬢が?生物に興味があるなんて知りませんでした」
意外な飛び入りがあった。サンラ伯爵令嬢のメリテアは、どちらかというと生物など苦手そうに見えるが。
「ええ、とても苦手ですの。だけど上級生になったら避けて通れなくなりますもの、今からなれようと思いましたのよ」
「えらいね!」
ドレイファスは素直に褒めた。
しかしメリテアにはもう一つ魂胆があったのだ。それはまだまだ先の秘密。
「ルートリア様とモルトベーネ様はどうなさるの?」
メリテアが親しい二人の令嬢に声をかけると、小さな令嬢たちはどちらが先に口を開くか目配せをした。
「わたくしもメーテに避暑に参りますわ」
ルートリアは海辺の町に行くようだ。
「わあ、うらやましい!私、一番上の兄さまにお嫁さまがいらっしゃるので、夏はずっと領地ですわ」
「あら、けっこんしきなんてそちらの方がステキ!ドレスは?」
令嬢たちはおしゃれの話に没頭し、ドレイファスたちの存在を忘れてしまったようだ。
しかし、これがドレイファスやシエルド、アラミスたちにはとても気安かった。一歩教室を出ると視線が突き刺さる。瞬きしろと言いたくなるほど、目をそらすこともせず不躾に凝視してくる令嬢が何人もいるのだ。
自分たちを無視しておしゃべりに興じるクラスメイトは、なかなかに稀有で大切な存在だと、さすがのドレイファスも気がついたこの頃。
彼女たちの邪魔をしないようにそっと離れると、今度はアラミスの夏休みの予定で盛り上がった。
「みなさん、二ヶ月後にまた元気な顔を見せてくださいね。課題を忘れずにやること!それでは暫しのお別れです。ごきげんよう」
ロントン先生が休みの間の注意を話して、解散の挨拶をすると、いつもならすぐ馬車へまっしぐらになるが今日はみんなその場で話し込んでいる。
「手紙書くね」とか
「近くに来るときは遊びに来て」とか、口々に二ヶ月の別れを惜しんで。
「遊びに来てとか、言ったほうがいいの?」
ドレイファスがいつも家に来ているシエルドにとぼけて言うと、なぜかルートリアが反応した。
「えっ!ドレイファス様のお屋敷に遊びに行ってもよろしいのですか?」
どうしてそうなったのかわからないが、ルートリアは自分に言ってくれたと思ったらしい。うれしそうに訊いたルートリアに、勘違いとは言い難くて。
「い、いいよ、もちろん」
噛みながら答えたドレイファスを、くつくつと笑いながらシエルドが助けてやる。
「ぼくたちはいつもドルの家に集まるんだ。よかったらその時に一緒に行けば?」
シエルドはルートリアに言ったのだが、今度はメリテアとモルトベーネが
「ええ、いいのですか?行きます!行きたいです!」
と食いつく。
そしてなぜか、他のクラスメイト数名も含めた十ニ名ほどがフォンブランデイル公爵家に遊びに来ることになってしまった。
改めてドレイファスが招待状を出すと約束し、手を振って別れを告げると、いつもの六人は固まって馬車の車寄せへ。
「シエル~!もう、あんなこと言うからー」
ドレイファスの口が尖っている。
「ごめんってば。まさかあんなことになるとは思わなくて」
へへっと笑って誤魔化そうとするシエルドだが、悪いとは思っているらしい。
「その日はぼくがみんなの面倒みるからさ」
とは言った。
屋敷に戻るとすぐ、母マーリアルの元に向かう。
マーリアルは最近ばぶばぶ言いながらよく動くようになったイグレイドをベッドに転がし、刺繍に勤しんでいたが、額に汗を浮かべて帰宅したドレイファスを見て手を止めるとハンカチを渡してくれた。
「おかあさま、ただいまもどりました。でね、おはなしがあるのです」
「あらあら、おかえりなさいも言う暇がないわね。何かしら?」
「夏休みにクラスメイトを招待することになってしまいました」
怒られるかなと、ちょっと俯いて小さな声になったが。
「まあ!ドレイファスの学院のおともだち?ステキ!お茶会の準備と招待状を作らなくてはね」
あれ?喜んでる?
