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花音ルート
32話 失礼
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「やっぱりさ、良くないと思う」
「……何が?」
無言で海を眺めていた花音は、少しキョトンとした表情で俺に視線を向けてきた。
「一緒にいてくれるのは本当にありがたいし、嬉しいけどさ」
「……」
「やっぱり俺、忘れられないと思うんだよね、これからもずっと。だからこんな気持ちのまま花音と会い続けるのは良くないと思う。花音にあまりにも失礼だよ」
俺の言葉を聞いた花音は少し目を見開いてから、なぜか小さくため息をついた。
……そう、俺は今、花音と一緒にいつもの公園に来ていた。
大学で声をかけてくれたあの日から、花音はまた前のように俺のことを誘ってくれるようになった。
失恋した俺を気遣いながらも、俺に対する好意を隠さず「ずっとあなたのことを待ってたよ」とアピールしてくる。
花音が今でも俺のことを好きでいてくれることは嬉しかったけど、でもやはり俺の心は今も完全に彩華さんの方を向いていた。彩華さん以外の女性のことは考えることもできないくらいに。
花音もそれに気づいているのか、俺に対する好意は伝えてくるものの、それ以上は何も求めずにただ俺に寄り添ってくれていた。
俺としてはありがたい話だけど、でもやっぱりこのままでは良くないと思う。花音の気持ちを知っていて、かつその気持ちに応えられないことが明らかなのにズルズル花音と会い続けるのは。きっと彼女にとって害にしかならないし、また失礼でもあるから。
だからやはり花音とは距離を置くべきだ。それが花音のためだから。そう決めた俺は慎重に言葉を選びながら自分の考えを彼女に伝えようとしたが……
「あのさ、今の颯太の言葉の方が失礼だよ」
ため息の後、花音は凛とした表情でまっすぐ俺を見つめながらはっきりとした口調でそう告げてきた。
「私はね? 少なくとも三年間は颯太を待ち続けるつもりでいる。颯太が三年間、私のことを好きでいてくれたようにね。前もそう言ったよね?」
「……うん」
「逆にさ、三年経った後も諦められそうな気がしないんだよね。それくらい私は颯太のことが好きだし、颯太と一緒にいたいと思ってる」
「……」
「だからさ、私の気持ちを甘く見ないで。颯太が元カノのことを引きずってるくらいで簡単に諦められるような状態じゃないから、私」
「そっか……」
「そうだよ。あと、私自身のことも甘く見ないで。そう遠くない将来、必ず颯太を振り向かせるから。というか本当に失礼だよ。勝手に颯太から離れていった女に私がいつまでも負け続けると思う?」
「いや、そういう訳じゃ……」
「あ、言っとくけど、今の言葉は別に『元カノのことを忘れて』という意味じゃないからね。そんなことを颯太にお願いするつもりなんか全くないし」
「……えっ?」
「忘れてもらうんじゃなくて、忘れさせるから。だから颯太は無理して忘れようとしなくていいよ。もちろん私に変な気を遣う必要もないし」
あまりにも自信満々な花音の様子を見て、俺は「永遠に忘れられないかもしれないよ」とは言えなくなった。正直、心の中では彩華さんのことを忘れられる日は来ないと思ってるけど……。
もしかしたら俺は、少しだけ期待していたのかもしれない。花音が彼女の言葉通り、彩華さんのことを忘れさせてくれることを。花音が俺の心から彩華さんのことを消し去ってくれることを。
……他力本願だな、俺。情けない。
「……何が?」
無言で海を眺めていた花音は、少しキョトンとした表情で俺に視線を向けてきた。
「一緒にいてくれるのは本当にありがたいし、嬉しいけどさ」
「……」
「やっぱり俺、忘れられないと思うんだよね、これからもずっと。だからこんな気持ちのまま花音と会い続けるのは良くないと思う。花音にあまりにも失礼だよ」
俺の言葉を聞いた花音は少し目を見開いてから、なぜか小さくため息をついた。
……そう、俺は今、花音と一緒にいつもの公園に来ていた。
大学で声をかけてくれたあの日から、花音はまた前のように俺のことを誘ってくれるようになった。
失恋した俺を気遣いながらも、俺に対する好意を隠さず「ずっとあなたのことを待ってたよ」とアピールしてくる。
花音が今でも俺のことを好きでいてくれることは嬉しかったけど、でもやはり俺の心は今も完全に彩華さんの方を向いていた。彩華さん以外の女性のことは考えることもできないくらいに。
花音もそれに気づいているのか、俺に対する好意は伝えてくるものの、それ以上は何も求めずにただ俺に寄り添ってくれていた。
俺としてはありがたい話だけど、でもやっぱりこのままでは良くないと思う。花音の気持ちを知っていて、かつその気持ちに応えられないことが明らかなのにズルズル花音と会い続けるのは。きっと彼女にとって害にしかならないし、また失礼でもあるから。
だからやはり花音とは距離を置くべきだ。それが花音のためだから。そう決めた俺は慎重に言葉を選びながら自分の考えを彼女に伝えようとしたが……
「あのさ、今の颯太の言葉の方が失礼だよ」
ため息の後、花音は凛とした表情でまっすぐ俺を見つめながらはっきりとした口調でそう告げてきた。
「私はね? 少なくとも三年間は颯太を待ち続けるつもりでいる。颯太が三年間、私のことを好きでいてくれたようにね。前もそう言ったよね?」
「……うん」
「逆にさ、三年経った後も諦められそうな気がしないんだよね。それくらい私は颯太のことが好きだし、颯太と一緒にいたいと思ってる」
「……」
「だからさ、私の気持ちを甘く見ないで。颯太が元カノのことを引きずってるくらいで簡単に諦められるような状態じゃないから、私」
「そっか……」
「そうだよ。あと、私自身のことも甘く見ないで。そう遠くない将来、必ず颯太を振り向かせるから。というか本当に失礼だよ。勝手に颯太から離れていった女に私がいつまでも負け続けると思う?」
「いや、そういう訳じゃ……」
「あ、言っとくけど、今の言葉は別に『元カノのことを忘れて』という意味じゃないからね。そんなことを颯太にお願いするつもりなんか全くないし」
「……えっ?」
「忘れてもらうんじゃなくて、忘れさせるから。だから颯太は無理して忘れようとしなくていいよ。もちろん私に変な気を遣う必要もないし」
あまりにも自信満々な花音の様子を見て、俺は「永遠に忘れられないかもしれないよ」とは言えなくなった。正直、心の中では彩華さんのことを忘れられる日は来ないと思ってるけど……。
もしかしたら俺は、少しだけ期待していたのかもしれない。花音が彼女の言葉通り、彩華さんのことを忘れさせてくれることを。花音が俺の心から彩華さんのことを消し去ってくれることを。
……他力本願だな、俺。情けない。
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