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第二十八話
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「しかし、ですね……」
静かな部屋の中で、呟く様に言うルーメン。
「戦争から逃げるのもひとつの手だと言う事は理解しています。エルカノートに避難するお話や、テルラくん、レインボー様を通じてグラシラドのミマルン様と交渉出来るのは、奇跡に近い幸運だと言う事も。このまま悶々として時間を潰すよりは、少しでも動いた方が良いでしょう」
テルラが胸を叩く。
「平和の使者なら、喜んでお引き受けします。それが僕の生まれた意味でもありますので」
「ありがとう。勿論、不安も有ります。魔法が使えないミマルン様は王室での立場が低い、と言う部分です。そこはレインボー様に頼らなければならないでしょう」
「わたくしが正式な外交をするには本国と魔法通信で打ち合わせをしなければなりませんのでここでの約束は出来ませんが、お引き受けしますわ。しかし、ミマルンの扱いの悪さは不自然さも感じますわ」
「レインボー様のおっしゃる事も分かります。しかしグラシラドの立場になって考えれば、魔法の資質が有る子供を集めると言う政策の手前が有るんでしょう。本当に扱いが悪ければ、武将として扱ったり、単身で他国へ渡る許可は出しません」
「本人が思っているほど扱いは悪くない、と。確かに三人部隊と言う部下も付いていましたし、戦果を出せれば良い、と言う感じでしょうか」
「本当に魔法が使えない王族を疎んでいるなら、幼少時に事故死か病死していたでしょう。ですので、私はミマルン様を頼って、グラシラドの同盟国になる事も辞しません。父王が生きていますので、私が勝手に属国の判断をする事は出来ませんけど」
「では、そちらの方向で話を進めますか?」
レイが確認を迫ると、ルーメンは渋い顔をした。
「やり残している事があります。最後にそれをやって、その結果で考えたいです」
「やり残している事とは?」
「南の国が魔法に盛んなのは、南を守護するクリスタルドラゴンが人間に魔法の極意を授けたからだと言う伝説が残っています」
驚くテルラ。
「南のドラゴンの話が残っているんですか? ミマルンは聞いた事が無いとおっしゃっていましたが」
「クリスタルドラゴンの伝説は失われている様ですね。ランドビークの図書都市にも記録は残っていませんでした。クリスタルドラゴン自身が行方知れずになっているせいでしょう。ですが――」
ルーメンはドヤ顔で自身のこめかみを指で押さえた。
「神に貰った私のギフトのひとつに、その地に残る過去の記憶を読む事が出来る、と言う物が有ります。ただし、強烈に印象に残っている部分しか見られませんので、何でも見える訳ではありませんが」
「ギフトと言う物も潜在能力と同じで制限が有るんですね」
「強力過ぎる能力は、世界を乱さない様に制限を掛けるんでしょう。神の身になれば制限は取れるでしょうが、私に神になる資格は有りません」
テルラとカレンを見て笑むルーメン。
「とある国で見た過去から推測するに、魔法結晶が生まれる理由はクリスタルドラゴンの仕業だと考えると納得出来ます。神の召喚はもう行えませんので、魔法結晶の謎を解き明かし、新たな着想の足掛かりにしたいと思います」
ルーメンは立ち上がり、窓の外を見る。防音処理がされているので何も声は聞こえないが、大きな亀の魔物と無垢な子供達が帰路に付いている。開拓が進んでいない隠れ里なので日が沈むまで畑仕事をしないと食べて行けない。
「そのために、大陸中央に居るはずのドラゴンのリーダーとお話がしたいと思っています。イーによると、ドラゴンとは会話は出来ないが意思疎通は可能、だそうです。リーダーの生死は不明ですが、死んでいたとしても私のギフトで過去の記憶を読めばなんとかなるでしょう」
「大陸中央と言うと、砂漠の真ん中になりますが」
