魔法世界の綺沙羅

みちづきシモン

文字の大きさ
上 下
20 / 32
綺沙羅続き(仮)

20。光郷王国

しおりを挟む
 そうしてるうちに街が見えてきた。国と国の間に位置する街にいる衛兵に身分証を見せて入っていくと、そこでは市場が賑わっていた。
「朝食がてら情報収集といくお。光郷王国の現状を知りたいんだお」
「光郷王国?」
 五人は顔を合わせて、真那に尋ねた。
「光のオーブを管理してる国だお」
「二手に分かれて情報収集しませんか?」
「いいお。綺沙羅ちゃん、優ちゃん、番樹ちゃんはそっち。あたいと、陸也ちゃん、来夢ちゃんはこっちに行くお」
 そうして、二手に分かれて情報収集をする。綺沙羅達は、市場の人に買い物しながら声をかけて話を聞いた。
 その話によると光郷王国では今、大変な騒ぎになっているらしかった。王国の王子が光のオーブを持ち出し国外へ逃亡したとのこと。
 さらに詳しく話を聞こうとすると、話を遮られた。
「あんたら、今光郷王国の話してたな?」
 ある男が、綺沙羅の前に立って腕を組んだ。
「なんで光郷王国の話をしてる?」
「それは……」
「なんだ?お前!」
「番樹待って。僕らが、光郷王国の話をしてるとまずいんですか?」
「質問に答えたらいいんだ。答えろ!」
 綺沙羅は正直に話すかどうか迷ったが、隠しても仕方ないと踏ん切り話した。
「私は天園王国の王女です。神羅様の神託に基づいて光のオーブを譲ってもらえないか、光郷王国の王族の人にお願いするために光郷王国の情報を集めていました」
 それを聞いた男はポカンとしていたが、嘘をついていないと見たのか頷いて綺沙羅の手を引いた。
「こっちへ来てくれ」
「え? でも……」
「来るのは君だけだ。さぁ!」
「待て! 綺沙羅をどこへ連れてくつもりだ!」
「僕達も行く!」
 男は首を横に振り、こう言った。
「定員オーバーだ」
 男はすぐ側の馬に綺沙羅を強引に乗せて、馬の手網を引き走らせた。
「綺沙羅!!」
「優君、番ちゃん!真那先生に知らせて!私はこの人について行ってみる!」
 綺沙羅は謎の男と行動を共にする。一方優と番樹は真那と合流を急ぐ。
 優と番樹が真那に知らせると陸也と来夢を連れて走ってきた。
「おっおっおっ、事態は思ったより深刻だお。綺沙羅ちゃんの後を追うお」
 一方、謎の男は綺沙羅に荷物を捨てるよう指示した。
(大丈夫、真那先生達は追ってこれるよ。指示通りにして)
 炎羅に心の中でそう言われ、綺沙羅はこくりと頷き荷物を捨てた。
 馬は市場を抜けて街の出口へと向かう。衛兵は止まるよう叫んだが、男は強行突破した。
「こんなことして平気なの?」
「お前が俺の主のところへ着けば問題ない」
「あなたは?」
「俺の名は竜胆。他に質問がなければ黙って背中に引っ付いてろ」
 言われた通り引っ付くと綺沙羅の胸が当たる。
「……少し離れろ。鞍につかまれ」
(この人照れ屋ね)
 炎羅の心の一言にクスリと笑う綺沙羅。それが癪に障ったのか、竜胆は怒った。
「何がおかしい!」
「ごめんなさい。でもあなたからは悪意を感じないわ」
「ふん!しっかり掴まってろ。もうじき着く」
 馬を走らせて少し経った後、馬を止めて呪文を唱える竜胆。
 光魔法が発動し、光の屈折で建物が現れた。竜胆が先に馬から降りて綺沙羅を降ろした。
「入れ」
 中に入ると一人の男の子が椅子に座っていた。
「竜胆、この人は?」
「光天王子、彼女は天園王国の王女だそうです」
「天園王国の?ではまさか!」
「神羅様のオーブを持っているかと」
 神羅のオーブと聞いて身構える綺沙羅。
「勘違いするな。我らの目的は神羅様のオーブではない」
