三年間片思いしていた同級生に振られたら、年上の綺麗なお姉さんにロックオンされた話

羽瀬川ルフレ

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25話 次のステップ

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 時が過ぎるのはあっという間だった。季節はもう冬になっていた。ちなみに彩華さんは四季の中で自分が生まれた季節でもある冬が一番好きらしい。

 この数か月で俺と彩華さんが一緒に過ごす時間はさらに長くなり、もはや半同棲に近い状態になっていた。

 そして俺に社会人の「彼女」がいることは大学の友人がみんな知っているだけではなく、バイト先の店長、そして俺の家族にまでしっかり認識されるようになった。

 ちなみにその全員が俺たちの関係は恋人同士だと勘違いしている。そしてバイト先の店長に直接そうなのかと聞かれた時、彩華さんはそれを否定したり訂正したりしなかった。

 でも残念ながら俺たちの関係は今も「期間限定のパートナー」のままだった。そして俺は、箱根旅行の時に振られてからは彩華さんに交際を迫ること自体をやめていた。

 ……若干心が折れてしまったというか、また告白しても断られるのが目に見えているから諦めちゃってるというか。

 でもある日、家族全員で食事をしていて母から「彼女ができたのか」と質問された時は見栄を張ったのか、それとも自分の願望を言っただけなのか自分でも分からないけど「できた」と断言しちゃったんだよね。

 そして彼女はどんな人かと聞かれて「バイト先の常連客だった年上の社会人」と具体的に答えただけじゃなく、「早く彼女に相応しい男になるために自立したい、就職活動が終わったら一人暮らしか、場合によっては彼女との同棲をはじめようと思っている」と聞かれてもいないことまでペラペラ喋ってしまった。

 俺の言葉に両親だけじゃなく、普段は俺に毒舌な姉までしみじみと息子&弟の成長を喜んでくれた。そしてそこまで真剣に将来を考えている相手ならぜひ家族にも紹介してほしいと言われてしまった。

 ……で、できない。そもそも彩華さんは俺の「彼女」ではない訳なんだし。なんか家族に嘘をついているようで罪悪感が半端ない。いや「嘘をついているよう」ではなくて、普通に嘘ついてるか。


「あのさ、たぶん彩華さんが好きじゃない質問してもいい?」
「ええ……? 好きじゃないってことを知ってるんだったらしないでほしいんだけど……。でもどうしても聞きたいから今こうやって切り出したんだよね?」
「うん」
「わかった。いいよ」

 ある日のピロートーク中。未だに「正式な交際」に進展できそうにないことにまたしてもしびれを切らした俺は、勇気を出して彩華さんにある質問をぶつけてみることにした。

「今、俺がまた『彼女になって』って言ってもたぶん断るんだよね?」
「……うん、ごめん」
「いいよいいよ。なんとなくそうだろうなとは思ってた。だから大丈夫。本題はここからだから」
「今のが『質問』じゃなかったんだ?」
「違うよ。まあ、結局『質問』も似たような内容にはなっちゃうけど」
「……?」
「えっとさ、彩華さんはさ」
「うん」
「俺が何をどうしたら俺の彼女になってくれるの? こうすれば彩華さんの気持ちが変わるかもしれないとか、こんな状況になったら考えられるかもしれないとか。なんでもいいからさ。なんか方法ない?」
「……」

 次の瞬間、二人の間には気まずい沈黙が訪れた。その沈黙はしばらく続き……

「今の関係はそんなにいや?」

 答えを探していたのか、それとも言葉を選んでいたのかしばらく黙り込んでいた彩華さんがやっと発してくれた言葉は、俺への逆質問だった。

「いやじゃないよ。いやではない。彩華さんと一緒にいられるだけで十分嬉しいし、幸せだから。でもやっぱり……」
「……やっぱり?」
「俺、彩華さんのことが好きだから。心から愛してるから。一生彩華さんと一緒にいたいって本気で思ってるから。だから今の関係をこのまま続けるんじゃなくて、ちゃんと次のステップに進みたい」

 俺の口から出てきた言葉は、自分でも驚くほどストレートなものだった。きっと後から自分のセリフを思い出して恥ずかしさに悶絶しちゃうと思うけど、別にかまわない。ちゃんと言わなきゃ伝わらないこともあるし。

「そっかぁ……」

 俺の言葉を聞いた彩華さんの表情は、嬉しさと恥ずかしさ、そして困惑と申し訳なさが入り交ざった複雑なものに変わっていた。

「……ありがとうね。私とのことをそこまで真剣に考えてくれて。本当にありがとう」

 うーん、雰囲気からして次の言葉は「でも……」なのかもしれないな。

「でも……」

 ほらやっぱり。

「ちょっと今はどう答えたら良いか分からない。どんな状況になったら自分が颯太くんの気持ちを受け入れられるようになるのかも正直よく分からない」
「……そっかぁ」
「でも……」

 あれ? もう一回「でも」が入った?

「いろいろ考えてみるね。颯太くんのこととか自分自身のこと、そして今後のことも」

 考えてくれるんだ!? やった!! うん、もちろんそれでいい。今はそれだけでもいい。ちゃんと考えてくれるだけありがたい。少し前までは「考えてみる」というステップもなく、一刀両断されていた訳だからね。

 これで少しだけ前進できたはず。本当に小さい一歩かもしれないけど、それでもちゃんと前には進めたはず。

「ありがとう」

 俺は心からの感謝と愛情をこめて、彩華さんをぎゅっと抱きしめた。
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