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230 急襲 ※昆虫嫌いの方ご注意下さい
「まっ、まずいっ!」
「ドリアン様に報せろ、一体いつの間に⁉」
タンジェントとローザリオが同時に叫ぶと若い庭師の一人が走り出した。
「シエルドっ、少しでも多く布を掛けるぞ急げ」
ローザリオとシエルドは、柵がないところにも布を被せ始める。
「ドレイファス様、もう中に入って」
微毒を持つイナゴールの万一に備えて、タンジェントはそう声をかけたが、ドレイファスは首を振る。
「そんなのダメだ、畑を守らなきゃ」
少しでも収穫をと、ついていた実を刈り取っていたヨルトラたちがイナゴールに気づいて岩造りの倉庫に運び始めたのが見える。
「アーサ、手袋を嵌めて手伝ってくれ!」
ローザリオの叫び声や「早く倉庫に運べ」というヨルトラの声が交錯する。
そして空は、刻々と低い羽音とともに黒い影に染まり始めていた。
「そんな!もうあんなに近くに?」
シエルドが悲鳴をあげ、皆が空を見上げる。
凄まじいスピードで、まるで畑を目指しているかのように大河のような影が近づいて。
「嘘だろう?何故あんなに速く飛べるんだ?ダメだ、間に合わないーっ!」
誰の叫び声なのか、逃げるべきなのか立ち向かうべきなのかもわからないほど、皆が畑に立ち尽くしていた。
不快な羽音に耳を塞ぎたくなる。
シエルドは踵が何かに当たって、自分が無意識に後退っていることに気がついたが、ドレイファスは空を睨みながら、上半身を低く構えて前に飛び出していく!
─ドルっ!─
シエルドはドレイファスの名を呼ぶことが出来なかった。今まで何度も素材採取で魔物と相まみえている。
年齢以上に経験を積んでいるシエルドでも、ゾッとするほどのイナゴールの大群に恐怖を覚え、口が乾いて声が出なかったのだ。
「シエルド様っ」
アーサが襟を掴んで後ろに下げさせるのを見たレイドもドレイファスに手を伸ばしていたが。
何ができるわけでもないというのに、それをすり抜け、誰よりも前に駆けて行くとイナゴールの前に立ちはだかった。
─ダメだドルっ─
掠れた小さなシエルドの声は、いよいよ大きくなった羽音に掻き消されてしまい、頭上はイナゴールに覆われて暗くなり始めて。
畑に向かい、空からイナゴールたちが下りてくると。
「ダメだーっ!僕の畑に触れるな、虫ヤローっ!」
ドレイファスが絶叫したが、怒鳴られたとてイナゴールは痛くも痒くもなく、次々と畑に向かって飛び降りてくる。
諦めずに主を引き戻そうと腕を掴むレイドを振り切り、ドレイファスはさらに前へ出る。
腕が大きく空振り、バランスを崩して膝をついたレイドの目には、ドレイファスの髪が逆立っているように見えた。
そして、その両肩がぼんやりと光を発しているのも。
「え?なんだ?何?」
光は放射状に拡がって、まるで後光のようにも見えるのだ。
しかし光源は肩・・・
「ダメだっ、やっめろーっっっっ!」
もう一度ドレイファスが叫び、一瞬逸れていたレイドの意識が引き戻されたとき、恐るべきことが起きた。
凄まじい大旋風がドレイファスの指先から放たれ、今にも地上に下りようとしていた大群のイナゴールたちを見る間に吹き上げたのだ。
億匹に近いと報告されていた集団が一瞬で、空高くまでもみくちゃにされながら。
「畑に手を出したら、ゆるっ・・さ・・な・・・っ」
ハァハァと息を荒らげながら叫び、腕を振り上げると、今度は炎焰がボワッと空に向かって駆け上がり、旋風に吹き上げられたイナゴールたちを一瞬にして焼き尽くしていく。
イナゴールの上を炎が走り抜け、先程まで黒い大河の様相だったそれは、今や赤赤と流れる溶岩流のようだ。
無数の小さな燃えカスと化したイナゴールは、あちらこちらにポトリポトリと落ち、当然のようにそれはすべて絶命していた。
エリンバーから始まった大災害が、きれいに消え失せた瞬間だった!