「じゃあ何ですか?」
「それは……」
「我が話そう。天園王国の王女よ。名は?」
「綺沙羅です。光天様でよろしいでしょうか?」
「うむ、我は光郷王国の王子、光天。訳あって国外へ逃亡してる」
「噂は聞きました。光のオーブを持ち出したと」
「その通り。我は今光のオーブを持っている」
「光天様はどうしてそのような事を?」
「光郷王国が光のオーブの希望の光の誘惑に呑まれ混乱状態に陥ったからだ。皆が光のオーブの光を求め、父である国王は錯乱状態にあった」
「そんなことが……。光天様は大丈夫なんですか?」
「我とここにいる竜胆は大丈夫だ。と言ってもいつ気が触れてもおかしくない。そこで相談なのだが、光のオーブを持っていってくれないか?」
「ダメだお」
「誰だ!」
竜胆が振り向き構えた先には真那が立っていた。
「話は聞かせてもらったお」
「どうやってここに?」
「うちが光魔法使いやから中に入れたんや。追跡は先生がな」
「おっおっおっ、綺沙羅ちゃんの身分証には追跡できるように細工してあるお」
「ちっ、王子!逃げてください!」
「待って!話を聞いてください!」
「そうだお、落ち着くお。あたいは敵ではないお」
 真那は光天王子に近づくと、膝まづいて言った。
「お初にお目にかかるお。まずはあたいの名を。真那と申しますお」
「分かった、話を聞こう」
「まず、光のオーブをここで持って行ってしまうと天園王国に奪われたと光帝様が勘違いなさるお」
「なるほど……」
「そうなると戦争に発展する可能性があるお。ここは一つ、あたい達と共に光郷王国に戻り光帝様を説得してみてはどうかお?」
「ふざけるな!それでは王子が罪に問われる!」
「ここに光のオーブを持っている時点で罪に問われるのは免れないお。光帝様を説得したら何とかなるかもしれないお」
「うぬぬ……」
 竜胆は納得していないようだったが、光天王子は頷いた。
「ただ、我と竜胆の身の安全を保証してほしい。ワガママかも知れぬが」
「できる限りの事はするお」
 光天王子は納得し、立ち上がった。
「竜胆、この者たちを案内する。頼むぞ」
「了解致しました!」
 竜胆は命令を聞き、早速馬の準備をした。
「あたい達はあたい達の馬車でついてくお」
「わかった。竜胆、我を馬に乗せなさい」
 光天と竜胆が準備してる間、綺沙羅は真那に礼を言った。真那は笑って首を横に振った。
「よく断らずについていったお。それがなければこうはならなかったお。お手柄だお」
「怖くなかったかい?綺沙羅」
「大丈夫だよ」
 優が心配そうな顔で綺沙羅に寄り添う。番樹も声をかけた。
「どこか傷つけられたりしてないか?」
「平気。皆ありがとう」
「ふん。無事ならいい」
「ええってことよ!それより先行きが不安やな」
「まぁなるようになるお」
 真那達も準備をし、真那は途中で拾った綺沙羅の荷物を綺沙羅に渡した。
「ありがとうございます、先生」
 馬車に乗り込んだ一行は、光天王子と竜胆の乗る馬について行く。あまりスピードをあげずに走らせる竜胆に並走させた真那は尋ねた。
「ここからまだ距離があるお。急がなくていいお?」
「王子を疲れさせたくない。それは当然の理由だろう?」
「では休み休みいくお?」
「いや、休まずに問題ない。このまま付いてこい」
 そう言った竜胆は、そのままのスピードで左に曲がった。
それに合わせて左に曲がる真那。馬車は揺れる。
「ちゃんとついてこいよ?」
 竜胆はそう言うと、右に左に曲がりくねりだした。
 真那は寸分違わずついて行く。すると道が光出した。そのままついて行くとまるで光の速さのように風景が変わり、ある城壁の内側にいた。
しおりを挟む

処理中です...