魔法世界の綺沙羅

みちづきシモン

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魔法世界の綺沙羅

6。決闘の後、阿沼との再戦への準備にかかる

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 水龍が壁の絵に戻ると、優と番樹は一定の距離を保ち構えた。
「先に膝をついた方の負け。勝っても負けても文句なし一回勝負だよ」
「いいぜ! 綺沙羅のおっぱいは俺のもんだ!」
 あいつバカだろと言った風に陸也が見つつ、綺沙羅が心配そうに見ていた。
「大丈夫やで、綺沙羅。男と男の真剣勝負、見守ってやんのが女っちゅうもんや」
「それじゃあいくよ、番樹」
 雷魔法を繰り出し番樹へ向ける。対する番樹は、木魔法を使い避雷針を作り出し防いだ。
 そのまま走り出した番樹は、木刀を作り出し接近戦に持ち込もうとする。
距離を保ちなんとか雷を当てようとする優を追い込んでいく。番樹の方が有利だった。
 番樹が優を捉え、木刀を当てようとした時。
「番樹、僕の綺沙羅への想いはこんなもんじゃないよ」
「何?!」
 木刀を掴んだ優は自分ごと雷魔法を当て通電させた。
膝をついたのは番樹だった。
「ちくしょう……、ちくしょう!完敗だよ!」
 優は壁に近づき、水龍を起こして自分に取り憑かせた。
「綺沙羅……、ずっとこうしたかった」
 優は綺沙羅を抱きしめた。綺沙羅は抱き締め返し言う。
「ありがとう。優君の想いは受け取ったよ!でもまずは敵を倒してオーブを取り返してからだよ」
「そうだね、そのために水龍も手伝ってくれるはず」
「悔しいけど、優!綺沙羅を幸せにしろよな!」
 番樹は悔しそうに俯いていたが、空元気でも叫んだ。

 水龍は優に取り憑いた状態で言った。
「まずは神羅の書を開くのだ。書の妖精に魔法を覚える儀式をしてもらうがよい」
 わかったと頷いた綺沙羅はへその辺りから神羅の書を出し開いた。
「わっショーい!やっと出番でショか!」
「久しいな、妖精よ」
 水龍は優の中から顔を出しながら、書の妖精にぺこりと一礼した。
「あとは任せたぞ。時が来たら優の中よりまた力を貸しに顕現しよう」
 水龍は優の中へと入っていく。陸也はいい加減堪忍袋の緒が切れそうだった。
「おい! 今度こそ、オレが強くなるための方法を教えろよ!」
「いいでショ! どの道全員を強くするでショ!色んな魔法を覚えるといいでショ!」
 そう言うと書の妖精は自らで書をペラペラめくり、ピタリと止めた。
「ここからが闇魔法の書でショ!」
「オレが闇魔法使いだってわかるのか?」
「当然でショ!」

 綺沙羅は炎羅と合わさり水と火。優は雷。番樹は木。陸也が闇で、来夢が光の属性が得意だった。
「ではどんどんいくでショ!」
 次々に筆を振るい墨で魔法を体に刻み込んでいく書の妖精。
「凄い!頭に魔法が流れ込んでくる!」
 綺沙羅は、頭の中に流れ込む魔法に驚いていた。
「属性が合えばこの本に書かれた魔法なら、わてが覚えさせれるんでショ!」
「一気に覚えすぎて混乱しそうだね」
 優は一抹の不安を話すが、
「ふん、これしき余裕だ! これであのオッサンをぶっ飛ばせるんだな?」
 陸也は自信ありげに尋ねた。
「それは無理でショ……」
 書の妖精は落ち込んだ様子で、皆を見た。
「相手は神羅ショまのオーブと、闇のオーブを持っているでショ? 同時には使えないから恐らく神羅ショまのオーブを使ってくるでショ。そしたら勝ち目はないでショ」
「神羅様のオーブは、魔法を増幅したり他属性魔法を使えるようにするんだよね? 闇のオーブは一体どういうものなのかな?」

「闇のオーブ、それは闇魔法に特化した凶悪なオーブだと言われているでショ」
書の妖精が闇のオーブについて語る。それは、使い手の魂も含めて強力な吸収能力で、全ての魔法を無効化するという。使用には魔力を注ぎ込む必要がある。
「せめて神羅様のオーブを取り戻せたら……」
 書の妖精はしょんぼりする。
「ふん、余裕だろ。今のオレにできねーことはない」
「そんなこと言って、今攻め込まれたらどうするのさ」
 余裕だと言う陸也に優がツッコミをいれた。
 すると入口の方から轟音が響いた。
「何事ですか?!」
 大臣が慌てて入口へと確認に向かう。五人も外へ出た。
 外は豪雨に竜巻、雷が鳴り響いていた。
「これってもしかして!」
「あいつだな!あのオッサン!どこにいる?!」
「落ち着いて。僕が探知するよ」
 優が雷魔法で魔力の出処を探知する。すると入口の左手側を指さした。
「あっち! 皆行こう!」
「おっしゃ! 俺の新魔法でボコボコにしてやる!」
「お、お待ちください! 今親衛隊を呼んできますので!」
「フフフ、それは彼らのことでしょーかね?」
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