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夢は交錯する
第37話
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初めて会った頃はカーラを警戒していたキャメイリアだが、最近は憧れをまったく隠さないカーラを可愛らしく思うようになっていた。
ノアランではないが、本当ならカーラが自分の義娘になるはずだったと思うと、不思議な感情が湧いてくるのだ。
「キャメイリア様も、こちらにお座りになってくださいませ」
ミモルがいろいろな方向から自分の髪を鏡に映して、笑ったりため息をついたりするのを横目に、空いたドレッサーにカーラ自らがキャメイリアを座らせる。
「キャメイリア様にはその名のとおり、美しい椿のようなセットをね、トイル」
「あら、椿?」
美しい銀色の眉を上げ、キャメイリアがカーラに問うた。
「招待状にお名前を書いておりました時に気づきましたの、コーテズでは椿という意味でカメリアと読みますが、シルベスでは発音が違うのですね」
ドクン!
キャメイリアは胸が嫌な音を立てて脈打つのを感じ緊張したが、カーラの次の言葉はキャメイリアが覚悟したものとはまったく違っていた。
「美しいキャメイリア様にぴったりのお名前ですわ!雪の中咲き誇る赤い椿・・いえ、それより気高く咲き誇る白椿かしら!」
ふふふっと実にうれしそうに、また憧れを隠そうともしないカーラに肩透かしをくらう。
(考えすぎだったのね、カーラ様は気がついたわけじゃない。それに仮に気づいても、彼女なら私が嫌がることはしないのではないかしら)
じゃぶじゃぶとだだ漏れる好意を向けるカーラを見ているうちに、カーラはキャメイリアが嫌がることはしない、もうノアランをローリスに無理矢理奪われることなんて起きないのだと、すとんと腹に落ちた。
すると本気キャメイリアは不思議なほどリラックスし、トイルに髪を梳かれるその気持ちよさを存分に楽しみ始めた。
(この侍女、髪を梳かすのがとても上手いわ)
最初に絡まった毛先を丁寧に解してから、ブラシを回転させながら地肌に当て、掬うように髪をブラシに巻き込んでいくので、痛くないどころかとても気持ちがいいのだ。強すぎず弱すぎず。
(うちの侍女にも教えてもらいたいわ)
キャメイリアの侍女たちは髪を纏めるのは決して下手ではないが、ブラッシングの力加減がわかっておらず痛い。
丁寧に細かくやっていると思っていたので我慢していたが、トイルに髪を梳いてもらって、自分の侍女のブラッシングが下手なのだと知ってしまった。
(カーラ様に頼めば、うちの侍女たちに教えてくださるかしら)
ぼんやりと考えている間にも、どんどんトイルの手は進んでいる。
ふっと気づくと、トイルとカーラ、ミモルも背後から鏡を覗き込んでいることに気づいた。
「珍しいわね、リアがぼんやりするなんて」
ミモルがにやにやと笑って言う。
「早く、後ろを見せてもらいなさいよ。びっくりするわよ!」
そう言うとトイルに頷いて合わせ鏡を促してやり、大きめの手鏡を持ったトイルがキャメイリアの後ろに立った。
ノアランではないが、本当ならカーラが自分の義娘になるはずだったと思うと、不思議な感情が湧いてくるのだ。
「キャメイリア様も、こちらにお座りになってくださいませ」
ミモルがいろいろな方向から自分の髪を鏡に映して、笑ったりため息をついたりするのを横目に、空いたドレッサーにカーラ自らがキャメイリアを座らせる。
「キャメイリア様にはその名のとおり、美しい椿のようなセットをね、トイル」
「あら、椿?」
美しい銀色の眉を上げ、キャメイリアがカーラに問うた。
「招待状にお名前を書いておりました時に気づきましたの、コーテズでは椿という意味でカメリアと読みますが、シルベスでは発音が違うのですね」
ドクン!
キャメイリアは胸が嫌な音を立てて脈打つのを感じ緊張したが、カーラの次の言葉はキャメイリアが覚悟したものとはまったく違っていた。
「美しいキャメイリア様にぴったりのお名前ですわ!雪の中咲き誇る赤い椿・・いえ、それより気高く咲き誇る白椿かしら!」
ふふふっと実にうれしそうに、また憧れを隠そうともしないカーラに肩透かしをくらう。
(考えすぎだったのね、カーラ様は気がついたわけじゃない。それに仮に気づいても、彼女なら私が嫌がることはしないのではないかしら)
じゃぶじゃぶとだだ漏れる好意を向けるカーラを見ているうちに、カーラはキャメイリアが嫌がることはしない、もうノアランをローリスに無理矢理奪われることなんて起きないのだと、すとんと腹に落ちた。
すると本気キャメイリアは不思議なほどリラックスし、トイルに髪を梳かれるその気持ちよさを存分に楽しみ始めた。
(この侍女、髪を梳かすのがとても上手いわ)
最初に絡まった毛先を丁寧に解してから、ブラシを回転させながら地肌に当て、掬うように髪をブラシに巻き込んでいくので、痛くないどころかとても気持ちがいいのだ。強すぎず弱すぎず。
(うちの侍女にも教えてもらいたいわ)
キャメイリアの侍女たちは髪を纏めるのは決して下手ではないが、ブラッシングの力加減がわかっておらず痛い。
丁寧に細かくやっていると思っていたので我慢していたが、トイルに髪を梳いてもらって、自分の侍女のブラッシングが下手なのだと知ってしまった。
(カーラ様に頼めば、うちの侍女たちに教えてくださるかしら)
ぼんやりと考えている間にも、どんどんトイルの手は進んでいる。
ふっと気づくと、トイルとカーラ、ミモルも背後から鏡を覗き込んでいることに気づいた。
「珍しいわね、リアがぼんやりするなんて」
ミモルがにやにやと笑って言う。
「早く、後ろを見せてもらいなさいよ。びっくりするわよ!」
そう言うとトイルに頷いて合わせ鏡を促してやり、大きめの手鏡を持ったトイルがキャメイリアの後ろに立った。
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