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第6話
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「そう言えばシューラ嬢の婚約者・・・ソネイル子爵の例の次男坊ですが、どうやら不貞を働いているようですね」
ボルトンが仕事で観光地として知られた湖畔の町モンルプに行ったとき、ズーミーがシューラではない令嬢と腕を組み、歩いているのを偶然見かけたのだ。
そのあまりの距離の近さに、ボルトンは帯同していた部下にふたりを追わせた。
「見かけたついでに調査させておきました。こちらがその結果で」
「おおありがとう!拝見する」
「それは差し上げますから、今後のことをシューラ嬢と相談なさるとよろしいかと」
気の毒な者を見るようなノルズ父子の視線を気にすることもなく、ボルトンから受け取ったズーミーの不貞の証拠に目を通すマイクス。
「これは・・・酷い、最早シューラの婚約者と呼ぶことも許せんほどだ」
しかし悲しいかな、こちらは男爵あちらは子爵・・・。
「なんてことは言っていられない!不貞の証拠を叩きつけて」
「レインスル商会長とも思えないような言葉ですな」
「いや、貴殿も娘が虚仮にされたらそう思うだろうよ」
「ふふ。正面切ってもあのような貧乏子爵ではたいした慰謝料ももらえますまいて。まあ、私ならここまでやられたら倍々返しの算段を考えますな」
マイクスは目をパチクリとした。
そりゃあ、いくら主義信条が信用第一と言っても、堅固な守りがなければ通すことは難しいだろう。
不穏な発言が、温厚そうなボルトンから発せられたということにもマイクスは驚いていた。
しかもニヤニヤと笑っている。
隣りのスタイスは呆れたような顔でそれを眺めていたが、漸く口を開く。
「申し訳ございません、父は信用第一という世間の噂を裏切ることは致しませんが、過ぎた悪戯が好きで・・・母にもよく叱られているのです」
「おい、それは内緒にしておかねば!」
ボルトンがメッ!と軽く睨むと、マイクスが吹き出した。
「ハハハ、もっと生真面目で堅苦しい方だと思っておりましたよ」
「父は巨大な猫を被っているんですよ」
「スタイス!父に向かってそれは失礼というものだぞ」
人差し指を立ててチッチッと振りながら次男坊に注意を与えるボルトンは、父の、そしてノルズ商会長の威厳をこの数分ですっかり落としてしまったが、マイクスは今まであまり知られることのなかったボルトンのプライベートな顔に触れて、大変満足していた。
ボルトンが仕事で観光地として知られた湖畔の町モンルプに行ったとき、ズーミーがシューラではない令嬢と腕を組み、歩いているのを偶然見かけたのだ。
そのあまりの距離の近さに、ボルトンは帯同していた部下にふたりを追わせた。
「見かけたついでに調査させておきました。こちらがその結果で」
「おおありがとう!拝見する」
「それは差し上げますから、今後のことをシューラ嬢と相談なさるとよろしいかと」
気の毒な者を見るようなノルズ父子の視線を気にすることもなく、ボルトンから受け取ったズーミーの不貞の証拠に目を通すマイクス。
「これは・・・酷い、最早シューラの婚約者と呼ぶことも許せんほどだ」
しかし悲しいかな、こちらは男爵あちらは子爵・・・。
「なんてことは言っていられない!不貞の証拠を叩きつけて」
「レインスル商会長とも思えないような言葉ですな」
「いや、貴殿も娘が虚仮にされたらそう思うだろうよ」
「ふふ。正面切ってもあのような貧乏子爵ではたいした慰謝料ももらえますまいて。まあ、私ならここまでやられたら倍々返しの算段を考えますな」
マイクスは目をパチクリとした。
そりゃあ、いくら主義信条が信用第一と言っても、堅固な守りがなければ通すことは難しいだろう。
不穏な発言が、温厚そうなボルトンから発せられたということにもマイクスは驚いていた。
しかもニヤニヤと笑っている。
隣りのスタイスは呆れたような顔でそれを眺めていたが、漸く口を開く。
「申し訳ございません、父は信用第一という世間の噂を裏切ることは致しませんが、過ぎた悪戯が好きで・・・母にもよく叱られているのです」
「おい、それは内緒にしておかねば!」
ボルトンがメッ!と軽く睨むと、マイクスが吹き出した。
「ハハハ、もっと生真面目で堅苦しい方だと思っておりましたよ」
「父は巨大な猫を被っているんですよ」
「スタイス!父に向かってそれは失礼というものだぞ」
人差し指を立ててチッチッと振りながら次男坊に注意を与えるボルトンは、父の、そしてノルズ商会長の威厳をこの数分ですっかり落としてしまったが、マイクスは今まであまり知られることのなかったボルトンのプライベートな顔に触れて、大変満足していた。
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