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呪われたエザリア
考える猫
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エザリアは屋敷の外の太い木の枝にとまり、考え込んでいる。
猫に変えられたあと、なんとか気持ちを切り替えたにも関わらず、義母たちの話を盗み聞いて人間に戻れないかもしれないと絶望感に包まれた。
呆然と数時間を過ごしてしまったが、いつまでも落ち込んでもいられない。
今、エザリアには3つの解決すべき問題があった。
一つ目は当然どうやって人間に戻るか。
シュマーも言っていた。
呪いをかけた本人が解くか、神殿。
まず術者がだれだかわからない上、その者が解いてくれるのは考えにくい。シュマーがいくら払ったのかは知らないが、善き人間ならこんな呪いを金で請負ったりはしないだろう。
となると神殿一択だが、猫のエザリアでは解呪を頼むことも金を用意して払うこともできない。考えれば考えるほど、絶望的な状況だった。
二つ目は毎日の食事をどうしたらいいか。
三つ目、どこで暮らすか。
屋敷の中にある物置を見回ったが、すべてに鍵がかかり、中には入れなかった。
母が亡くなったあとは商会の後継者教育に忙しく、貴族の令嬢は友だちが少ない。頼りになりそうな人を考えるのだが、猫の足で行ける距離に住む友人はいなかった。
いまは父くらいしか思いつく人がいないが、その父は今商団を率いて遠くにいる。
(今すぐに良い方法が浮かばなくても考え続けなくちゃ!とにかくお父様が戻るまで、なんとか生き延びなくちゃいけないわ)
エザリアは暫くは猫のまま生き延びてみせると覚悟を決めた。
(まずはご飯よ。猫好きな人、誰かいなかったかしら)
考えてもやっぱり思いつかない。
(じゃあ猫好きな人がいそうなところを探そう!でもそれってどんなところ?)
エザリアは野良猫にご飯をやって歩くおばさんを見たことがあったのを思い出した。
(あの人を探してみよう)
体が小さくなったせいか、町を歩くのが怖くてたまらない。
何もかもが大きくて、跳ね飛ばされそうな勢いで走ってくる馬車も怖い。
なるべく木の塀の上を歩くようにした。
しばらく徘徊すると、貫禄のある猫と遭遇した。
「にゃー」
何か言っているが、困ったことにエザリアは猫ではないので言葉は通じないのだ。
さらに困ったことに、ねこ語がはなせないだけでなく、ひと語も話せなくなっている。
ようするに、自分にしかわからないニャー語になってしまったのだ。
「にゃ、にゃー」
しかたなく合わせるようにニャーと言って目をそらした。
「にゃっにゃー」
どうやら正解だったらしい。
何がかはわからないが、争いにならなかったらそれでよしとすることに決める。
(そうだ!この猫についていけばもしかしたら)
そう思いつき、離れたところから通り過ぎた猫を追ってみると、果たして探していた女性の元にたどり着くことができた。
「あら、見たことないきれいな子だね。おなかすいてるのかい?」
そう言うと小さな器を一つ出し、鍋の蓋を開けてお玉で何かを掬ってくれる。
「はいお食べ」
(ありがとー!やったわ)
心で礼を言って、器に顔を突っ込もうとしたが。
(ううぇぇ)
魚のアラを猫のために煮たものである。
他の猫たちは美味そうにむしゃむしゃ音を立てて食べているのだが、エザリアは人間だ!
しかも、男爵の父は大商会の商会長、エザリアはそのご令嬢だったのだ。
(これ、こんなの、た、食べられないわよ・・・)
逡巡する。
しかしこれを食べないと、次の食事にいつありつけるやらわからないのだ。
(うっぐふ)
苦しそうに一口飲み込む。
(やっぱりむりーっ)
顔を器から背けると、近くにいた猫が覗きに来てそのまま顔を突っ込んだ。
『ふうん、美味しいんだそれ。デモワタシハモウイラナイ』
と言いたかったが、口からはやっぱりにゃーとしか出ない。ぷいっと猫の顔を背けて、その場を離れる。
(猫のじゃなくて人間のご飯をくれる人じゃなきゃダメだわ!)
どこに行けば?
迷いながら歩くうちに町を抜けてしまう。
(森?森なら私が食べられるものがあるんじゃないかしら!)
