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変わりつつある日常
お散歩の時間ですよ
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ショートヘアの女性の行動に、ポニーテールの女性は思わず目を丸くした。
「影山先輩……なんで首輪を掛けたんですか?」
驚きと戸惑いが混ざった声で問いかけると、影山はどこ吹く風とばかりに肩をすくめ、軽い口調で答えた。
「だって、手錠なんて持ってないから、仕方ないでしょ?」
「……いやいや、それにしたって首輪はおかしいでしょ! なんでそんなもの持ってるんですか?」
井森がツッコミを入れると、影山は満面の笑みを浮かべ、楽しげに言った。
「それはね……最近気になってる男性がいるの。その人、犬が好きなのよ。だから近いうちに犬を飼って、彼と自然に距離を縮めようと思ってね!」
「普通は犬を飼ってから首輪を買うものだと思うんですが……」
井森が呆れたようにため息をつくが、影山は軽く手をひらひらさせるだけ。
「ま、細かいことは気にしないの! 結果オーライよ! さ、行きましょ!」
気楽な調子で歩き出そうとした、そのとき——
車のドアが静かに開き、一人の少女がよろよろと降りてきた。
「……えっ?」
思わぬ展開に、影山と井森は顔を見合わせる。
「君、大丈夫?」
井森がすぐに駆け寄ると、少女——美幸はこくりと頷いた。
「うん、大丈夫……」
影山は腕を組み、険しい表情で考え込む。
「まさか……子供までいたなんてね。とりあえず、近くの交番に連絡しましょ」
そう言うと、携帯を取り出し、すぐに通報を始めた。
通話を続けるうちに、影山の表情が次第に険しくなっていく。そして、通話を終えると、美幸の近くにしゃがみ込み、優しい声で尋ねた。
「ねえ、お嬢ちゃん。名前は?」
美幸は少し戸惑いながらも、素直に自分の名前を口にした。
影山は静かに頷き、ぽつりと呟く。
「……やっぱりね」
「影山先輩、どうしたんですか?」
井森が不安げに尋ねると、影山は携帯を軽く振って説明した。
「さっき交番に連絡したら、ちょうど少し前にこの子のお母さんから迷子の届けが出てたのよ。私が美幸の特徴を伝えたら、交番も確認を取ってくれた」
「……じゃあ、まさか……」
井森の声に、わずかに緊張が走る。
「彼ら、この子を誘拐しようとしていたんじゃ……?」
「さあ、それは分からない。でも、どっちにしろ彼らを連行することには変わりないわ」
影山は冷静にそう言うと、すっと立ち上がり、男たちのもとへと駆け寄った。
男たちは顔面蒼白になり、じりじりと後ずさる。
「な、なんだよ……!?」
「おい、待て! ふざけんな!」
しかし、影山は一切躊躇せず、首輪についていたリードを思い切り引っ張った。
ギャアアアアア!!
男たちは悲鳴を上げ、地面に転がるように倒れ込む。
「……え?」
井森は目を瞬かせ、思わず声を上げた。
「ど、どうして倒したんですか……!?」
影山はにっこり微笑みながら、無邪気な声で言う。
「せっかくだから、お散歩の練習もしようと思って♪」
「いや、それ犬じゃなくて人間ですよ!!」
井森が慌てて止めようとするが、影山はお構いなし。
「さ、行くわよ!」
男たちをずるずると引きずって歩き出す。
「痛たたたた! やめろ!」
「ちょ、ちょっと待てえええ!!」
井森は深いため息をつき、そっと美幸の目を両手で覆った。
「……え? なんで目を塞ぐの?」
美幸がきょとんとするが、井森は必死に言葉を選びながら答える。
「……まあ、ちょっとの間だけ我慢して?」
(ダメだ、こんな光景を子供に見せるわけにはいかない……!!)
