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メルディ国編
38 正論ですヨ
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……あれ?
「…………」
「…………」
不審者と言ったっきり、あたしを睨み付けるだけの副隊長改め犯罪協力者。
そいつを不快そうに見る本来なら同僚であるカジスやルチタンの隊長&兵士達。
色々(?)あった所為か「こいつバカだろ?」的な目で叫んだ男を見ているネス&ルベル。
「…………」
「…………」
……チョット待テ
「それだけっ!?」
「「「は?」」」
思わず叫んだあたし。
その声に驚きを上げる隊長&兵士達&犯罪協力者。ネスとルベルは首を傾げ。
「もっとなにか言うのかと思って次の言葉を待っちゃったじゃないのっ!」
「「「――は?」」」
今度はその場にいた(あたし以外の)全員が首を傾げた。
「いや、だってさ? 不審者って当然じゃない。あたしってば、ずーっと山に籠ってた(という設定な)んだよ? 身分証明ないんだよ? いくらあたしでも、自分が不審者だって自覚ぐらいあるよ? だからそんな事を言われたくらいでいちいち気にも掛けないっての。それなのに、え、何。不審者って言えば怒るとでも思ってたの? 自分がバカって言われたから、意趣返しのつもりで言い返したって感じ? え? その程度で? まさか、そんな事であたしを見下し、自分が優位に立ったとか思っちゃったの? その思考って、底が浅過ぎない?」
「「「……」」」
思わず本音が漏れた。
本来は異世界人なあたしだ。この世界の常識なんてない――マルに教えてもらった事が全てだ――。だから、不審者だと思われたって仕方ない。いくらなんでも、そのっくらいは自覚してるっての!
それなのに、本人自覚している事だけ言って終わり? ふざけんなっての。
だってさ? 本当に、言葉が続くと思ってたんだよ? それなのに、あれだよ? この世界ならではの舌戦とか期待していた分、肩透かし過ぎだっての。
唖然としている周囲を見て、これ以上の反論は期待するだけ無駄だと理解する。ちっ。
だったらもういいよ。さっさとブタ箱に送ってやる。いや、この世界にブタ箱って言葉があるかは知らんけど。
さてさて。
実は、先に貰っていたマルの情報や隊長達の行動なんかから分かる通り、このアホは、ここに至るまでに結構な頻度で墓穴を掘る発言をしていたりする。
それを利用して、サクサク行ってみよう。
「所でさぁ……カジスの隊長は、あたしやネスが護送依頼を受けて同行しているってこの町の兵士には伝えてないの?」
「いえ、伝えています。その上で、全ての事に対して了解の返事も貰っています」
「確かに。連絡はきていますし、返事もしてあります。兵士達にも非番等関係なしに、全員に護送がある事は伝えてあります」
あたしの言葉をカジスの隊長が大慌てで否定する。そして、ルチタンの隊長も同意し、否定する。うんうん。そこ大事。
「じゃあ、あたしが上ランク以上の魔力保持者であるのも伝わっているんだよね?」
「「はい」」
隊長二人が揃って頷く。
「じゃあさ。貴方達は、あたしみたいな上ランク以上の高魔力保持者に会った事はある?」
「ありません。上ランクの魔力保持者は大抵、国に召し抱えられます。その為、我々の様に地方警備のモノは簡単にその姿を見る事も、その力を知る事も適いません」
「うん。じゃあ、あたしが竜を従えていても、高魔力保持者の力を知らない以上、不謹慎とか非常識とか言っちゃう方がおかしいよね?」
「それは……」
「ついでに言っておくと、あたしの魔力は特レベルだから」
『はっ!?』
おっと。ルベル以外、全員の声がハモった。ネスまでびっくりしている。
「特レベルの魔力保持者だって言ってるの。そんな訳で、自分の常識に当て嵌めてあたしの魔法を見ても理解できないから」
そう断言すると、あたしの魔法を見てきたカジスの隊長&兵士、ネスが一斉に納得した様に頷いた。ルベルなんて「それもそうじゃのぉ」等と呑気に笑っている。
「そんなあたしが、無傷で盗賊を捕まえるのって変?」
「いえ。我等の理解が及ばない力を持っているのでしたら、どんな事も可能ですね」
カジスの隊長が達観した様に言う。いや、あれは達観じゃなくて、考える事を放棄したのかな?
ルチタンの隊長に視線を向けると、そちらも苦笑しながら頷いた。
「確かに。我等は魔力から言うと最高でも中の中レベル。上レベルを超えるレベルの魔力保持者の魔法など見当も付きません」
「うん、まあ、それはいいとして。カジスの隊長は、あたしが上ランクの魔力保持者だと伝えた。貴方達もそれを知っている。そして、上ランクの魔法なんて知らない。これだけの条件が揃った人物が『敵』と判断して捕まえ、しかもソレをカジスの隊長がきちんと盗賊だと言っているのに、アレを一般人扱いするのってどうなの?」
「……変、ですね」
「はい。おかし過ぎます」
兵という兵の不審げな瞳があのアホに向く。
うん。ここまではさっきまであった不信感をさらに強くしただけ。
ではでは。さらにいってみよー!
