バック=バグと三つの顔の月

みちづきシモン

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バック=バグ、遊園地に連れていかれる

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 ローディアランド、それはこの国最大級のアミューズメントパーク。様々なアトラクションがあり、人々を楽しませる。
 開演時間の少し前に着いた三人は人の多さに驚いた。
「平日なのにこんなにいるんだね」
「高い優先パスを買って正解でしたわね」
 ウェイは通常パスより半額分高い優先パスを三人分購入していた。
「リッチね」
「ストレスは感情によくありませんわ」
 ウェイの言葉に納得するエラだったが、バックは別に待つのも悪くないと思っていた。
 この三人でなら絶対楽しい、そういう確信があった。

「まずは……どこへ行けばいいの?」
 入園して、バックは尋ねる。
「そうだね、とりあえず絶叫系は避ける?」
「何でですの? まず絶叫系に乗りますわよ」
 ウェイがそう言うのに対し、エラは困ったのだ。絶叫系はバックが怖いと思って感情を低下させるかもしれない。だがウェイは言う。
「そもそもアトラクションで感情が動かない方がおかしいですわ。一度最大のに慣れておけば、後は全てを楽しめると思いますわ」
 一理あると思ったエラは一番凄いのはどれだったかを思い出す。
 エラは何度か来たことがあるのだ。だがエラの記憶よりウェイのリサーチの方が早かった。
「あの奥に見えるジェットコースターが一番凄い人気のコースターのようですわ、行きますわよ!」
 そうして着いてから順番待ちを少しして乗って行く。
 バックとエラが一番前に乗ってウェイは一つ後ろに乗る。
「念の為ですわ」
 そうしてコースターが出発する。徐々に登っていくコースターにドキドキするバック、そうして落ちて回って回転して、重力に振り回されるて、叫び続ける。
 終わった後、エラはバックが感情低下してないか心配するが、杞憂だった。
「凄い楽しかった! もう一回乗ろう!」
「いい心がけですわ! 乗りますわよ!」
「え? もう一回乗るの?」

 そうして同じジェットコースターに乗る三人。絶叫系らしく絶叫する。
「楽しい! もう一回!」
「よしきましたわ! 乗りますわよ!」
「ま、待って待って、時間に限りがあるんだよ? 他のにも行こうよ」
 ウェイはエラの様子を見て笑う。
「好きな物に乗るのが一番ですわよ?」
 エラは苦手ではなかったが、このコースターはそれほど凄いのだ。何度も繰り返し乗るのはエラにはきつかった。
「そうだね、ほかのにも行こう」
 バックもエラの提案を受けて、他のに行く。ウォーターライドに乗ってみる三人。
「凄い凄い!」
「ここからだよ」
 エラがそう言うと急に落下した。
「わああああああ!」
 水飛沫が飛び、着水する。バックは大はしゃぎだ。次はフリーフォールへ行く三人。
 徐々に登っていき頂点に着くと、回りながら落ちていく。落ちていく感覚が堪らない。
「飛ぶ感覚を味わいたいなら、ああいうのもいいよ」
 回転しながら回るアトラクション、上がったり下がったりする。バックはとても楽しんだ。

 お昼になりご飯を食べる。ファーストフードは高いが美味しい。
「エラ、ウェイ、ありがとう。本当に楽しい」
 バックの言葉に満足するエラは、ウェイの方を見た。見つめる二人は黙っている。
「どうしましたの?」
 我慢比べに負けたウェイが尋ねると、エラは笑った。
「ウェイも楽しんでるのかな? って」
「そうだよ、ウェイも楽しい?」
「勿論ですわ」
(きっと一生の思い出になりますわ。いえ、してみせますわ・・・・・・・
 ウェイは何かを企んでいた。それはバックのためであり自分のためだった。
 昼ご飯を食べた後、簡単な劇場タイプのコースターに乗り楽しみながら時間を潰した三人。パレードの時間になり、有名なキャラクター達に手を振るバック。エラは様々なバックとウェイと自身の写真を残した。
 そしてウェイに渡した。
「ワタクシは心に残しますので大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございますわ」
 しょぼくれたエラにバックは言う。
「私は貰っていいかな?」
「勿論だよ!」

 そうして夜の時間になり最後に観覧車に乗る。夜景を見ながら感動しているバック。頂点に達する直前、ウェイが、エラと座るバックの隣に無理矢理きて尋ねる。
「キスしてもよろしいですの?」
「え?」
「はぁ!?」
 バックが驚き、エラは声を裏返らせた。
「観覧車の頂上でキスしたら結ばれるという噂がありますわ。ワタクシ、バックと結ばれたいですの」
 そう語るウェイは、妖艶に笑う。
「ワタクシ、別にキスした事がないわけではないですわよ。でも、『好きな人』とキスした事ありませんの。ワタクシ、あなたの事好きなのですわ」
「な、な、な、何を言ってるの! ウェイ!」
 エラの叫びも無視するウェイ。バックは冷静に尋ねた。
「ほっぺじゃ駄目?」
「ええ、唇と唇ですわ、それも抱擁つきの熱いキスを」
 ウェイは迫ってくる。それに笑ったバックは立ち上がり、ウェイの腰に手を回す。ウェイの顎に手を当て、強引にキスして抱きしめた。
 ウェイはあまりの事に驚いて目を見開いた。だがそのキスの味は忘れまいと堪能する。

「ふ、ふふふ、奪われるとは思っていませんでしたわ。奪うつもりでしたのに」
「甘いよ、ウェイ」
 このやり取りに顔を赤らめるエラ。観覧車は降りていく。
「エラはしなくてよろしいんですの? キス」
「そうだね、する?」
 エラは顔を真っ赤にして首をブンブン横に振っている。
「後悔しても知りませんわよ?」
「後悔なんてしないよ! 馬鹿じゃないの!?」
 バックとウェイは笑った。二人にとっては大切な思い出になったからだ。一生愛する男とはキスできない、だからせめてこの瞬間だけ、『愛する人』とキスをしたかったウェイ、させたかったウェイ。
 三人は帰りの送迎の車の中で楽しく談笑していた。
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