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呪われたエザリア

森に行こう

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 重大なことに気がついて、ハアと深い溜息をついたジョル・ドレイラ。

「・・・・なあ。呪いで姿を変えられるのはサリバーの令嬢が初めてなのだろうか」

 ジョルの言葉の深刻さにスミルも気がついた。
そして何気なく吐いた自分の言葉に衝撃を受けているジョル。

「恐ろしいことだが、今本当にそういった者がいるなら他にいてもおかしくないだろう?犬や猫に姿を変えられて、誰にも訴えることができないまま力尽きた者がいたかもしれない・・・」

 そう思うと正義感の強いジョルには許し難く、握り締めた拳が小さく震えている。

「そんな呪いをかけようと考える者がいるのは許せないが、そんな力のある魔導師がいるとは聞いたことがないと思うんだが・・・」
「でももし本当にそんな魔導師がいたら、ブラス様が突然子持ちの下働きと結婚したのもそのせいかも」

 ふたりは顔を見合わせた。

「ではまず、エザリア嬢に会わせてもらおう。呪いを確認できる者を連れて行ってもいいだろうか?」
「え?」

 思わず驚きの声をあげたが、考えたら当たり前のことだ。

「しかしそれは・・・まずは会ってみてはどうかな?それから神官の手配をしては」
「何か都合の悪いことでも?」
「言われてみれば当然なんだが、そこまで考えていなかった。お嬢様に了解を取っていないんだ」
「ああ」

 ジョルが残念なものを見るようにスミルに視線を送る。

「考えが浅くて」
「いや、では私がエザリア嬢にというならすぐ会えるのかな」
「ああ、それは大丈夫。これからでも」

 二度手間だなと思いながらも、怯えた小動物のように身を竦めたスミルを見ると仕方ないと、渋々頷く。

「あっりがとうっ!」

 立ち上がり、腰を真っ直角に折ったスミルを何故か憎めないと思うジョルだった。




 馬に乗り、森へ連れ立つ。

「へえ、こんなところに店があったのか」
「あれ?騎士団は森に行かないのか?」
「いや、見回りには行くんだが、ポレルの森は担当じゃないから来たことがなかった」
「昼はいいけど、暗くなると結構危ないらしいから。まあジョルなら心配ないか」

 踏み固められた道を行くと、二階建てほどの高さの屋根が見えてくる。

「あ、あそこだ」
「デールの店?」
「そう、魔法医薬師セイン・デールの店」
「こんなところに魔法医薬師が?」

 疑うような目で、ジョルは小屋を見渡した。
 近くに来てみると古さがいい味を出したログハウスで、見た通りの二階建て。馬の背から窓を覗くと、建物の大きさに比べて店はさほど広くないようだ。

「家族で住んでいるのか?」
「いえ、セインは一人暮らしですね」

 一人で住むには随分と寂しい環境だ。
町の賑やかさに慣れたジョルは、自分には耐えられそうないと、勝手にセインの孤独を想像して身震いしていた。
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