「それで。どうしてあんたはあたしを睨み付けるのかな~?」
「――不審者をどういう目で見ようと問題ない」
「いや、だってさ? あたしってば、身分証明書はないけど正式に依頼を受けて護送に協力してる魔法使いなんだよ? その通達が行き渡っているのに、不審者って言うのはどうなの? カジスの隊長を出迎えるって事は、それなりな地位は持ってんでしょ? それなのに、協力者を見下す? あんたのその行動や言動は代表者の一人として見られる。つまり、それが全ての兵士の総意だと思われたって仕方ないんだよ? そこんとこ、ちゃんと理解している?」
「ババァ……年寄りの分際でこの俺をバカにすんじゃないっ!!!」
おや。普通の事を言っただけなのに……このアホは、本当にアホだったようだ。だって、剣を抜いてあたしに切り掛かってきたのだから。
どうしよう――とか考えるより先に、あたしのチート達は勝手に動き出した。
トキの口が開いたかと思うと、マチがあたしの手に現れた。着ている服達は全て攻撃無効だから何の問題もないし……。
で。
加護が仕事した。
アホが振り上げた剣をマチで払い、返す手でその手首を打ち付け、剣が落ちたのを見計らったかの様に足がみぞおちを蹴り付け、少しはなれた地面へと吹き飛ばした。
戦い方なんて全く知らないあたしなのに、手が、足が、勝手に動く。ちょい怖い。これはどう考えても、闘神の加護の影響だろう、うん。ド素人をそれなりに戦える(?)様にしちゃうなんてスゴイとしか言えない。
後方の地面で数回バウンドしたアホが伸びて動かないのを確認し、あたしは足を降ろす。
隣では、あたしを庇うつもりだったのだろう。動こうとしていたネスがキラッキラした目であたしを見ている。ヤメテ。そんな目で見ないで……。
一連の流れをのほほ~んと見ていたルベルは。
「ワシすら吹き飛ばすリジーの攻撃をくらったのじゃ。あれは生きておるのかのぉ?」
その言葉を聞き、弾かれた様に動き出す全ての隊長&兵士達。その顔面は真っ青だった。
……なんか、すまん。
だが、多分、一応手加減はしていると思うから、生きている……筈。
うーん……マップ表示、少し変更しようかな?
生きてるか死んでるか、分かるように……。
「…………」
「…………」
不審者と言ったっきり、あたしを睨み付けるだけの副隊長改め犯罪協力者。
そいつを不快そうに見る本来なら同僚であるカジスやルチタンの隊長&兵士達。
色々(?)あった所為か「こいつバカだろ?」的な目で叫んだ男を見ているネス&ルベル。
「…………」
「…………」
……チョット待テ
「それだけっ!?」
「「「は?」」」
思わず叫んだあたし。
その声に驚きを上げる隊長&兵士達&犯罪協力者。ネスとルベルは首を傾げ。
「もっとなにか言うのかと思って次の言葉を待っちゃったじゃないのっ!」
「「「――は?」」」
今度はその場にいた(あたし以外の)全員が首を傾げた。
「いや、だってさ? 不審者って当然じゃない。あたしってば、ずーっと山に籠ってた(という設定な)んだよ? 身分証明ないんだよ? いくらあたしでも、自分が不審者だって自覚ぐらいあるよ? だからそんな事を言われたくらいでいちいち気にも掛けないっての。それなのに、え、何。不審者って言えば怒るとでも思ってたの? 自分がバカって言われたから、意趣返しのつもりで言い返したって感じ? え? その程度で? まさか、そんな事であたしを見下し、自分が優位に立ったとか思っちゃったの? その思考って、底が浅過ぎない?」
「「「……」」」
思わず本音が漏れた。
本来は異世界人なあたしだ。この世界の常識なんてない――マルに教えてもらった事が全てだ――。だから、不審者だと思われたって仕方ない。いくらなんでも、そのっくらいは自覚してるっての!
