【完結】呪われ令嬢、猫になる

やまぐちこはる

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呪われたエザリア

考えるスミル

 サリバー商会に戻ったスミルは、なんということない顔で仕事を続けている。
 そろそろ商会長ブラス・サリバーの元に手紙が届いている頃なのだが、まだ動きはない。

「今日もないな、何も変わりは」

 ほっとするような、いらっとするような。



 エザリアは白猫のままで、セインの家でまったり居候を続けている。

「アチラはセインのところにいれば、まったく心配ないのがありがたいな」
「何が心配なくてありがたいんだ?」

 同僚のモイトスがいつの間にか隣りに立って、スミルの独り言を聞いていた。

 ─よかった、お嬢様の名前を出さなくて─



 いろいろな話を総合し、事態が解決するまでエザリアの名は口にしないほうがいいのでは?とセインと相談したのだ。
スミルは注意深く振る舞った。
店の誰がシュマーの味方かわからないから。

 長い付き合いのモイトスは違うと思っているが、こうして迂闊な呟きをに聞かれ、エザリアに危険が及んではならない。



「なあ、エザリアお嬢様のこと、本当に誰も捜そうとしてないんだが、大丈夫だと思うか?」

 とても心配そうにそんなことを言うモイトスに、スミルはエザリアは無事だと話してしまいたい気持ちが湧くが、それもひたすら堪えた。
 仮にモイトスが敵でなくとも、モイトスがそれとは気づかずに敵に話してしまうかもしれない。
 もしそれがあとでわかったら、モイトスは悔やむだろう。

 そこまで考えていたら何も出来ないと思うが、今はエザリアの安全が最優先だから。

「モイトスっ!あんな家出娘なんか放っておきなよ。だんなさまだってそういうにきまっでるんだがら」

 そうちょっと訛りながら年上のモイトスをタメ口で諌める女、まだ新人の店員ニイナは冷たい。

「ニイナ、旦那様もそう言うに決まってるって何でだよ!自分の娘がいなくなって平気な顔をなさる方じゃないぞ」

 ─そうだそうだ!モイトスいいぞ!─

 モイトスには悪いが、ここは目立たぬよう密かに応援する。


 ─ニイナはシュマーの味方か、またはエザリアお嬢様がただ嫌いなのか?─


 エザリアは顔はかわいいが、貴族というより商会長の娘として仕込まれてきたので、しっかりしていて口が立つ。
 さばさばした性格で、スミルは付き合いやすいと思うが、男爵令嬢らしくないエザリアをよく思わないものもいた。

 このニイナもそうだ。
 華やかに着飾ったシュマーとロズリンを貴族らしいと気に入っている。
 本当は平民から後妻になったにわか貴族だが、特にせっかく貴族になれたのだからといちいち貴族令嬢らしさを意識した言動をするロズリンが、サリバー男爵令嬢と名乗るのに相応しいと思い込んでいた。


 ─こういう輩がシュマーの手足になってエザリアお嬢様を追い込む助けになっているんだな─


「それよりニイナ、俺やモイトスは君よりはるかに先輩だ。君がシュマーさんをどう思っていようが、シュマーさんに可愛がられていようが、店内には守らねばならない序列があり、少なくとも君はモイトスを呼び捨てして許される立場ではないはずだが」

 イラッとしたスミルは、モイトスが何も言わないので代わって・・・・注意した。

 ニイナはエザリアに敵対する要注意人物として、そして教育が足りない新人店員として、スミルにチェックされたのだった。
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