アカシの小さな冒険

ハネクリ0831

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変わりつつある日常

お散歩の時間ですよ

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ショートヘアの女性の行動に、ポニーテールの女性は思わず目を丸くした。

「影山先輩……なんで首輪を掛けたんですか?」

驚きと戸惑いが混ざった声で問いかけると、影山はどこ吹く風とばかりに肩をすくめ、軽い口調で答えた。

「だって、手錠なんて持ってないから、仕方ないでしょ?」

「……いやいや、それにしたって首輪はおかしいでしょ! なんでそんなもの持ってるんですか?」

井森がツッコミを入れると、影山は満面の笑みを浮かべ、楽しげに言った。

「それはね……最近気になってる男性がいるの。その人、犬が好きなのよ。だから近いうちに犬を飼って、彼と自然に距離を縮めようと思ってね!」

「普通は犬を飼ってから首輪を買うものだと思うんですが……」

井森が呆れたようにため息をつくが、影山は軽く手をひらひらさせるだけ。

「ま、細かいことは気にしないの! 結果オーライよ! さ、行きましょ!」

気楽な調子で歩き出そうとした、そのとき——

車のドアが静かに開き、一人の少女がよろよろと降りてきた。

「……えっ?」

思わぬ展開に、影山と井森は顔を見合わせる。

「君、大丈夫?」

井森がすぐに駆け寄ると、少女——美幸はこくりと頷いた。

「うん、大丈夫……」

影山は腕を組み、険しい表情で考え込む。

「まさか……子供までいたなんてね。とりあえず、近くの交番に連絡しましょ」

そう言うと、携帯を取り出し、すぐに通報を始めた。

通話を続けるうちに、影山の表情が次第に険しくなっていく。そして、通話を終えると、美幸の近くにしゃがみ込み、優しい声で尋ねた。

「ねえ、お嬢ちゃん。名前は?」

美幸は少し戸惑いながらも、素直に自分の名前を口にした。

影山は静かに頷き、ぽつりと呟く。

「……やっぱりね」

「影山先輩、どうしたんですか?」

井森が不安げに尋ねると、影山は携帯を軽く振って説明した。

「さっき交番に連絡したら、ちょうど少し前にこの子のお母さんから迷子の届けが出てたのよ。私が美幸の特徴を伝えたら、交番も確認を取ってくれた」

「……じゃあ、まさか……」

井森の声に、わずかに緊張が走る。

「彼ら、この子を誘拐しようとしていたんじゃ……?」

「さあ、それは分からない。でも、どっちにしろ彼らを連行することには変わりないわ」

影山は冷静にそう言うと、すっと立ち上がり、男たちのもとへと駆け寄った。

男たちは顔面蒼白になり、じりじりと後ずさる。

「な、なんだよ……!?」

「おい、待て! ふざけんな!」

しかし、影山は一切躊躇せず、首輪についていたリードを思い切り引っ張った。

ギャアアアアア!!

男たちは悲鳴を上げ、地面に転がるように倒れ込む。

「……え?」

井森は目を瞬かせ、思わず声を上げた。

「ど、どうして倒したんですか……!?」

影山はにっこり微笑みながら、無邪気な声で言う。

「せっかくだから、お散歩の練習もしようと思って♪」

「いや、それ犬じゃなくて人間ですよ!!」

井森が慌てて止めようとするが、影山はお構いなし。

「さ、行くわよ!」

男たちをずるずると引きずって歩き出す。

「痛たたたた! やめろ!」

「ちょ、ちょっと待てえええ!!」

井森は深いため息をつき、そっと美幸の目を両手で覆った。

「……え? なんで目を塞ぐの?」

美幸がきょとんとするが、井森は必死に言葉を選びながら答える。

「……まあ、ちょっとの間だけ我慢して?」

(ダメだ、こんな光景を子供に見せるわけにはいかない……!!)

——そのころ、美幸のスカートのポケットに潜んでいたアカシは、ただただ驚愕していた。

(……すごいな影山。人目もはばからず、ここまでやるとは……)

しかし、警察の応援が到着し、状況は落ち着きを見せ始める。これで美幸も無事に母親と再会できるはずだ。

「さて、そろそろこっそり脱出しようかな……」

そう思ったその瞬間——

突風が吹いた。

「うわっ!」

アカシはバランスを崩し、美幸のポケットから滑り落ちる。そして——

井森のスニーカーに激突。

「ん? なんか足に当たった?」

井森が違和感を覚えて足元を見る。

(やばい!)

アカシは慌てて1ミリのサイズに縮んだ。

井森はしばらく足元を見つめていたが——

「……気のせいか」

それ以上気にせず、井森は歩き出した。

アカシは必死にしがみつくが、井森の足が動くたびに衝撃が走る。

(やばいやばい! このままだと飛ばされる……!!)

地面が激しく揺れ、体がふわっと浮きそうになる。風の流れも容赦なく、体が今にも吹き飛ばされそうだ。

(マズい……! ここは一旦、安全な場所に避難しないと——)

そう考えた瞬間、井森のスニーカーの隙間が目に入った。

(……仕方ない、ここしかない!!)

覚悟を決めたアカシは、靴の隙間から中へ滑り込む。

——そして、すぐに後悔することになる。

(くっ……臭い……!! なんだこの匂いは……!?)

鼻を突く刺激臭が、アカシの意識を一瞬遠のかせる。

蒸し暑い。

靴の中は湿気がこもり、まとわりつくような熱気が充満していた。まるでサウナのような息苦しさ。

匂いが強烈だ。

スニーカーの内側には、ほんのりと酸味のある汗の香りが染みついている。それだけならまだしも——

(これ……まさか、牛乳をこぼした雑巾を絞った後の匂いじゃないか!?)

ムワッとした匂いが鼻腔を襲い、思わず顔をしかめる。

(やめろ! 嗅ぐな! でも嗅がざるを得ない!!)

それだけではない。歩くたびに、靴底が大きく揺れる。

(ぐっ……! 酔う……!!)

アカシはまるで激流に流される木の葉のように、靴の内側で翻弄される。

井森の足が動くたびに、スニーカーの中の空気がわずかに入れ替わるが、それもまた微妙にぬるい。汗を含んだ湿気が動くだけで、状況が改善される気配はまるでなかった。

(最悪だ……このままじゃ俺、気を失うかもしれない……!)

必死に息を整えながら、アカシは靴の中でどうにか持ちこたえようとした。

やがて、美幸は交番で母親と無事に再会した。

「お母さん……!」

「美幸!!」

母親は涙を浮かべながら、娘を強く抱きしめる。

一方、井森の靴の中から這い出したアカシは、8センチほどのサイズになり、机の上に登った。

その様子を見つけた美幸が、ぱっと顔を輝かせる。

「……!」

アカシが手を振ると、美幸も嬉しそうに手を振り返した。

こうして、騒動の末——

美幸は無事、母親の元へ帰ることができたのだった。

こうして一部の日常が終わった。
今後を色々とあると思うが更に頑張って立ち向かう事だ。
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