【完結】呪われ令嬢、猫になる

やまぐちこはる

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恋は迷路の中

ブラスの掌

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結局スミルは、求めていた答えをセインから得ることは出来なかった。

「仕事が溜まってる」

そう言って丸めた背中を向けたセインは、それ以上の会話を拒絶し、調合室に戻って行った。

(うーん。あれほどじゃぶじゃぶと好意を見せつけられてるというのに、なんでこんなにも引いてるんだ?)





セインにあるのは薬が作れるという自信だけ。
最近までギルドの担当職員に搾取され、不正に評価が下げられていた。
それがわかって、担当に怒りを向け、自分はやれる!と胸を張る性格なら良かったが、セインは違う。
それが明るみになると、ランクが上がらないことに疑問も持たず、長らく搾取を許していた自分の不甲斐なさを責めて落ち込んだ。

折も折、白猫から元の姿に戻ったエザリアに会うと、手の届かない眩しさにさらにひしゃげてしまう。

どれほどサリバー家の面々が、ストレートに好意を、称賛を向けても、素直に受け取れるのは感謝だけであった。





「そうか。うむ・・・・」

スミルの報告に、ブラスは首をひねり考え込む。

エザリアの婿にセインを迎えたいと思うようになってから、ずーっと空回りをしている。
物足りなさはあっても、セインを表舞台に立たせるわけではないし、後ろ盾を持たない魔法薬師にはブラスも初めて出会ったほど希少だ。
今後セインが弟子を育てれば、途切れることなくサリバー家が後ろ盾という名の囲い込みができる。
商会の更なる発展の礎としようと考えているのに、専属契約では契約の更新をしないと言われたらおしまいではないか。

「絶対にうちの婿にしたい、絶対だ」

低い声でブラスが呟いた。

「そうだ!スミル、ナレスを呼んできてくれ」




「店の中でデール殿にですか?」
「ああ。森の店では、せいぜい冒険者くらいしか来ないだろう?違うかスミル」
「はい。それも時々です」
「ここならごく普通の人々も訪れるからな、客から直接感想を聞く機会が必要なんじゃないかと思ってな」
「なるほどですね」

他の町へ移動する道すがら、立ち寄る者が殆どのセインの店。薬が良く効いたとしても、そのまま次の町に行ってしまうので、リピートが少ない。
ただでさえ森の中で訪れる者が少ない中で、いくら売っても反応を得ることができなければ自信には繋がりにくい。そうブラスは考えた。

スミルに、セインに説明し了承させるよう言い含めると、返事も聞かずに、早速店内の一角に魔法薬専用の小さなカウンターを作るよう指示を出した。





「ブラス様が、ぜひセインに週に二日でも三日でも、カウンターでお客様の対応を頼みたいと仰ってるんだ。お客様も直接薬師に相談できる日があれば、安心も高まるだろう?」
「でもそうしたら薬を作る時間が少なくなってしまうよ」
「そ、それは、ブラス様がちゃんと考えているから相談しよう!とにかくお客様のために!なっ」

ブラスがそこまで考えているかはわからないが、スミルはそう言ってセインを拝み倒したのだった。



セインの心配を聞いたブラスは、魔法軟膏のように、比較的簡単な薬を調合できるスペースを作ることにした。
その提案に微妙な顔をしたセインだが、様々なお客の相談に乗りつつ調合もできるという、森の小屋ではなかなかできない事に魅力を感じ、迷いながらも首を縦に振る。
そうしてブラスの「セインに自信を持たせる作戦」は、サリバー商会本店の中でコーナーを任せることで着々と動き出したのだった。
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