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水族館へ来た三人
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水族館に来た三人は、様々な魚を楽しむ。イルカショーなどもあり、三人は大はしゃぎ。ペンギンの餌やりでは、バックが魚を食べさせてもらうペンギンに目を細めていた。
水中に浮かぶクラゲに目をやる。クラゲは死ぬと水に溶ける、その性質を説明されながらバックは、もし自分が死んだ時、溶けられたらいいのにと思ってしまう。
水中の生き物たちに思いを馳せて、お土産コーナーに寄る。ペンギンのぬいぐるみとイルカのぬいぐるみを買ったバックは満足気だ。
人が混む中でも何も起きずに済んでホッとしたウェイだったが、そうは問屋が卸さない。
三人が帰ろうとした、そんな中で事件は起きた。
「きゃああああ!」
刃物を振り回す男が暴れていたのだ。そして一人の男の子が人質となってしまった。
「警察はまだか?」
「どうしたら……」
様々な人が迷う中、エラはウェイに言うのだ。
「ウェイなら何とかなるんじゃないの?」
「無茶言っちゃ駄目だよ、エラ」
バックはそう言うが、ウェイは周りを確認し適切な位置を確保、一瞬で銃を構えると犯罪者の頭を撃ち抜き、武器をしまう。
「出ますわよ」
人混みを掻き分け水族館を出る。外に出た瞬間バックが倒れた。
「どうしましたの!? バック!」
「凄すぎて驚いたとか?」
エラは平気そうだが、バックの顔色が悪い。
「マズイですわ。感情を低下させてはいけませんわよ!」
「ごめん……無理……人が死ぬところは……思い出しちゃう……」
これを聞いて……しくじった、そう感じたウェイはバックを抱き上げ走る。エラもついていく。
(ほほほ、いい具合に弱りましたなぁ)
今はハーフの月。命が半分になる半蝿を出していく。
「バック! しっかりして!」
エラがバックの手を握る。
「ありがとう……もう大丈夫。でもいけない! 半蝿が出現した! 博士に連絡しないと!」
「ワタクシのミスですわ。ワタクシが連絡します。場所を教えてくださいませ」
そしてウェイは電話をして車を寄越す。五つの病院で半蝿が出てしまったようだ。近い病院から向かう。
「ごめんなさい」
バックは謝るが、むしろ謝るのはエラとウェイだった。
「ごめん、私がウェイに頼んだから……」
「ワタクシが軽率でしたの。殺せば楽な感覚が染み付いてしまっていますわね」
薬は三人で持ってきているため沢山あるが、飲ませるのが大変だ。だが運転手の女性が手助けしてくれた。
病院に入る前に看護服に車で着替え、薬を受け取った女性は、バックが指示する患者に的確に薬を投与していく。
その間にバックは半蝿を潰した。
「次!」
こうして五つの病院を駆け回った三人と、女性は何とか事態を収めたのだった。
(あらまあ、対処されましたか。まぁ私はあなたを弱らせる役ですしね)
ハーフの月はバックに囁く。
女性はウェイに伝言を伝えた。
「博士からの伝言です。ウェイ、次判断を誤ったら、その役から下ろすとのことです」
その言葉に頭を下げるウェイ。だがエラとバックが抗議する。
「私が悪いの! ウェイは悪くないんです! ウェイを責めないでください!」
「元はと言えば水族館にも来たいと言った私のせい。ウェイを代えたら私も許さないと博士に伝えてください」
その言葉に驚いたのは女性だけではなかった。ウェイも驚いたのだ。
「大丈夫です。もうしくじりませんので」
こうして休みの日を終えた三人だった。いずれデスの月がやってくる。
その時にはこんな事では済まないだろう。ウェイは本部の対策室に来た。ノックをする。
「入れ」
「失礼致しますわ」
そこには眼鏡をかけた白衣の男がいた。
「この度は申し訳ございませんわ」
ウェイは頭を下げる。博士はウェイが頭を上げるのを待った。
「殺し屋としての動きに慣れすぎていたのなら仕方ない。注意事項を伝えていなかった我々のミスでもある。以後気をつけてくれたまえ」
「想像していたより優しく接してくださりますのね」
「バックのお気に入りになってくれたようだから、これ以上ないくらい敬意を払うよ、むしろ君のおかげでバックの安全がより高まって助かる。だからといって気を抜かれたら困るがね」
「ご心配なく。緊急時以外は、バックの目に見える範囲では殺しを控えますわ」
「そうしてくれると助かる。流石、一流の殺し屋トップ=キラーが手塩にかけて育てたという天才だ」
「その師匠の名前、偽名でしてよ」
「君のもだろう」
「あら、お気付きでしたの?」
「データベースには一応、名前は載っているし顔写真も君のものだ。だが経歴に差がありすぎる。偽造したと丸分かりだ」
「師匠に伝えておきますわ。仕事がザルだと」
「必要ない。既に伝えた」
雑談している二人は笑っている。その会話内容が日常では絶対に出ないものではあるが、計画通りいっていることに喜ぶ博士。
「無事、バックが十八歳の誕生日を迎えられることを祈る」
「確か三月三十一日ですわね?」
「そうだ、何としても乗り越えさせる」
「受験がないのが救いですわ」
ローディア王国では小学校入学のために試験があるものの、中学、高校、大学はエスカレーター式。よっぽど酷い行動を取るか、逆にいい点を取って学校を変える以外、退学すらない。
義務教育は大学卒業までだ。悪い学校では縛りがとても大きいが、いい学校では自由が効く。
