魔法世界の綺沙羅

みちづきシモン

文字の大きさ
上 下
22 / 32
綺沙羅続き(仮)

22。1つになる光のオーブと闇のオーブ

しおりを挟む
 書の妖精が呪文を唱えていくと、綺沙羅の持つ神羅のオーブに光のオーブと闇のオーブが吸い込まれていく。
 そして、一つのオーブになった。
「綺沙羅、何ともない?」
「なんかおかしいこととかないか?」
「大丈夫。寧ろ力を感じる」
「けっ、またお前のパワーアップか」
「ええやないか。悪用するわけでもないやろ」
 こうして、闇のオーブと光のオーブを合わせることに成功した綺沙羅達。次のオーブを求めて準備を入念にしてから光郷王国を出発しようとする。
「今回は助けられた。ありがとう。我は心から感謝する」
「気をつけていけよ」
 光天と竜胆が見送ってくれた。テイオー、シンオーの引く馬車に乗り込んだ綺沙羅達が城壁の外へと出ると砂漠が広がっていた。
「皆、水分補給はしっかりするお」
 熱気が上がる中真那が忠告する。
「つっても飲みすぎもダメなんだろ?」
「そうだね、考えて飲もう。無理はしないでね」
 適度に水分補給しながら、砂漠を進む。途中オアシスに立ち寄って休憩した。
「水をろ過して補充するお。綺沙羅ちゃん、水魔法でお願いするお」
「わかりました!」
 水魔法でオアシスの水を飲料水に変えていく綺沙羅。暑さに堪えたのか陸也が珍しく弱気だった。
「くそっ、暑すぎる……。次の場所はまだ先か?」
「まだ先やろな。一面砂景色やで」
太陽が照りつける中、真那は先を急いだ。
「さぁ急ぐお。砂漠の夜は冷えるお。昼間のうちに街へと行くお」
 馬車を走らせているとやがて次の街が見えてきた。砂漠の真ん中に大きなオアシスで出来た街だった。街に入ると宿に向かう。
「今日はここで休むお。明日はまた砂漠だお。ただ、次の砂漠を超えたらある国に着くお」
 真那は食料と飲料水を買い込みに行く。綺沙羅達は宿の部屋で風を浴びながら暑さを凌いだ。
 宿で一泊した綺沙羅達は、再び砂漠へと入る。陸也があまりの暑さにイライラしながら言った。
「おい、綺沙羅。オレに水をかけろ」
「いいけど……。大丈夫?」
「早くしろ!暑いんだよ!」
 綺沙羅は言われた通り陸也に水魔法をかけた。
「ぷはぁっ。ちっ、イライラする。クソ暑い!」
「太陽がギラギラしとるし気持ちはわかるわぁ」
 やがて、日が沈む前に次の国が見えてくる。
「おっおっおっ、何とか間に合ったお。あれが日土王国だお」
日土王国と聞いて、綺沙羅がハッとする。
 祖母である真愛羅がこの国の誰かに暗殺されたとされている。
「この国にオーブが?」
「いや、通過点だお。この国の先が目的地だお。綺沙羅ちゃんには教えたけど、この国の人間に綺沙羅ちゃんのおばあちゃんが殺されて戦争になってるお。だからなるべく天園王国の人間であることを伏せていくお」
「なんだそりゃ?!綺沙羅のばあちゃん殺されたのか?!」
「また今度話聞かせてください。先生」
「ふん、今はそれよりどうやって入国するかだろ?」
「身分隠して通れるんかいな」
「おっおっおっ、問題ないお。有事でもない限り門番もいない無法地帯の国だお」
 真那の言う通り、門には門番がいなかった。門を通ると閑散とした街並みが広がっていた。
「不気味な街だね。僕らを歓迎してないような……」
「ここで夜を明かすのか」
「ふん、お化けでも出そうだな」
「やめてーや!ウチがそういうの嫌いなの知っとるやろ!」
 一行は宿に馬車を止めて、宿の中に入る。だが誰もいなかった。お代はここにという紙が置いてあるのみだ。
「今夜は交代で寝るお。荷物しっかり見てるんだお?」
「真那先生は?」
「あたいは馬車を見張るお。盗られたり傷つけられたりしたら大変だお」
「とんでもない国に来ましたね……」
 宿で交代で休息をとる皆。やがて夜が更けていく。気付けば陸也以外の全員が寝ていた。