確認する様に言うテルラに迷い無く頷いて見せるルーメン。
「私はこれから砂漠に向かいます」
静かな部屋の中で、呟く様に言うルーメン。
「戦争から逃げるのもひとつの手だと言う事は理解しています。エルカノートに避難するお話や、テルラくん、レインボー様を通じてグラシラドのミマルン様と交渉出来るのは、奇跡に近い幸運だと言う事も。このまま悶々として時間を潰すよりは、少しでも動いた方が良いでしょう」
テルラが胸を叩く。
「平和の使者なら、喜んでお引き受けします。それが僕の生まれた意味でもありますので」
「ありがとう。勿論、不安も有ります。魔法が使えないミマルン様は王室での立場が低い、と言う部分です。そこはレインボー様に頼らなければならないでしょう」
「わたくしが正式な外交をするには本国と魔法通信で打ち合わせをしなければなりませんのでここでの約束は出来ませんが、お引き受けしますわ。しかし、ミマルンの扱いの悪さは不自然さも感じますわ」
「レインボー様のおっしゃる事も分かります。しかしグラシラドの立場になって考えれば、魔法の資質が有る子供を集めると言う政策の手前が有るんでしょう。本当に扱いが悪ければ、武将として扱ったり、単身で他国へ渡る許可は出しません」
「本人が思っているほど扱いは悪くない、と。確かに三人部隊と言う部下も付いていましたし、戦果を出せれば良い、と言う感じでしょうか」
「本当に魔法が使えない王族を疎んでいるなら、幼少時に事故死か病死していたでしょう。ですので、私はミマルン様を頼って、グラシラドの同盟国になる事も辞しません。父王が生きていますので、私が勝手に属国の判断をする事は出来ませんけど」
「では、そちらの方向で話を進めますか?」
レイが確認を迫ると、ルーメンは渋い顔をした。
「やり残している事があります。最後にそれをやって、その結果で考えたいです」
「やり残している事とは?」
「南の国が魔法に盛んなのは、南を守護するクリスタルドラゴンが人間に魔法の極意を授けたからだと言う伝説が残っています」
驚くテルラ。
「南のドラゴンの話が残っているんですか? ミマルンは聞いた事が無いとおっしゃっていましたが」
「クリスタルドラゴンの伝説は失われている様ですね。ランドビークの図書都市にも記録は残っていませんでした。クリスタルドラゴン自身が行方知れずになっているせいでしょう。ですが――」
ルーメンはドヤ顔で自身のこめかみを指で押さえた。
「神に貰った私のギフトのひとつに、その地に残る過去の記憶を読む事が出来る、と言う物が有ります。ただし、強烈に印象に残っている部分しか見られませんので、何でも見える訳ではありませんが」
「ギフトと言う物も潜在能力と同じで制限が有るんですね」
「強力過ぎる能力は、世界を乱さない様に制限を掛けるんでしょう。神の身になれば制限は取れるでしょうが、私に神になる資格は有りません」
テルラとカレンを見て笑むルーメン。
「とある国で見た過去から推測するに、魔法結晶が生まれる理由はクリスタルドラゴンの仕業だと考えると納得出来ます。神の召喚はもう行えませんので、魔法結晶の謎を解き明かし、新たな着想の足掛かりにしたいと思います」
ルーメンは立ち上がり、窓の外を見る。防音処理がされているので何も声は聞こえないが、大きな亀の魔物と無垢な子供達が帰路に付いている。開拓が進んでいない隠れ里なので日が沈むまで畑仕事をしないと食べて行けない。
「そのために、大陸中央に居るはずのドラゴンのリーダーとお話がしたいと思っています。イーによると、ドラゴンとは会話は出来ないが意思疎通は可能、だそうです。リーダーの生死は不明ですが、死んでいたとしても私のギフトで過去の記憶を読めばなんとかなるでしょう」
「大陸中央と言うと、砂漠の真ん中になりますが」
確認する様に言うテルラに迷い無く頷いて見せるルーメン。
「私はこれから砂漠に向かいます」
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