そっと顔を上げると、にこにこしている。
「怒ってないの、おかあさま?」
「ん?なぜ怒るの?」
「だって勝手に約束してきたから」
「ああ、そうね。でも大丈夫。今日連れてくると言われたらびっくりしてしまうけど、今度と約束してきたのでしょう?
それに貴族にとって社交は領地経営と同じくらい重要なことなの。こどもはまだ正式な茶会や夜会には出られないけれど、こども同士の茶会を今から開催するのは公爵家の嫡男として素晴らしいことよ」
そう言って、やさしく頭を撫でてくれた。
「茶会の準備は主に女性が担うのだけど、せっかくだから今回はドレイファスも一緒に、お茶会をいつにするかと、どんなお茶会にするか。どんなメニューでおもてなしするかなどをおかあさまと相談しましょうね」
その夜、マーリアルはドリアンに今日のドレイファスの話を楽しそうに語った。
「ドレイファスのお嫁さん候補はいるかしら」
夏休み初日。
家庭教師とともに休みの課題を確認し、休み中に終わらせるスケジュールをたてると、一日分を終えて母の元へ向かった。
茶会の相談のために。
「おとうさまの了解も取りましたから、楽しいお茶会にしましょうね」
まず日時の予定をいくつかピックアップする。
そして最大参加数、その侍女侍従の控えの間の準備。馬車の車寄せを爵位順に案内させるためのリストと茶会の席順。
茶会の流れと、その中で振る舞うメニューや土産と言ったことを細かく決めていく。
「おかあさま?茶会は女性の仕事っておっしゃったでしょ?うちでお茶会があるとき、いつもこれ全部おかあさまが考えているの?」
ドレイファスの素直な疑問に、マーリアルはやさしく
「そうよ、これはおかあさまのお仕事だから」と教える。
「おかあさまって大変なんだね」
そういうと立ち上がって、椅子に座った母の頭をよしよしと撫でた。
少し髪が崩れたが、それより喜びが大きすぎて思わず息子を抱きしめたマーリアルだ。
(やさしくて、なんていい子なのかしら)
この茶会は公爵家嫡男の自発的な社交の始まりとしても意味があるが、なによりも母マーリアルの息子からの評価が格段にあがった貴重な機会となった。
「さあ、では招待状を書きましょうね。
五人はいつものドレイファス団と。
そしてあら、ハミンバール侯爵令嬢もクラスメイトなのね!うふふ、楽しみだわ。サンラ伯爵令嬢、ソイラス子爵令嬢・・・ん?」
マーリアルが眉を寄せてドレイファスを見た。
「ドレイファス?このソイラス子爵令嬢って、庭師のヨルトラのご親戚かしら?」
その指摘にはドレイファスのほうがびっくりした。
「えっ?違うと思う。そんなこと聞いたことない」
「そう?じゃあ違うかしらね」
深く考えずにスルーした。
こういうところが顔だけでなく、親子そっくりと言われる所以である。
さて。
招待状を十二枚、公爵夫人の専属執事ルザールに手配させると、翌日にはすべての返事が戻ってきた。今回のメインの招待客がこどものため、その母も同時に招待をしている。誰かしら来られない者がいるだろうと思っていたのだが、全員が参加と答えてきた。
誰しもが、様々な製品を生み出しては傘下貴族と富を分け合っている、最高位貴族としては珍しいほど懐の深いフォンブランデイル公爵家と、縁を持てる機会を喉から手が出るほどほしいと思っているのだから。
侍女侍従や護衛まで入れると総勢70名近い人が訪れる大規模な茶会に、マーリアルもわくわくと胸を高まらせていた。
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