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研究所の謎

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どうも櫻井です。
俺の能力を都合良く消す方法が見つかりそうでしたが、諦めることにしたようです。
「まぁみんなが無理と言うならしょうがないけどさ。」
俺のためにわざわざ危険な綱渡りをする必要もない。
「しょうがないわ。だってこの研究所は進藤の囲っている転生者のものよ。近づくのはあまりにも危険だわ。」
…まぁ驚くほどのことではない。
元々警察と進藤はズブズブだ。
この手錠も進藤を慕う転生者に作らせ警察に流しているのだろう。
「さやか様とも交流がある方なのですか?」
「ええ、私がいた頃に進藤の傘下に加わっていたわ。名前は確か神崎…だったかしら。能力は本人曰く…『神の叡智を手に入れる』能力。」
「なにそれー?どんな能力なのー?」
「知らないわよ…ただ本人がそう言っていただけ。私が知ってるのはその能力を使って、自分だけの研究所で1人で好きに実験しているってことだけよ。」
「…それって変じゃね?」
「え?」
「神の叡智があるのに何の実験をするんだよ。実験って何かを知るための行為だろ。」
「確かに?」
「もしかしたら本人はそう願ったけれど思ったような力じゃなかったのか…それとも神の叡智でも分からないことがあるのか…。」
そもそも神の叡智って何やねんって話なのだが。
「じゃあ実質能力は不明ってことになるわね。はぁ…ただでさえ進藤派のことは分からないことも多いのに。」
「さやかちゃんー。別に今はそのことを考えなくて良いんじゃないかなー。」
「それもそうね…そして能力が不明となると尚更不用意に近づけないわ。」
まぁそれはそうだな。
「どうしてもこの研究所に行かなければいけない理由ができたら話は別だけどねー。」
「そうだなぁ…。」



「というわけで巷で噂の回復能力を持った転生者さんの依頼で一緒にこの前話した研究所に行かない?」
「ちょっと待ってくれ。」
なんかとんでもない急展開が起こっている。
研究所について話して彼これ2日ほど経ったある日、雛巳が1人の女性を連れて屋敷のある山の近くまでやって来ていた。
「事前に連絡を入れていたとはいえ、ここに部外者を連れてくるのは感心しないわね。」
さやかは若干不機嫌だ。
まぁそれもそのはず、もしもここから俺らの居場所が漏れたらまた俺たちは遠くまで逃げる必要がでてくる。
「それに関しては本当にごめん。でもどうしても放っておけなくて。」
いつになく真剣な雛巳。
「…放っておけないってのは?この人とあの研究所の…なんだっけ?神崎だっけ?そいつとの関係は何なんだ?」
すると後ろにいた転生者の女性が話し始めた。
「私は…あの研究所で働いていた者です。」
おいおい進藤派の神崎の元に至って実質進藤派じゃないか…。
すると女性は土下座をして、
「お願いします!私と一緒に、あの子を助けてあげてください!」
…どうやら相当切羽詰まっているようだ。
「さやか様、どうしますか?」
「…ともえは発信機などがないか全身くまなく探しなさい。ひなみは適当な服を買ってきて着させなさい。服に何か細工を仕掛けてるかもしれないわ。あと、ともえはもしもコイツが何か不自然な動きを見せたら即刻倒しなさい。」
「了解しました。」
「りようかーい。」



転生者である女性、白石ゆうなが言うには…現在、神崎英治が行なっている非人道的な実験を辞めさせたいらしい。
彼女は最近この世界に転生して進藤の傘下に入った。
しかし手伝うように言われた研究所での行いが余りにも許し難いものであったため、そこから抜け出したいらしい。
「…嘘はついてないね。」
マリアの神の能力で嘘はついていないと判明した。
ちょっとこの能力便利すぎない?
「具体的に何の実験をしているんだ?」
非人道的な実験、命掛けの人体実験やクローンに関する実験とかがよくそんな言われ方をするイメージだが。
「転生者を利用した化学兵器の発明です。」
…なるほど、これは実に非人道的だ。

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