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「お父さま、昨夜は良く眠れまして?」
カーライルを食堂で見かけ、パルティアが声をかけている。
「ああ、いつになくぐっすり眠れたぞ」
そう聞いてにっこりと笑ったパルティアはドヤ顔で言った。
「支配人のデリスが来てから、グレードを落とした物もあるのですけれど、寝具と眠る前のお茶にはよりコストをかけたのですわ。今回寝具は特に、アレクシオス様といろいろ試してみて、なんとか気に入るものを特注したのですけれど、今後はただフカフカしているのではなく、眠りやすいものを開発してはどうかと相談を始めましたの。もちろん枕も」
「なるほど!確かに今朝は首が痛くないぞ」
「たぶん家で使っているものより、ほんの少し固めだと思いますわ」
パルティアは施設に宿泊した者たちに、微に入り細に入りヒアリングを行なった。
客を迎え入れる前に、改善できるところは徹底して手を入れるため。
実際、メニアたちの茶があまり上手くないという声があり、テーミアの特訓が開始されていた。
それと体調の悪い者が長い逗留をするために、もう一つやりたいことがあったのだが、未完のままのものが残されている。
温泉だ。
近くに源泉がいくつもあるため、楽観的に考えて掘ってみたが、ニ度とも失敗した。
資金計画を考えるとチャンスはあと一度。祈るような気持ちで、結果を待ち侘びているところだった。
「温泉はどうかしら」
「諦めるのか?」
「諦めたくはないけれど」
「二つのどちらかをより深く掘るか、新しいところを掘る?」
菫色の瞳が、心配そうにパルティアを見つめている。
「深く・・・今の土地の中で掘るなら深くしかないわ。それとも近隣の土地を買い増しする?」
「いや、それでダメだったら、それこそ資金計画が成り立たなくなるだろう。デリスが怒り出しそうだ」
パルティアの脳裡に怒る猿が浮かんできて、笑いを噛み殺す。
「ではあと一度だけどちらかをもう少し深く掘ってみて、駄目なら諦めるわ」
結果、温泉は出た。
しかし思ったほど熱くはなく、人肌より熱いくらい。手を入れると熱いと思うが、肩まで浸かるなら冬なら沸かし直しが必要な温度である。
「一日中沸かし直していたら大変だわ」
「ああ。これを活かすとしたら・・・プールはどうだろうな」
「プールって何?」
アレクシオスの口からパルティアの知らない言葉が現れた。
「ああ、女性は知らないのか。海や川、湖ではなく、人工的に大きな水溜りを作り、泳げるようにしたものだよ。紳士倶楽部などにはスポーツ施設として併設されていることが多いんだ」
「まあ!全然存じませんでしたわ。古式ゆかしい貴族のご令嬢が泳ぐなどありえないですもの」
「そうだね。でも男性には需要があると思うな。信仰や健康のためと言って寒中に海で泳ぐ人もいるくらいだからね」
「確かにそうですけれど」
「では、男性と女性と分けて、男性はプール、女性は何か別の施設を考えてみたらどうだろう?」
「ええ、そう、ちょっと考えてみますわ」
カーライルを食堂で見かけ、パルティアが声をかけている。
「ああ、いつになくぐっすり眠れたぞ」
そう聞いてにっこりと笑ったパルティアはドヤ顔で言った。
「支配人のデリスが来てから、グレードを落とした物もあるのですけれど、寝具と眠る前のお茶にはよりコストをかけたのですわ。今回寝具は特に、アレクシオス様といろいろ試してみて、なんとか気に入るものを特注したのですけれど、今後はただフカフカしているのではなく、眠りやすいものを開発してはどうかと相談を始めましたの。もちろん枕も」
「なるほど!確かに今朝は首が痛くないぞ」
「たぶん家で使っているものより、ほんの少し固めだと思いますわ」
パルティアは施設に宿泊した者たちに、微に入り細に入りヒアリングを行なった。
客を迎え入れる前に、改善できるところは徹底して手を入れるため。
実際、メニアたちの茶があまり上手くないという声があり、テーミアの特訓が開始されていた。
それと体調の悪い者が長い逗留をするために、もう一つやりたいことがあったのだが、未完のままのものが残されている。
温泉だ。
近くに源泉がいくつもあるため、楽観的に考えて掘ってみたが、ニ度とも失敗した。
資金計画を考えるとチャンスはあと一度。祈るような気持ちで、結果を待ち侘びているところだった。
「温泉はどうかしら」
「諦めるのか?」
「諦めたくはないけれど」
「二つのどちらかをより深く掘るか、新しいところを掘る?」
菫色の瞳が、心配そうにパルティアを見つめている。
「深く・・・今の土地の中で掘るなら深くしかないわ。それとも近隣の土地を買い増しする?」
「いや、それでダメだったら、それこそ資金計画が成り立たなくなるだろう。デリスが怒り出しそうだ」
パルティアの脳裡に怒る猿が浮かんできて、笑いを噛み殺す。
「ではあと一度だけどちらかをもう少し深く掘ってみて、駄目なら諦めるわ」
結果、温泉は出た。
しかし思ったほど熱くはなく、人肌より熱いくらい。手を入れると熱いと思うが、肩まで浸かるなら冬なら沸かし直しが必要な温度である。
「一日中沸かし直していたら大変だわ」
「ああ。これを活かすとしたら・・・プールはどうだろうな」
「プールって何?」
アレクシオスの口からパルティアの知らない言葉が現れた。
「ああ、女性は知らないのか。海や川、湖ではなく、人工的に大きな水溜りを作り、泳げるようにしたものだよ。紳士倶楽部などにはスポーツ施設として併設されていることが多いんだ」
「まあ!全然存じませんでしたわ。古式ゆかしい貴族のご令嬢が泳ぐなどありえないですもの」
「そうだね。でも男性には需要があると思うな。信仰や健康のためと言って寒中に海で泳ぐ人もいるくらいだからね」
「確かにそうですけれど」
「では、男性と女性と分けて、男性はプール、女性は何か別の施設を考えてみたらどうだろう?」
「ええ、そう、ちょっと考えてみますわ」
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