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危険な転生者

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どうも櫻井です。
この世界について2週間ぐらい経ちました。
「…最高かもしれん。」
進藤さんから頂いた住居が実によかった。
てっきり格安アパートととかにぶち込まれるのかと思ってたけど、流石進藤さん。
普通に一軒家をもらってしまった。
トイレと風呂は別だしエアコン付いてるし収納多いし、何より進藤さんのおかげで家賃とかないんだもん。
イケオジはやることが違うなぁ。
しばらく生活に困らないぐらいの金も貰ったし、マジで役得だ。
「しばらくはだらだら過ごそう。」
そう誓って本日3度目の惰眠を貪ろうとしたところ…。
プルプルとスマホが鳴る。
…まぁ進藤さんだろうな。
このスマホも進藤さんからもらった物で連絡先知ってる人も他にいないし。
「もしもし。」
「あぁ、櫻井くん。今回もよろしく頼むよ。」
「….マジですか。」
進藤さんから定期的に電話がかかって来る。
「また暴れている人がいてさ。少し手伝ってきてくれない?」
時々進藤さんから電話がきては魔法で暴れている人間を捕まえる手助けをさせられている。
…させられているといったものの、ここまで面倒見てもらって断るのが忍びないから手伝っているだけで強制力はない。
「今回はどんな奴ですか。前回みたいに熱いからって町中に水をばらまいて打ち水してる奴ですか。」
マジで魔法で変なことする奴が多すぎる。
町中水浸し野郎の他にも近隣店舗同士の喧嘩で炎まき散らしあったり空飛んで高層ビルに突っ込んだり訳がわからんやつばかりだ。
「いや、今回は私たちと同じ転生者だ。」
「え?」
俺らと同じ転生者と来たか…。
さすがに今回は面倒そうだな…。
「いやー今日はちょっとおなか痛いかも…。」
「特別手当も出しちゃおうかな。」
「さーて頑張っちゃおうかな!」
やっぱり進藤さんは最高だぜ。



「お疲れ様です。」
「あぁ櫻井くん待ってたよ。」
現場では特殊部隊の皆様が一人の男を取り囲んでいる。
「…何ですかあれ?」
「…変質者だ。」
男は海パン一丁で仁王立ちしている。
「全員で一斉に制圧するぞ!」
特殊部隊の皆様が一斉に魔法を放つ。
流石特殊部隊の皆様、魔法の威力がそこら辺の奴らとは段違いだな。
攻撃が海パン男に向かっていき爆発する。
…これ大丈夫なんか?
普通にオーバーキルな気がするんだが…。
「え?」
土煙の中から変わらず仁王立ちしている海パン男がでてきた。
「効いてないみたいですね。」
「…そうなんだよ。先ほどから何度も魔法を打ち込んではいるんだが…。」
「魔法が効かないと…。」
「というよりすり抜けているんだ。彼の後ろの建物を見ておらん?」
見てみると後ろの建物が崩落している。
明らかに海パン男に当たっていたであろう攻撃が後ろの建物に当たったようだ。
確かに海パン男を貫通しているみたいだ。
「悪いが君たちに構っている場合じゃない!」
うわびっくりした。
急に海パン男が大声で話し始めた。
「私はこの世界でやらなければいけないことがあるのだ!全員どいてもらおうか!」
そう叫ぶと彼の身体が急に宙に浮いた。
…確か転生者は魔法を使えない。
となるとあれも彼が転生した時にもらった力なのか?
…それにしても足をバタバタ動かしていてあんまり見栄えはよくないな。
そうしないと空中を動けないのか?
「攻撃が透過して空も飛べる能力…。」
強すぎん?
「全員そこをどけ!」
凄まじい勢いで突っ込んできた。
特殊部隊の皆さんが身体で止めようとするもそれすらすり抜ける。
「ちょ!櫻井君彼を止めてくれ!」
「そんな!無茶ですよ!」
「どけぇぇぇ!」
ものすごい勢いで海パン男が飛び込んできて俺のみぞおちに突っ込んできた。
「ゴハァ!」
「何!?」
海パン男は驚愕している。
そりゃいつも通り相手の身体をすり抜けようとしたら思い切り頭突きをかましてしまったのだ。
驚きもするだろう。
ちなみに俺は予想外のダメージで驚愕している。
あまりにも痛い。
「何者だ?貴様…。」
なんか言ってるけどそれどころじゃない。
なんで寄りにもよってみぞおちにタックルするかな!?
あまりの痛みで旨く喋れねえよこっちは!?
「桜井君が止めてくれたぞ!今のうちに捕獲するんだ!」
「チッ…。」
海パン男は舌打ちをし、今度は地面の中に潜った。
なんだこいつ本当に何でもできるじゃんか!?
てか潜れるなら最初からそうしろよ…。
みぞおち損じゃないか。
「くそ!どこに行った!」
特殊部隊の皆さんが慌てふためいている。
こりゃもう逃げられたな。
すみません進藤さん、力及ばずです。
…これもしかして特別手当でないとかある?
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