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第55話

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 熟考の上で、ビュワードはスミール伯爵の後継者となることを受け入れた。
これにより、トリードの芽は完全に摘み取られたことになるが。

「ユワ様、おめでとう!今夜はお父様とお母様が祝いの会をしてくださるそうよ」
「あ、ありがとう」

 ビュワードの一挙手一投足を見守るミリタス侯爵一家は、何かあればすぐ、家族でこじんまり・・・・・とパーティーを開く。
いつもの晩餐よりかなり・・・豪華なディナーに、必ず小さな・・いや、大きすぎたり高価すぎたりするプレゼントが用意される。それは、今まで誕生日すら祝われることのなかったビュワードを甘やかすために、メリダが考えたものだった。

『ユワちゃん!次期スミール伯爵決定おめでとう!』

 今日の祝いの会は食堂ではなく、小広間に丸テーブルをいくつか置き、使用人たちも参加できる開かれたものである。

 モイル兄弟、そして初めてミリタスに連れられて来た時からビュワードに心を寄せてきた者たちも、各々おのおのが小さなプレゼントを手に集まって、ビュワードの未来に祝いの声をかける。

 たくさんのプレゼントを目の前に積み上げて、幸せそうに頬を染めるビュワードの美しいこと!

 女性陣はその紅顔をうっとりとみつめて幸せを感じ、男性陣は不幸な子供時代を乗り越え、飛躍しようと努力を続けるビュワードを支えようと心に決めた。

「食事を終えたら、プレゼントを開けよう!」

 アクシミリオの言葉で、ミリタス家と使用人たちの祝いの晩餐が始められた。



 さすがに使用人たちのテーブルは別だが、メリダの心遣いにより、料理はすべて同じものが用意されている。
子爵家出身のモイル兄弟でも口にしたことがないような豪華な料理ばかり。

「ああ!本当にミリタス家に来られて、私は運が良かった!」

 口の中でとろけるほど柔らかい肉を名残惜しそうに飲み込んで、小さく呟くコーズにルーサーも頷き返す。

 辺境伯家で数年の文官の経験があったコーズは早くも仕事に慣れ、目指すことやるべきことが理解できると率先して動くようになっていた。
 以前の辺境伯家と決定的に違うのは、その評価方法だ。
 力で圧倒する騎士たちと違い、文官はどれほど優秀でもすべて上の者の功績とされてしまい、それらが退職しなければ日の目を見ることがない辺境伯家と違い、ミリタス家は目標を立てさせてそれが達成できれば、僅かでも翌月から俸給が上がるのだ。
それを積み上げれば欲しい俸給レベルまで自分で引き上げていくことができる。
勿論、その目標は上司が納得いくものでなければならないが、他家を知るコーズのやる気は倍増した。

 兄コーズの邁進を見て、ルーサーも置いていかれないようにと後を追う。
短い期間にも関わらず、ビュワードの腹心となるべき若い二人が目覚ましい成長を見せていることに、モイル兄弟に目をつけた娘の慧眼にアクシミリオも満足していた。
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