バック=バグと三つの顔の月

みちづきシモン

文字の大きさ
6 / 42

バック=バグとアーク=ディザスターは水面下で

しおりを挟む
バック=バグとアーク=ディザスターは水面下で

「金はある、金はあるんだ」
 通常の病院にも行けない状態で自分で手当するアーク=ディザスター。病院に行けば手当を受けられるが特定されかねない。
 彼は高級マンションの最上階で包帯に巻かれた手をさすりながら、微笑む
「念の為の発信機は取り付けたが、どうも破壊されたようだな。だが、特徴は覚えたぞ」
 次はもっと上手くやる、そう誓ったアークだった。



 エラは内心早く学校が終わって欲しいと願っていた。博士から昨日何があったかを聞いていたからだ。
 心配で心配で仕方ない。バックはいつも通りの顔をしていたが、きっと怖かっただろうと思うエラ。
 だがバックは本当に何事もなかったかのように過ごしていた。
 エラは学校が終わってから友達と別れ、すぐにバックの家に向かった。
 ドアを開けるバックに飛びつくエラ。バックは驚いていた。
「怖かったでしょう?」
「え? 何が?」
「昨日のことよ!」
「ああ……何も。普通のことだよ」
 その言葉に耳を疑ったエラは家の中に入りバックの話を聞く。

「狂信者の顔も行動も私の頭の中には当たり前のように思い出せる。あの時は私も狂信者だった。だから、別に私にとっては何も怖くないんだよ」
 エラはバックを抱きしめて呟く。
「本当にあなたって人は……」
「でも心配してくれてありがとう。今日エラの顔がおかしかったのはそのせいね?」
 エラは苦笑して、尋ねる。
「私そんな変な顔してた?」
 バックは吹き出して笑った。友達として心配できない外でなのに、心配だからと変な顔をしていたエラの顔を思い出したからだ。
 バックはエラの顔を真似てみた。
「こんな顔してたわ」
 するとエラも吹き出した。
「私そんな顔してたの?」
 二人で笑いあった。だが懸念事項もある。

「捕まえられなかったそうね」
 エラが博士から聞いた情報を言った。アーク=ディザスターは捕まえることができなかった。
 今は身分証も顔も変えているアークを捕まえるのは容易な事ではない。
 場面を見かけた人たちの証言も曖昧だ。カメラで撮っている人はいたが、その顔の主は見つからなかった。

 恐らくあの後、直ぐに違法整形外科に行き、顔を変えたのだろう。多少の変化でも見つけるのは困難になる。
 この国の整形技術はかなり高度なのだ。
 そしてその高度な整形技術に携わり投資もしていたのがアークであったらしい。人間の顔を変える程の技術力を悪用し、成長させたアーク。
 それだけの資金力と影響力を持っていた男が敵であることにエラは震えた。

 だが、バックは冷静だった。
「髪を染める、髪型を変える、これだけで私もちょっと見つかりにくくなる。わかるかな?」
 エラはだからかと頷いた。バックはブロンドベージュの髪からホワイトブロンドの髪になっていたのだ。
 結び方もツインテールからサイドテールに。これなら後ろからならわからない。
「整形はしたくないよね」
 エラはバックの整った顔を見る。
「した所でどうにもならないわ。相手は三つの顔の月と契約しているんだと思う。私が顔を変えても、その姿は三つの顔の月の背面を見ればわかる」

「髪型とかはバレないの?」
「そこまではバレないわ。でも身長はバレた。これからもっと大きくならないと」
 エラは吹き出した。そして爆笑した。
「ミルクでも飲む?」
 ふふっと、笑ったバックは今日も神薬の植物のためにダンスを踊る。
 不安が全くないわけではない。今はまだラックの月だから、そんなに心配してないだけ。もしデスの月の時にこられたり、何か武器を持ってこられたら……。

「駄目ね、感情を低下させそうになる。エラ、一緒に踊ろう!」
 エラと踊るバックは心を跳ね上げた。どこまでもどこまでも上を向いて。
 エラもまた嬉しかった。バックの心を助けることのできる自分に酔っていたのだ。
(私ならバックを助けることができるんだ!)
 エラのその驕りは次にどうなるか、それは三つの顔の月が知っていた。
(あらあら、友を得ましたね? バック=バグ。それはお前の枷となるよ? きっとね。ふふふ、俺のターンが待ち遠しい、ハッハッハ!)
 月は笑う。今はその凄惨な顔を欠けさせて、時が来るのを待つのだ。



(今度は武器も持っていかないとな)
 アークは傷の付いた手を見ながら何かを思いついた。
「そうだ、これならば! 急いで違法医師会に連絡しよう」
 また金を積む、それでも何としてでも、三つの顔の月を完全にしなければならない。
 それは男の悲願、必ず叶えなければならない願い。何故男がそこまで拘るのか、男の過去に何があったのか、それはまだわからない。

 それでもバック=バグを殺し、三つの顔の月にこの国を滅ぼしてもらう。
 それさえすれば、もう彼は彼自身がどうなろうと構わないのだ。
 何が彼をそこまで動かすのか。彼はある写真を見た。
(もうすぐだよ、マリー。奴らに復讐する時だ)
 写真に映る彼と、傍の女性の写真。ウェディングドレスの彼女はお腹も大きく膨らんでいる。
 その彼女がもう既にこの世に存在しないことは状況から見て明らかだった。
 それが遺影だったからだ。アークの願いは彼女のために復讐をする事のように考えられるだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

グレート・プロデュース  〜密かに国をコントロールする最強のエージェントは、恋に落ちた王女を大帝王に即位させることができるのか?〜

青波良夜
ファンタジー
魔法と、魔導科学が進んだ強大な国、グランダメリス大帝国。 俺は、この国を陰からコントロールする秘密組織でエージェントとして働いている。 今回の任務は、豪華客船で行われる密売の現場を探ることだった。 その任務の途中、俺は第三継王家の王女『メリーナ・サンダーブロンド』と出会うことになる。 メリーナ王女は婚約しようとしていたのだが、俺の軽はずみな行動が彼女の運命を変えてしまった。 その後、なんやかんやあり、俺はメリーナ王女に惚れられることに……。 こんなことは、エージェントとしては絶対にあってはならないことだ。 というわけで、俺はメリーナ王女と別れ、二度と会わないよう工作をした。 それなのに、まさか再び出会うハメになるなんて……。 しかも次の任務は、メリーナを大帝王に即位させることだって!? ――これは最強のエージェントが、乙女の恋心に翻弄されながら、過去最難関のミッションに挑む物語である。 ※『ノベルアップ+』、『ネオページ』にも投稿してます。 ※『小説家になろう』『カクヨム』に投稿し、一度完結済みとなった作品です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...