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1話
レンラ子爵令嬢ナミリアは婚約者のディルースト・イールズ男爵令息を心から愛している。
よくある政略的婚約だが、初めての顔合わせから気が合い、こころを寄せ合うふたりの姿に、ディルーストの母ミヒアも微笑ましくふたりを見守っていた。
ディルーストの実家イールズ男爵家は、国内有数の大商会であるイールズ商会を経営している。
イールズ夫妻は元は平民で、結婚とともに夫婦で商会を始めたのだが、凄まじい辣腕によりあっという間に三国にまで支店を拡大。
王族御用達に引き立てられたことで叙爵し、男爵となった新興貴族で、溺れるほど金はあるが由緒はない。
それに比べ、十六代続くレンラ子爵家は小さいが良質なワイナリーを持つ実直な旧家として知られている。
生産量が少なく入手が至難と言われるレンラ家のアイスワインの取引を握り、かつ貴族社会で認められるレンラ家の血筋を取り込みたいイールズ男爵家と、今更ながらもっと有利な商売ができると気づいたレンラ家の利害が一致しての婚約だった。
ナミリアとディルーストは、交流を深めるために週に何度もランチや買い物を楽しみ、時には湖畔まで遠乗りにも行った。
「ナミリア」
ディルーストのアルトの声がナミリアを呼ぶ。
振り返ると、スッと耳元に何かが触れた。
「似合うよ、すごくかわいらしい!」
その手には、いつの間に詰んだのか、湖畔に咲いていた数本の白いマーガレットがあり、長い指でナミリアの髪をかき上げると、一本を挿し込んだのだ。
自分のために摘んだ花を髪に挿してくれたことが。愛しそうに、かわいらしいとほめてくれたことがナミリアはうれしくて。
その花を挿したまま過ごし、屋敷に戻ってから丁寧に髪からはずして押し花にした。
「一生の宝物にするわ」
幸せそうなナミリアに、侍女たちも胸をあたためたのだった。
ウェディングドレスのオーダーは、ディルーストの母ミヒアが経営するドレスアトリエで。
レンラ家ではとても用意できないような、輸入品の美しく繊細なレースがふんだんに使われたデザインにナミリアは臆したが、ミヒアは大切な御令嬢を迎えるのだからこれくらいは当然だと言って、目の飛び出るような金額のドレスを即決した。
「いいのかしら、あんなに高いものを」
ディルーストは不安げなナミリアを安心させるよう大きくうなずいて見せる。
「いいに決まってる!うちは男兄弟だろう?母上は女の子がいたら着飾ってやれたのにとよく言ってたから、うれしくてたまらないんだよ。それにあのドレス、ナミリアにめちゃくちゃ似合うと思うから早く見てみたいよ!」
言ってから照れくさそうに頬を染めるディルーストが、ナミリアには眩しかった。
■□■
新連載です、本日19時にも更新します。
書き終えていますので、ぜひ最後までよろしくお願いいたします。
完結間近の「一番腹黒いのはだあれ」
新作「呪われ令嬢、猫になる」
4/2更新再開「神の眼を持つ少年です。」
よろしければこちらもお立ち寄りください。
よろしくお願いいたします。
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それに比べ、十六代続くレンラ子爵家は小さいが良質なワイナリーを持つ実直な旧家として知られている。
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ナミリアとディルーストは、交流を深めるために週に何度もランチや買い物を楽しみ、時には湖畔まで遠乗りにも行った。
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振り返ると、スッと耳元に何かが触れた。
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その手には、いつの間に詰んだのか、湖畔に咲いていた数本の白いマーガレットがあり、長い指でナミリアの髪をかき上げると、一本を挿し込んだのだ。
自分のために摘んだ花を髪に挿してくれたことが。愛しそうに、かわいらしいとほめてくれたことがナミリアはうれしくて。
その花を挿したまま過ごし、屋敷に戻ってから丁寧に髪からはずして押し花にした。
「一生の宝物にするわ」
幸せそうなナミリアに、侍女たちも胸をあたためたのだった。
ウェディングドレスのオーダーは、ディルーストの母ミヒアが経営するドレスアトリエで。
レンラ家ではとても用意できないような、輸入品の美しく繊細なレースがふんだんに使われたデザインにナミリアは臆したが、ミヒアは大切な御令嬢を迎えるのだからこれくらいは当然だと言って、目の飛び出るような金額のドレスを即決した。
「いいのかしら、あんなに高いものを」
ディルーストは不安げなナミリアを安心させるよう大きくうなずいて見せる。
「いいに決まってる!うちは男兄弟だろう?母上は女の子がいたら着飾ってやれたのにとよく言ってたから、うれしくてたまらないんだよ。それにあのドレス、ナミリアにめちゃくちゃ似合うと思うから早く見てみたいよ!」
言ってから照れくさそうに頬を染めるディルーストが、ナミリアには眩しかった。
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