少女達の日常

ガル

文字の大きさ
3 / 9

朝食ぐらい静かにしろ!

しおりを挟む
  スーと音がなりながら襖が開いた。
「ん?他は?」
「平賀お姉ちゃんは畑に行っててにゃーとお姉ちゃんはまだ爆睡してます」
と、ほどよくキツネ色に焼けたパンにマーガリンを塗る四女のユメはいう。ユメという名はあだ名で本当は夢空である。
「平賀姉さんは畑でクソ姉貴とにゃーは寝てるのか。んじゃ、起こさなくてもいいか。めんどくさいし」
サラダにドレッシングをかけて混ぜながら起こしに行くことを放棄する。
(あー体がダルい...。わかってちゃいるけど寝る時間を調整するか、あるい別の方法も考えなくちゃな)
そんなことをボーっと考えながらフュミはサラダをシャクシャク食べていく。
 一方、ユメはマーガリンを塗ったパンにサラダ、目玉焼き、ハムを挟んでもう一回マーガリンを塗ったパンをパフッとのせてサンドイッチを作っていた。
「おーうまそー」
目玉焼きは醬油派なので醬油を目玉焼きにかけながらフュミはいう。
そしてユメはサンドイッチを両手で持って食べた。大きな口を開けて二口で。バリバリバリバリムシャムシャムシャムシャゴックンって。10秒も満たずに。
「おーいい食べっぷり」
そして食べた終わって湯気がのぼる熱々のお茶を一口飲み一呼吸おいて一言、
「ぜんぜっん足りません」
「知らん」
「ぜーんーぜーんーたーりーまーせーんー!」
机をバンバンバンて叩きながら訴えてくる。
「おかわりぐらい自分で持ってこい!」
「えー、それはめんどくさいじゃないですかー」
「めんどくさいやつだな」
「ぷりーずふーど!ぷりーずふーど!」
「お前がよく嚙んで食べないのが悪い!」
ぷりーずふーど!ぷりーずふーど!とずっと言ってくる。
フュミは「ハー・・・」とため息をつき、
「わかった。ちょうどお茶飲み切っちまったところだったから汲んでくるついでになにか持ってきてやるよ」
よっこらっしょと立ち上がって台所にお茶を汲んむついでに何か食べる物を取りに行った。
 食べる物ね・・・と思いつつコポコポコポとマイカップにフュミは少しぬるくしたお茶を注いでいる。
「んま、何かしら食べる物冷蔵庫にあるでしょ」
お茶を注ぎ終わった急須を置き冷蔵庫を開く。

「調理しなくてもいいやつがいいn...」
すっからかんである。冷蔵庫の中身が。一応味噌と七味があるがこれを渡す訳にはいかない。
居間からぷりーずふーど!ぷりーずふーど!とずっと聞こえてくる。
「・・・どうしよ」
とても困った状況である。
(このまま何もありませんでしたなんて言ったら間違いなく泣きわめくに違いない。朝っぱらからそんな事はしたくないし・・・。いやほんとにどうしよどうしよ)
そんなこと考えてたら台所の入り口から、
「フュミお姉ちゃんまだですか?」
とユメの声が近づいてきた。
「ちょ、ちょっと、あとちょっとまってろ!すぐに行くから!」
そう言ってユメの接近を止めようとしたがまったく意味なんてなく
「わたしのお腹はペコペコグーグーなんですけ・・・」
台所の入り口からひょっこりと顏を覗かしたユメは言っている最中に言葉が止まった。冷蔵庫の中身を見てしまったのである。
「あ、あ・・・」
「食べる物は?」
「ま、まってろ。今なにか買ってきてやるからまってろ!」
「ぅ、ぅあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ああもう、うさっさいうさっさい!」
冷蔵庫の中身を見てしまったユメの叫びはとどまることを知らない。
「ほ、ほら何か食べる物買ってきてやるからな?な?ね?・・・ってぜんぜん聞いてないな!こいつ!」
聞く耳を持たず大きくうあうあ泣き騒ぐ。どのくらい大きいかというと寝てるお姉ちゃんたちが起きるんじゃない?っていうくらい。
「ぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ああもう、これでも飲んで黙りやがれ!くらえ!私の知らないうちに机においてあったトリカブト味のジュースを!」
フュミは白衣の内ポケットから『毒物を味わってみよう!!毒物再現シリーズ:トリカブト味』と書かれたペットボトルを出しユメの口の中に無理矢理流し込んでいく。
「いきなりなんでって、う、ぅげまっず・・・」
そう言うと静かになったと思ったら地面にバタンキューと倒れてしまった。
「え、噓。これ気絶するくらいまずいのか。・・・少し気になるな」
好奇心は猫をも殺すというがフュミはどうなんだろうか。
 ゴク
一口飲んだ。
「・・・」
バタッ
これまたユメと同じく静かにバタンキューと倒れた。どうやらフュミは猫だったようだ。
 台所は外から土を掘る音が僅かに聞こえるぐらいの静寂さに包まれていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...