それなのに、本人自覚している事だけ言って終わり? ふざけんなっての。
だってさ? 本当に、言葉が続くと思ってたんだよ? それなのに、あれだよ? この世界ならではの舌戦とか期待していた分、肩透かし過ぎだっての。
唖然としている周囲を見て、これ以上の反論は期待するだけ無駄だと理解する。ちっ。
だったらもういいよ。さっさとブタ箱に送ってやる。いや、この世界にブタ箱って言葉があるかは知らんけど。
さてさて。
実は、先に貰っていたマルの情報や隊長達の行動なんかから分かる通り、このアホは、ここに至るまでに結構な頻度で墓穴を掘る発言をしていたりする。
それを利用して、サクサク行ってみよう。
「所でさぁ……カジスの隊長は、あたしやネスが護送依頼を受けて同行しているってこの町の兵士には伝えてないの?」
「いえ、伝えています。その上で、全ての事に対して了解の返事も貰っています」
「確かに。連絡はきていますし、返事もしてあります。兵士達にも非番等関係なしに、全員に護送がある事は伝えてあります」
あたしの言葉をカジスの隊長が大慌てで否定する。そして、ルチタンの隊長も同意し、否定する。うんうん。そこ大事。
「じゃあ、あたしが上ランク以上の魔力保持者であるのも伝わっているんだよね?」
「「はい」」
隊長二人が揃って頷く。
「じゃあさ。貴方達は、あたしみたいな上ランク以上の高魔力保持者に会った事はある?」
「ありません。上ランクの魔力保持者は大抵、国に召し抱えられます。その為、我々の様に地方警備のモノは簡単にその姿を見る事も、その力を知る事も適いません」
「うん。じゃあ、あたしが竜を従えていても、高魔力保持者の力を知らない以上、不謹慎とか非常識とか言っちゃう方がおかしいよね?」
「それは……」
「ついでに言っておくと、あたしの魔力は特レベルだから」
『はっ!?』
おっと。ルベル以外、全員の声がハモった。ネスまでびっくりしている。
「特レベルの魔力保持者だって言ってるの。そんな訳で、自分の常識に当て嵌めてあたしの魔法を見ても理解できないから」
そう断言すると、あたしの魔法を見てきたカジスの隊長&兵士、ネスが一斉に納得した様に頷いた。ルベルなんて「それもそうじゃのぉ」等と呑気に笑っている。
「そんなあたしが、無傷で盗賊を捕まえるのって変?」
「いえ。我等の理解が及ばない力を持っているのでしたら、どんな事も可能ですね」
カジスの隊長が達観した様に言う。いや、あれは達観じゃなくて、考える事を放棄したのかな?
ルチタンの隊長に視線を向けると、そちらも苦笑しながら頷いた。
「確かに。我等は魔力から言うと最高でも中の中レベル。上レベルを超えるレベルの魔力保持者の魔法など見当も付きません」
「うん、まあ、それはいいとして。カジスの隊長は、あたしが上ランクの魔力保持者だと伝えた。貴方達もそれを知っている。そして、上ランクの魔法なんて知らない。これだけの条件が揃った人物が『敵』と判断して捕まえ、しかもソレをカジスの隊長がきちんと盗賊だと言っているのに、アレを一般人扱いするのってどうなの?」
「……変、ですね」
「はい。おかし過ぎます」
兵という兵の不審げな瞳があのアホに向く。
うん。ここまではさっきまであった不信感をさらに強くしただけ。
ではでは。さらにいってみよー!
「それで。どうしてあんたはあたしを睨み付けるのかな~?」
「――不審者をどういう目で見ようと問題ない」
「いや、だってさ? あたしってば、身分証明書はないけど正式に依頼を受けて護送に協力してる魔法使いなんだよ? その通達が行き渡っているのに、不審者って言うのはどうなの? カジスの隊長を出迎えるって事は、それなりな地位は持ってんでしょ? それなのに、協力者を見下す? あんたのその行動や言動は代表者の一人として見られる。つまり、それが全ての兵士の総意だと思われたって仕方ないんだよ? そこんとこ、ちゃんと理解している?」
「ババァ……年寄りの分際でこの俺をバカにすんじゃないっ!!!」
おや。普通の事を言っただけなのに……このアホは、本当にアホだったようだ。だって、剣を抜いてあたしに切り掛かってきたのだから。
どうしよう――とか考えるより先に、あたしのチート達は勝手に動き出した。
トキの口が開いたかと思うと、マチがあたしの手に現れた。着ている服達は全て攻撃無効だから何の問題もないし……。
で。
加護が仕事した。
アホが振り上げた剣をマチで払い、返す手でその手首を打ち付け、剣が落ちたのを見計らったかの様に足がみぞおちを蹴り付け、少しはなれた地面へと吹き飛ばした。
戦い方なんて全く知らないあたしなのに、手が、足が、勝手に動く。ちょい怖い。これはどう考えても、闘神の加護の影響だろう、うん。ド素人をそれなりに戦える(?)様にしちゃうなんてスゴイとしか言えない。
後方の地面で数回バウンドしたアホが伸びて動かないのを確認し、あたしは足を降ろす。
隣では、あたしを庇うつもりだったのだろう。動こうとしていたネスがキラッキラした目であたしを見ている。ヤメテ。そんな目で見ないで……。
一連の流れをのほほ~んと見ていたルベルは。
「ワシすら吹き飛ばすリジーの攻撃をくらったのじゃ。あれは生きておるのかのぉ?」
その言葉を聞き、弾かれた様に動き出す全ての隊長&兵士達。その顔面は真っ青だった。
……なんか、すまん。
だが、多分、一応手加減はしていると思うから、生きている……筈。
うーん……マップ表示、少し変更しようかな?
生きてるか死んでるか、分かるように……。
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