だがぼんやりはしていられない。
枯れ草にその火が移ったのを見たアイルムが、収穫した果実の入った籠を放り投げ、急いで水魔法を発動して消火を開始する。
「わたしも手伝いますっ」
アーサの腕を振り切ったシエルドは、得意の水魔法を右手から放出し、左手から風魔法をくり出して広い範囲の火を消しながら駆け出していく。
「なんだあの器用な魔法は」
ローザリオはドレイファスの大魔法に度肝を抜かれたあとの、小物感が溢れた愛弟子の独創的な魔法の使い方に感嘆させられていた。
もう一度ドレイファスに目を向けると、ドレイファスは立ち尽くして空を見上げている・・・ように見えたが、様子がおかしいことに気づく。
「レイドっ!ドレイファス様をお支えしろっ」
ゆらりと揺れたドレイファスが魔力切れを起こして膝から崩折れていくのと、ローザリオの声に素早く反応してレイドがドレイファスを抱きとめるのはほぼ同時で。
レイドに抱き上げられたドレイファスをレイドごと守るように、まだ薄く発光している二匹の魔猫がその両脇を固めているのを見た者たちは、ドレイファスが2回の魔法で豊富と言われる魔力を使い切るほどの凄まじい大魔法を放った理由に気づき、噂に聞いたヌコのオートバフの威力に慄いたのだった。
レイドのまわりに庭師たちが集まってくる。
「早く、屋敷にお連れするんだ!ドリアン様とアコピ様に報せろ」
タンジェントは怒鳴りながら地下通路への扉を走って行って開けてやり、レイドを促す。
「早く行け!ここは私たちに任せて」
頷いたレイドは、ドレイファスを揺らさないように気をつけながら、地下通路を駆け抜けて行った。
「凄まじい魔法だったな」
レイドを見送るタンジェントにローザリオが声をかける。
「あ、ああ。あんなのは生まれて初めて見たよ」
「私もだ」
「ドレイファス様は大丈夫だろうか?」
「きっと魔力切れだろうから、一晩休めば元気になる」
ローザリオの読みは当たらずといえども遠からずだった。
魔力切れは間違いなかったが、ドレイファスのそれは並みの魔力切れとは違う。
ドレイファスの意識が戻ったのは、それから五日後のこと。
目覚めて一番に、ベッドサイドで付き添っていた真っ青な顔の窶れた母に、
「お腹空いた」
と言ったのは、マーリアルとドレイファスの侍女ロアラの一生の秘密になった。
目を覚ましたと聞きつけた、様々な人がドレイファスの見舞いに訪れている。
今はちょうどシエルドが。
暫く学院も休んで、マーリアルとトレモルと交代のようにドレイファスについていたのだ。
「だからドルがあいつらを葬ったんだよ、すっっっごくカッコよかった!大魔導師みたいだった!
・・・ドルを尊敬する。私はイナゴールが怖くて、声も出なかったんだ。でもドルは勇敢で、本当にカッコよかった」
俯いたシエルドはそう言ってから、とても小さな声で謝った。
「いつもつまらないことでからかって、本当に悪かった。ごめん」
ドレイファスはまだぼんやりしていたが、ベッドで体を起こして、大人しく話を聞いている。膝にヌコたちを乗せたまま。
「ドル、許してくれる?」
シエルドの問いかけに、薄く笑ったドレイファスはこくりと頷いた。
いつも絶対に勝てなかったシエルドが、自分を褒めちぎった上に、今までのことを謝りたいというのだ。こんなにうれしいことはない!