——そのころ、美幸のスカートのポケットに潜んでいたアカシは、ただただ驚愕していた。
(……すごいな影山。人目もはばからず、ここまでやるとは……)
しかし、警察の応援が到着し、状況は落ち着きを見せ始める。これで美幸も無事に母親と再会できるはずだ。
「さて、そろそろこっそり脱出しようかな……」
そう思ったその瞬間——
突風が吹いた。
「うわっ!」
アカシはバランスを崩し、美幸のポケットから滑り落ちる。そして——
井森のスニーカーに激突。
「ん? なんか足に当たった?」
井森が違和感を覚えて足元を見る。
(やばい!)
アカシは慌てて1ミリのサイズに縮んだ。
井森はしばらく足元を見つめていたが——
「……気のせいか」
それ以上気にせず、井森は歩き出した。
アカシは必死にしがみつくが、井森の足が動くたびに衝撃が走る。
(やばいやばい! このままだと飛ばされる……!!)
地面が激しく揺れ、体がふわっと浮きそうになる。風の流れも容赦なく、体が今にも吹き飛ばされそうだ。
(マズい……! ここは一旦、安全な場所に避難しないと——)
そう考えた瞬間、井森のスニーカーの隙間が目に入った。
(……仕方ない、ここしかない!!)
覚悟を決めたアカシは、靴の隙間から中へ滑り込む。
——そして、すぐに後悔することになる。
(くっ……臭い……!! なんだこの匂いは……!?)
鼻を突く刺激臭が、アカシの意識を一瞬遠のかせる。
蒸し暑い。
靴の中は湿気がこもり、まとわりつくような熱気が充満していた。まるでサウナのような息苦しさ。
匂いが強烈だ。
スニーカーの内側には、ほんのりと酸味のある汗の香りが染みついている。それだけならまだしも——
(これ……まさか、牛乳をこぼした雑巾を絞った後の匂いじゃないか!?)
ムワッとした匂いが鼻腔を襲い、思わず顔をしかめる。
(やめろ! 嗅ぐな! でも嗅がざるを得ない!!)
それだけではない。歩くたびに、靴底が大きく揺れる。
(ぐっ……! 酔う……!!)
アカシはまるで激流に流される木の葉のように、靴の内側で翻弄される。
井森の足が動くたびに、スニーカーの中の空気がわずかに入れ替わるが、それもまた微妙にぬるい。汗を含んだ湿気が動くだけで、状況が改善される気配はまるでなかった。
(最悪だ……このままじゃ俺、気を失うかもしれない……!)
必死に息を整えながら、アカシは靴の中でどうにか持ちこたえようとした。
やがて、美幸は交番で母親と無事に再会した。
「お母さん……!」
「美幸!!」
母親は涙を浮かべながら、娘を強く抱きしめる。
一方、井森の靴の中から這い出したアカシは、8センチほどのサイズになり、机の上に登った。
その様子を見つけた美幸が、ぱっと顔を輝かせる。
「……!」
アカシが手を振ると、美幸も嬉しそうに手を振り返した。
こうして、騒動の末——
美幸は無事、母親の元へ帰ることができたのだった。
こうして一部の日常が終わった。
今後を色々とあると思うが更に頑張って立ち向かう事だ。
「影山先輩……なんで首輪を掛けたんですか?」
驚きと戸惑いが混ざった声で問いかけると、影山はどこ吹く風とばかりに肩をすくめ、軽い口調で答えた。
「だって、手錠なんて持ってないから、仕方ないでしょ?」
「……いやいや、それにしたって首輪はおかしいでしょ! なんでそんなもの持ってるんですか?」
井森がツッコミを入れると、影山は満面の笑みを浮かべ、楽しげに言った。
「それはね……最近気になってる男性がいるの。その人、犬が好きなのよ。だから近いうちに犬を飼って、彼と自然に距離を縮めようと思ってね!」
「普通は犬を飼ってから首輪を買うものだと思うんですが……」
井森が呆れたようにため息をつくが、影山は軽く手をひらひらさせるだけ。
「ま、細かいことは気にしないの! 結果オーライよ! さ、行きましょ!」
気楽な調子で歩き出そうとした、そのとき——
車のドアが静かに開き、一人の少女がよろよろと降りてきた。
