十六夜の月

むらさきおいも

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様々な感情(真壁)

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「ん…」

龍士りゅうじ斗亜とあ目覚ましたっ」

「斗亜っ!?斗亜っ!」

「ん…龍士…?あれ?颯太そうたは?」

「もう帰ったよ…」

「俺…カラオケしてて…なんでだっけ…?」


ほっとしたのも束の間、俺はやっと目を覚ました斗亜の様子を手早く確認していく。

呼吸も脈も正常、まだお酒は全然残ってるだろうから無理はさせられないけれど、一先ず落ち着いて良かった。

斗亜は何があったのか思い出せないのか、他人事のように目をまん丸くさせてとぼけてるけど、龍士の表情は至って真剣で俺も少し身を引きしめた。


「何でじゃねぇよ…っ!酒飲んでぶっ倒れて…っ、充彦みつひこ真壁まかべさんが助けにいかなかったらお前…っ」

「龍士…?泣いてるの…?」

「泣いてねぇよっ、ばかっ…心配かけさせやがって…」

「ごめん…」


見る見るうちに表情が歪んでら言葉を詰まらせながら涙を拭う龍士。

こんな風に人前で、泣いたり感情を露わにする龍士を今まで見た事なかったから正直驚いた。

そしてふと敦史あつしさんを見れば、敦史さんもまた俺と同じ事を思っているのか物凄く難しい表情で二人を見守っている。


「ん…まぁ無事で良かったよ。もう大丈夫か…?」

「んぅ…頭痛い…」

「ガキの癖に酒なんか飲むからだろ…っ」

「もう飲まない…」

「あぁ…そうしてくれ」


斗亜の頭を撫でながら優しく微笑む龍士は、本当の兄の様で…

いや、違うな…兄じゃない。
あれは好きな人を見る目だ。

斗亜は…?
斗亜は龍士の事、どう思ってるんだろう…

敦史さんは…?
気がついてるんだろうか。


「真壁…ちょっと」

「あっ、はい」


タイミングよく敦史さんに呼ばれ、俺らは二人がいる部屋から出た。


「斗亜どう?大丈夫そう?」

「うん、もう大丈夫だと思う。けど…」

「ん?」

「あ、いや…龍士なんだけど、斗亜に対して結構感情的になってるなぁ…って」

「う~ん。やっぱりそうだよな…」

「敦史さんはいいの?その…二人の事…」

「二人が幸せなら俺は構わないけど…」


けど…その先の言葉を濁した敦史さんは、少し表情を曇らせた。

可愛い弟の様な斗亜が、龍士に取られちゃうとなるとやっぱり少し寂しいのかな?

そこへちょうど、颯太くんを送って来た充彦が帰ってきた。


「ただいま帰りました」

「お疲れ様。颯太くん大丈夫そう?」

「はい。あの子も結構酔ってたけど…それより気持ちの方ちょっと心配です」

「責任感じてたもんね…」

「俺、しばらく颯太の様子みます。斗亜は?」

「うん、もう大丈夫…けど」

「何かあったんですか?」

「ううん、斗亜じゃなくて龍士がね…」

「龍士?」

「あぁ。あんなに怒ったの久しぶりに見たもんな…」


今まで黙って考え込んでいた敦史さんも、ついに言葉を発した。

確かに…あんなに感情を顕にした龍士は俺は今まで見た事がない。

俺らがコソコソと部屋の外で話していると、部屋の扉が開き三人の視線が一斉に扉に集まった。
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