まだ怠い身体を起こし、頷くと、ふたりは心からの握手を交わした。
シエルドと握手など、初めてではないかとくすぐったくなったが。
シエルドとの時間は、ドリアンによって終わりを迎える。
「シエルド、悪いが席を外してもらえるか?」
「はい。ではドル、またあとで顔を見に来るよ」
ドレイファスは今やシエルドのヒーローである。
目の前で特大の魔法をぶっ放し、魔導師が何人かかってもなかなか討伐できないイナゴールの大群を消滅させたのだから、当然といえば当然。
シエルドは、ドレイファスは能ある鷹だったのだと、それをまわりに見せびらかすようなことをしなかっただけで、ローザリオが言ったように優秀さを鼻にかけたような自分こそが本当に恥ずかしい奴だったと認識を改めていた。
ニコニコと手を振りながらドレイファスの部屋を出ると、血相を変えたトレモルが走ってくるのが見える。
「ドルが目を覚ましたって?」
「ああ。今ドリアン様がいらしてるから、待ったほうがいいぞ」
「それで、ドルは?話はした?」
「うん、大丈夫だ。よかった・・・」
「ドルが無事で本当によかった・・・」
もう一度呟いたシエルドは、泣いているようだった。
ヌコたちの支援により、想定外大魔法を放ったドレイファスの魔力切れは、体内の魔力の回路を焼き切ったかもしれないと治療師アコピは心配しており、実のところ、今後ドレイファスが魔力を取り戻すか、既に取り戻せているのかはまったくわかっていなかった。
自分のヒーローが将来に渡り力を失うことがあったら、それは師匠に大口を叩いた癖に肝心な時に殺虫ポーションを間に合わせることが出来なかった、驕った自分のせいではないかと。
笑って見せていたシエルドは、密かに気に病んでいた。
少なくとも、ドレイファスの目が覚めたことは朗報。
魔力が元のように問題なく戻れば、シエルドも心から笑えるようになるかもしれないが。
メルクルと一緒にミルケラの手伝いに出ていてその場に居合わせることが出来なかったトレモルは、誰に止められても意識を失ったドレイファスに付き添い続けたシエルドの変化を揶揄することもなく、黙って見守っていた。
「ドリアン様に報せろ、一体いつの間に⁉」
タンジェントとローザリオが同時に叫ぶと若い庭師の一人が走り出した。
「シエルドっ、少しでも多く布を掛けるぞ急げ」
ローザリオとシエルドは、柵がないところにも布を被せ始める。
「ドレイファス様、もう中に入って」
微毒を持つイナゴールの万一に備えて、タンジェントはそう声をかけたが、ドレイファスは首を振る。
「そんなのダメだ、畑を守らなきゃ」
少しでも収穫をと、ついていた実を刈り取っていたヨルトラたちがイナゴールに気づいて岩造りの倉庫に運び始めたのが見える。
「アーサ、手袋を嵌めて手伝ってくれ!」
ローザリオの叫び声や「早く倉庫に運べ」というヨルトラの声が交錯する。
そして空は、刻々と低い羽音とともに黒い影に染まり始めていた。
「そんな!もうあんなに近くに?」
シエルドが悲鳴をあげ、皆が空を見上げる。
凄まじいスピードで、まるで畑を目指しているかのように大河のような影が近づいて。
「嘘だろう?何故あんなに速く飛べるんだ?ダメだ、間に合わないーっ!」
誰の叫び声なのか、逃げるべきなのか立ち向かうべきなのかもわからないほど、皆が畑に立ち尽くしていた。
不快な羽音に耳を塞ぎたくなる。
シエルドは踵が何かに当たって、自分が無意識に後退っていることに気がついたが、ドレイファスは空を睨みながら、上半身を低く構えて前に飛び出していく!