ちなみに、三人の通う学校は比較的良い学校だ。だからある程度ならサボりも容認される。
まぁそんな学校にウェイが年齢も詐称して通えるくらいだから、中々情報の管理が杜撰ではあるが。
とにかく、またバックの感情の低下に繋がらないように注意しなければと心を引きしめるウェイだった。
水中に浮かぶクラゲに目をやる。クラゲは死ぬと水に溶ける、その性質を説明されながらバックは、もし自分が死んだ時、溶けられたらいいのにと思ってしまう。
水中の生き物たちに思いを馳せて、お土産コーナーに寄る。ペンギンのぬいぐるみとイルカのぬいぐるみを買ったバックは満足気だ。
人が混む中でも何も起きずに済んでホッとしたウェイだったが、そうは問屋が卸さない。
三人が帰ろうとした、そんな中で事件は起きた。
「きゃああああ!」
刃物を振り回す男が暴れていたのだ。そして一人の男の子が人質となってしまった。
「警察はまだか?」
「どうしたら……」
様々な人が迷う中、エラはウェイに言うのだ。
「ウェイなら何とかなるんじゃないの?」
「無茶言っちゃ駄目だよ、エラ」
バックはそう言うが、ウェイは周りを確認し適切な位置を確保、一瞬で銃を構えると犯罪者の頭を撃ち抜き、武器をしまう。
「出ますわよ」
人混みを掻き分け水族館を出る。外に出た瞬間バックが倒れた。
「どうしましたの!? バック!」
「凄すぎて驚いたとか?」
エラは平気そうだが、バックの顔色が悪い。
「マズイですわ。感情を低下させてはいけませんわよ!」
「ごめん……無理……人が死ぬところは……思い出しちゃう……」
これを聞いて……しくじった、そう感じたウェイはバックを抱き上げ走る。エラもついていく。
(ほほほ、いい具合に弱りましたなぁ)
今はハーフの月。命が半分になる半蝿を出していく。
「バック! しっかりして!」
エラがバックの手を握る。
「ありがとう……もう大丈夫。でもいけない! 半蝿が出現した! 博士に連絡しないと!」
「ワタクシのミスですわ。ワタクシが連絡します。場所を教えてくださいませ」
そしてウェイは電話をして車を寄越す。五つの病院で半蝿が出てしまったようだ。近い病院から向かう。
「ごめんなさい」
バックは謝るが、むしろ謝るのはエラとウェイだった。
「ごめん、私がウェイに頼んだから……」
「ワタクシが軽率でしたの。殺せば楽な感覚が染み付いてしまっていますわね」
薬は三人で持ってきているため沢山あるが、飲ませるのが大変だ。だが運転手の女性が手助けしてくれた。
病院に入る前に看護服に車で着替え、薬を受け取った女性は、バックが指示する患者に的確に薬を投与していく。
その間にバックは半蝿を潰した。
「次!」
こうして五つの病院を駆け回った三人と、女性は何とか事態を収めたのだった。
(あらまあ、対処されましたか。まぁ私はあなたを弱らせる役ですしね)
ハーフの月はバックに囁く。
女性はウェイに伝言を伝えた。
「博士からの伝言です。ウェイ、次判断を誤ったら、その役から下ろすとのことです」
その言葉に頭を下げるウェイ。だがエラとバックが抗議する。
「私が悪いの! ウェイは悪くないんです! ウェイを責めないでください!」
「元はと言えば水族館にも来たいと言った私のせい。ウェイを代えたら私も許さないと博士に伝えてください」
その言葉に驚いたのは女性だけではなかった。ウェイも驚いたのだ。
「大丈夫です。もうしくじりませんので」
こうして休みの日を終えた三人だった。いずれデスの月がやってくる。
その時にはこんな事では済まないだろう。ウェイは本部の対策室に来た。ノックをする。
「入れ」
「失礼致しますわ」
そこには眼鏡をかけた白衣の男がいた。
「この度は申し訳ございませんわ」
ウェイは頭を下げる。博士はウェイが頭を上げるのを待った。
「殺し屋としての動きに慣れすぎていたのなら仕方ない。注意事項を伝えていなかった我々のミスでもある。以後気をつけてくれたまえ」
「想像していたより優しく接してくださりますのね」
「バックのお気に入りになってくれたようだから、これ以上ないくらい敬意を払うよ、むしろ君のおかげでバックの安全がより高まって助かる。だからといって気を抜かれたら困るがね」
「ご心配なく。緊急時以外は、バックの目に見える範囲では殺しを控えますわ」
「そうしてくれると助かる。流石、一流の殺し屋トップ=キラーが手塩にかけて育てたという天才だ」
「その師匠の名前、偽名でしてよ」
「君のもだろう」
「あら、お気付きでしたの?」
「データベースには一応、名前は載っているし顔写真も君のものだ。だが経歴に差がありすぎる。偽造したと丸分かりだ」
「師匠に伝えておきますわ。仕事がザルだと」
「必要ない。既に伝えた」
雑談している二人は笑っている。その会話内容が日常では絶対に出ないものではあるが、計画通りいっていることに喜ぶ博士。
「無事、バックが十八歳の誕生日を迎えられることを祈る」
「確か三月三十一日ですわね?」
「そうだ、何としても乗り越えさせる」
「受験がないのが救いですわ」
ローディア王国では小学校入学のために試験があるものの、中学、高校、大学はエスカレーター式。よっぽど酷い行動を取るか、逆にいい点を取って学校を変える以外、退学すらない。
義務教育は大学卒業までだ。悪い学校では縛りがとても大きいが、いい学校では自由が効く。
ちなみに、三人の通う学校は比較的良い学校だ。だからある程度ならサボりも容認される。
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