■□■
作者、訳あって庭にやってくる子猫たちを保護することになり、ただいま医療費ヤベー!状況でございまして(;^ω^)
少しでも足しになってほしいという邪な考えで書き上げた作品です(*_*;
お気軽にお気に入りにポチっと頂けると大変ありがたいです。
※毎日数話更新のため【最新話を読む】機能を使うと読み飛ばす可能性があります。【しおりから読む】をお勧めします。
どうぞよろしくお願いいたします。
猫に変えられたあと、なんとか気持ちを切り替えたにも関わらず、義母たちの話を盗み聞いて人間に戻れないかもしれないと絶望感に包まれた。
呆然と数時間を過ごしてしまったが、いつまでも落ち込んでもいられない。
今、エザリアには3つの解決すべき問題があった。
一つ目は当然どうやって人間に戻るか。
シュマーも言っていた。
呪いをかけた本人が解くか、神殿。
まず術者がだれだかわからない上、その者が解いてくれるのは考えにくい。シュマーがいくら払ったのかは知らないが、善き人間ならこんな呪いを金で請負ったりはしないだろう。
となると神殿一択だが、猫のエザリアでは解呪を頼むことも金を用意して払うこともできない。考えれば考えるほど、絶望的な状況だった。
二つ目は毎日の食事をどうしたらいいか。
三つ目、どこで暮らすか。
屋敷の中にある物置を見回ったが、すべてに鍵がかかり、中には入れなかった。
母が亡くなったあとは商会の後継者教育に忙しく、貴族の令嬢は友だちが少ない。頼りになりそうな人を考えるのだが、猫の足で行ける距離に住む友人はいなかった。
いまは父くらいしか思いつく人がいないが、その父は今商団を率いて遠くにいる。
(今すぐに良い方法が浮かばなくても考え続けなくちゃ!とにかくお父様が戻るまで、なんとか生き延びなくちゃいけないわ)
エザリアは暫くは猫のまま生き延びてみせると覚悟を決めた。
(まずはご飯よ。猫好きな人、誰かいなかったかしら)
考えてもやっぱり思いつかない。
(じゃあ猫好きな人がいそうなところを探そう!でもそれってどんなところ?)
エザリアは野良猫にご飯をやって歩くおばさんを見たことがあったのを思い出した。
(あの人を探してみよう)
体が小さくなったせいか、町を歩くのが怖くてたまらない。
何もかもが大きくて、跳ね飛ばされそうな勢いで走ってくる馬車も怖い。
なるべく木の塀の上を歩くようにした。
しばらく徘徊すると、貫禄のある猫と遭遇した。
「にゃー」
何か言っているが、困ったことにエザリアは猫ではないので言葉は通じないのだ。
さらに困ったことに、ねこ語がはなせないだけでなく、ひと語も話せなくなっている。
ようするに、自分にしかわからないニャー語になってしまったのだ。
「にゃ、にゃー」
しかたなく合わせるようにニャーと言って目をそらした。
「にゃっにゃー」
どうやら正解だったらしい。
何がかはわからないが、争いにならなかったらそれでよしとすることに決める。
(そうだ!この猫についていけばもしかしたら)
そう思いつき、離れたところから通り過ぎた猫を追ってみると、果たして探していた女性の元にたどり着くことができた。
「あら、見たことないきれいな子だね。おなかすいてるのかい?」
そう言うと小さな器を一つ出し、鍋の蓋を開けてお玉で何かを掬ってくれる。
「はいお食べ」
(ありがとー!やったわ)
心で礼を言って、器に顔を突っ込もうとしたが。
(ううぇぇ)
魚のアラを猫のために煮たものである。
他の猫たちは美味そうにむしゃむしゃ音を立てて食べているのだが、エザリアは人間だ!
しかも、男爵の父は大商会の商会長、エザリアはそのご令嬢だったのだ。
(これ、こんなの、た、食べられないわよ・・・)
逡巡する。
しかしこれを食べないと、次の食事にいつありつけるやらわからないのだ。
(うっぐふ)
苦しそうに一口飲み込む。
(やっぱりむりーっ)
顔を器から背けると、近くにいた猫が覗きに来てそのまま顔を突っ込んだ。
『ふうん、美味しいんだそれ。デモワタシハモウイラナイ』
と言いたかったが、口からはやっぱりにゃーとしか出ない。ぷいっと猫の顔を背けて、その場を離れる。
(猫のじゃなくて人間のご飯をくれる人じゃなきゃダメだわ!)
どこに行けば?
迷いながら歩くうちに町を抜けてしまう。
(森?森なら私が食べられるものがあるんじゃないかしら!)
■□■
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