─ドルっ!─
シエルドはドレイファスの名を呼ぶことが出来なかった。今まで何度も素材採取で魔物と相まみえている。
年齢以上に経験を積んでいるシエルドでも、ゾッとするほどのイナゴールの大群に恐怖を覚え、口が乾いて声が出なかったのだ。
「シエルド様っ」
アーサが襟を掴んで後ろに下げさせるのを見たレイドもドレイファスに手を伸ばしていたが。
何ができるわけでもないというのに、それをすり抜け、誰よりも前に駆けて行くとイナゴールの前に立ちはだかった。
─ダメだドルっ─
掠れた小さなシエルドの声は、いよいよ大きくなった羽音に掻き消されてしまい、頭上はイナゴールに覆われて暗くなり始めて。
畑に向かい、空からイナゴールたちが下りてくると。
「ダメだーっ!僕の畑に触れるな、虫ヤローっ!」
ドレイファスが絶叫したが、怒鳴られたとてイナゴールは痛くも痒くもなく、次々と畑に向かって飛び降りてくる。
諦めずに主を引き戻そうと腕を掴むレイドを振り切り、ドレイファスはさらに前へ出る。
腕が大きく空振り、バランスを崩して膝をついたレイドの目には、ドレイファスの髪が逆立っているように見えた。
そして、その両肩がぼんやりと光を発しているのも。
「え?なんだ?何?」
光は放射状に拡がって、まるで後光のようにも見えるのだ。
しかし光源は肩・・・
「ダメだっ、やっめろーっっっっ!」
もう一度ドレイファスが叫び、一瞬逸れていたレイドの意識が引き戻されたとき、恐るべきことが起きた。
凄まじい大旋風がドレイファスの指先から放たれ、今にも地上に下りようとしていた大群のイナゴールたちを見る間に吹き上げたのだ。
億匹に近いと報告されていた集団が一瞬で、空高くまでもみくちゃにされながら。
「畑に手を出したら、ゆるっ・・さ・・な・・・っ」
ハァハァと息を荒らげながら叫び、腕を振り上げると、今度は炎焰がボワッと空に向かって駆け上がり、旋風に吹き上げられたイナゴールたちを一瞬にして焼き尽くしていく。
イナゴールの上を炎が走り抜け、先程まで黒い大河の様相だったそれは、今や赤赤と流れる溶岩流のようだ。
無数の小さな燃えカスと化したイナゴールは、あちらこちらにポトリポトリと落ち、当然のようにそれはすべて絶命していた。
エリンバーから始まった大災害が、きれいに消え失せた瞬間だった!
だがぼんやりはしていられない。
枯れ草にその火が移ったのを見たアイルムが、収穫した果実の入った籠を放り投げ、急いで水魔法を発動して消火を開始する。
「わたしも手伝いますっ」
アーサの腕を振り切ったシエルドは、得意の水魔法を右手から放出し、左手から風魔法をくり出して広い範囲の火を消しながら駆け出していく。
「なんだあの器用な魔法は」
ローザリオはドレイファスの大魔法に度肝を抜かれたあとの、小物感が溢れた愛弟子の独創的な魔法の使い方に感嘆させられていた。
もう一度ドレイファスに目を向けると、ドレイファスは立ち尽くして空を見上げている・・・ように見えたが、様子がおかしいことに気づく。
「レイドっ!ドレイファス様をお支えしろっ」
ゆらりと揺れたドレイファスが魔力切れを起こして膝から崩折れていくのと、ローザリオの声に素早く反応してレイドがドレイファスを抱きとめるのはほぼ同時で。
レイドに抱き上げられたドレイファスをレイドごと守るように、まだ薄く発光している二匹の魔猫がその両脇を固めているのを見た者たちは、ドレイファスが2回の魔法で豊富と言われる魔力を使い切るほどの凄まじい大魔法を放った理由に気づき、噂に聞いたヌコのオートバフの威力に慄いたのだった。
レイドのまわりに庭師たちが集まってくる。
「早く、屋敷にお連れするんだ!ドリアン様とアコピ様に報せろ」
タンジェントは怒鳴りながら地下通路への扉を走って行って開けてやり、レイドを促す。
「早く行け!ここは私たちに任せて」
頷いたレイドは、ドレイファスを揺らさないように気をつけながら、地下通路を駆け抜けて行った。
「凄まじい魔法だったな」
レイドを見送るタンジェントにローザリオが声をかける。
「あ、ああ。あんなのは生まれて初めて見たよ」
「私もだ」
「ドレイファス様は大丈夫だろうか?」
「きっと魔力切れだろうから、一晩休めば元気になる」
ローザリオの読みは当たらずといえども遠からずだった。
魔力切れは間違いなかったが、ドレイファスのそれは並みの魔力切れとは違う。
ドレイファスの意識が戻ったのは、それから五日後のこと。
目覚めて一番に、ベッドサイドで付き添っていた真っ青な顔の窶れた母に、
「お腹空いた」
と言ったのは、マーリアルとドレイファスの侍女ロアラの一生の秘密になった。
目を覚ましたと聞きつけた、様々な人がドレイファスの見舞いに訪れている。
今はちょうどシエルドが。
暫く学院も休んで、マーリアルとトレモルと交代のようにドレイファスについていたのだ。
「だからドルがあいつらを葬ったんだよ、すっっっごくカッコよかった!大魔導師みたいだった!