「ん?おい!お前ら!起きろ!」
 すやすや眠る皆は一向に起きない。陸也はこれが敵の襲撃であることを理解した。
「大丈夫だよ。ワタシもいる」
 すくっと立ち上がった炎羅は、辺りを見渡した。
「これが魔法なら真那先生も心配だね」
「ふん、あのババアなら何とかするだろ。それよりこっちだ。馬鹿共が簡単に魔法にかかりやがって」
「綺沙羅も寝てるよ。陸也君が起きてるってことは闇魔法かな?」
 耐性のないものを眠りに誘う魔法のようだった。
「ワタシは眠らない性質だから効かないわ。敵が来るなら今ね」
 廊下から物音が聞こえた。窓の外にも気配を感じる。どうやら囲ってるようだった。
「けっ、お代は払ったはずだがな?」
「それ以上が欲しいんでしょ」
 窓が割れ、部屋のドアが強く開かれた。盗賊が中に入ってくる。
「皆には指一本、ワタシが触れさせない!」
「荷物も渡さねーぞ」
 宿を燃やさないように小さな火球を盗賊に当てていく。小さいといっても、威力は凝縮されていて高い。
 陸也も闇の玉を回しながら応戦する。闇の玉は盗賊に吸い付き盗賊同士をぶつけ合う。
「クソ! 引くぞ!」
 盗賊達は慌てて引いていく。一方真那の方にも敵は来ていた。
「おっおっおっ、あたいを眠らそうなんて百年早いお」
 こちらも簡単に一掃してしまっていた。水の礫が盗賊達に襲いかかる。
 盗賊達は逃げていき、やがて朝日が昇る。綺沙羅達は目を覚ました。
「うーん。あれ?私寝ちゃってた?!」
「うわぁ!ごめん!僕寝ちゃってた!」
「ハッ!俺も寝てたぞ!」
「あちゃー、やってもーたか」
 それらを見て陸也は呆れながら言った。
「やれやれ、お前らしっかりしやがれ」
「あれ?陸也は寝てなかったん?」
「今炎羅ちゃんに聞いたんだけど、炎羅ちゃんと一緒に荷物と私達守ってくれたみたいだね。ありがとう」
「ふん、オレはオレのためにしただけだ。ゆっくり寝ただろ。ババアのとこに行くぞ」
 真那のいる馬車へと向かうと真那は元気に体操していた。
「おっおっ?起きたお?」
「オレは寝てねーがな」
「炎羅ちゃんに任せても良かったと思うお」
「うるせー、さっさと次の目的地に行こうぜ」
 それを聞いた真那は、ふぅと息を吐き困ったような顔をした。
「それが、門が封鎖されてるようなんだお。あたい達が天園王国の者であるのがバレたみたいだお」
「え?!それじゃあどうするんですか?」
「ワテイルちゃんに馬車ごと南西の地点に飛ばしてもらうしかないお」
「書の妖精さんにですか?」
 綺沙羅はまず神羅の書を開く。
「わっショーい! どうしたでショ?」
「ワテイルちゃん、あたい達と馬車をここから北西に飛ばせるお?」
「ショー! だからわてをワテイルと呼ぶなと……、もういいでショ。方向以外どこまで飛んでくかわからないでショが、いいでショか?」
「それでいいお。お願いするお」
 書の妖精は魔法を描き、馬車ごと北西へと飛んで行った。
「何度見ても爽快な気分になるやんなー、これ」
「ふん、途中で落っこちなきゃいいけどな」
 馬車に乗ったまま飛んで会話している一行は、ある所に着いた。
 そこは草木が生える草原だった。砂漠のような暑さもなく快適な風が吹く。
「今どの辺なのか全然わからないね」
 綺沙羅は不安そうに言う。
「おっおっおっ。まず天園王国から南に渡って光郷王国に来たお。そこから南西に進んで日土王国に来たあと、そこから北西へ上がったんだお。地図を見せるお」
 真那は地図を見て今この辺りだろうという目星をつけていた。
「このまま行くと、この火丸王国に着くんですか?」
「そうだお。そこに火のオーブがあるお」
「南へ行くのか?また暑くなりそうだな」
「陸也バテるなよ?」
「番樹もあまり人のこと言えないような」
「ウチらには水使いの綺沙羅がおる!水浴びしたらヘッチャラやで」
しおりを挟む

処理中です...