・・・ドルを尊敬する。私はイナゴールが怖くて、声も出なかったんだ。でもドルは勇敢で、本当にカッコよかった」
俯いたシエルドはそう言ってから、とても小さな声で謝った。
「いつもつまらないことでからかって、本当に悪かった。ごめん」
ドレイファスはまだぼんやりしていたが、ベッドで体を起こして、大人しく話を聞いている。膝にヌコたちを乗せたまま。
「ドル、許してくれる?」
シエルドの問いかけに、薄く笑ったドレイファスはこくりと頷いた。
いつも絶対に勝てなかったシエルドが、自分を褒めちぎった上に、今までのことを謝りたいというのだ。こんなにうれしいことはない!
まだ怠い身体を起こし、頷くと、ふたりは心からの握手を交わした。
シエルドと握手など、初めてではないかとくすぐったくなったが。
シエルドとの時間は、ドリアンによって終わりを迎える。
「シエルド、悪いが席を外してもらえるか?」
「はい。ではドル、またあとで顔を見に来るよ」
ドレイファスは今やシエルドのヒーローである。
目の前で特大の魔法をぶっ放し、魔導師が何人かかってもなかなか討伐できないイナゴールの大群を消滅させたのだから、当然といえば当然。
シエルドは、ドレイファスは能ある鷹だったのだと、それをまわりに見せびらかすようなことをしなかっただけで、ローザリオが言ったように優秀さを鼻にかけたような自分こそが本当に恥ずかしい奴だったと認識を改めていた。
ニコニコと手を振りながらドレイファスの部屋を出ると、血相を変えたトレモルが走ってくるのが見える。
「ドルが目を覚ましたって?」
「ああ。今ドリアン様がいらしてるから、待ったほうがいいぞ」
「それで、ドルは?話はした?」
「うん、大丈夫だ。よかった・・・」
「ドルが無事で本当によかった・・・」
もう一度呟いたシエルドは、泣いているようだった。
ヌコたちの支援により、想定外大魔法を放ったドレイファスの魔力切れは、体内の魔力の回路を焼き切ったかもしれないと治療師アコピは心配しており、実のところ、今後ドレイファスが魔力を取り戻すか、既に取り戻せているのかはまったくわかっていなかった。
自分のヒーローが将来に渡り力を失うことがあったら、それは師匠に大口を叩いた癖に肝心な時に殺虫ポーションを間に合わせることが出来なかった、驕った自分のせいではないかと。
笑って見せていたシエルドは、密かに気に病んでいた。
少なくとも、ドレイファスの目が覚めたことは朗報。
魔力が元のように問題なく戻れば、シエルドも心から笑えるようになるかもしれないが。
メルクルと一緒にミルケラの手伝いに出ていてその場に居合わせることが出来なかったトレモルは、誰に止められても意識を失ったドレイファスに付き添い続けたシエルドの変化を揶揄することもなく、黙って見守っていた。
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