「……えっ?」
思わぬ展開に、影山と井森は顔を見合わせる。
「君、大丈夫?」
井森がすぐに駆け寄ると、少女——美幸はこくりと頷いた。
「うん、大丈夫……」
影山は腕を組み、険しい表情で考え込む。
「まさか……子供までいたなんてね。とりあえず、近くの交番に連絡しましょ」
そう言うと、携帯を取り出し、すぐに通報を始めた。
通話を続けるうちに、影山の表情が次第に険しくなっていく。そして、通話を終えると、美幸の近くにしゃがみ込み、優しい声で尋ねた。
「ねえ、お嬢ちゃん。名前は?」
美幸は少し戸惑いながらも、素直に自分の名前を口にした。
影山は静かに頷き、ぽつりと呟く。
「……やっぱりね」
「影山先輩、どうしたんですか?」
井森が不安げに尋ねると、影山は携帯を軽く振って説明した。
「さっき交番に連絡したら、ちょうど少し前にこの子のお母さんから迷子の届けが出てたのよ。私が美幸の特徴を伝えたら、交番も確認を取ってくれた」
「……じゃあ、まさか……」
井森の声に、わずかに緊張が走る。
「彼ら、この子を誘拐しようとしていたんじゃ……?」
「さあ、それは分からない。でも、どっちにしろ彼らを連行することには変わりないわ」
影山は冷静にそう言うと、すっと立ち上がり、男たちのもとへと駆け寄った。
男たちは顔面蒼白になり、じりじりと後ずさる。
「な、なんだよ……!?」
「おい、待て! ふざけんな!」
しかし、影山は一切躊躇せず、首輪についていたリードを思い切り引っ張った。
ギャアアアアア!!
男たちは悲鳴を上げ、地面に転がるように倒れ込む。
「……え?」
井森は目を瞬かせ、思わず声を上げた。
「ど、どうして倒したんですか……!?」
影山はにっこり微笑みながら、無邪気な声で言う。
「せっかくだから、お散歩の練習もしようと思って♪」
「いや、それ犬じゃなくて人間ですよ!!」
井森が慌てて止めようとするが、影山はお構いなし。
「さ、行くわよ!」
男たちをずるずると引きずって歩き出す。
「痛たたたた! やめろ!」
「ちょ、ちょっと待てえええ!!」
井森は深いため息をつき、そっと美幸の目を両手で覆った。
「……え? なんで目を塞ぐの?」
美幸がきょとんとするが、井森は必死に言葉を選びながら答える。
「……まあ、ちょっとの間だけ我慢して?」
(ダメだ、こんな光景を子供に見せるわけにはいかない……!!)
——そのころ、美幸のスカートのポケットに潜んでいたアカシは、ただただ驚愕していた。
(……すごいな影山。人目もはばからず、ここまでやるとは……)
しかし、警察の応援が到着し、状況は落ち着きを見せ始める。これで美幸も無事に母親と再会できるはずだ。
「さて、そろそろこっそり脱出しようかな……」
そう思ったその瞬間——
突風が吹いた。
「うわっ!」
アカシはバランスを崩し、美幸のポケットから滑り落ちる。そして——
井森のスニーカーに激突。
「ん? なんか足に当たった?」
井森が違和感を覚えて足元を見る。
(やばい!)
アカシは慌てて1ミリのサイズに縮んだ。
井森はしばらく足元を見つめていたが——
「……気のせいか」
それ以上気にせず、井森は歩き出した。
アカシは必死にしがみつくが、井森の足が動くたびに衝撃が走る。
(やばいやばい! このままだと飛ばされる……!!)
地面が激しく揺れ、体がふわっと浮きそうになる。風の流れも容赦なく、体が今にも吹き飛ばされそうだ。
(マズい……! ここは一旦、安全な場所に避難しないと——)
そう考えた瞬間、井森のスニーカーの隙間が目に入った。
(……仕方ない、ここしかない!!)
覚悟を決めたアカシは、靴の隙間から中へ滑り込む。
——そして、すぐに後悔することになる。
(くっ……臭い……!! なんだこの匂いは……!?)
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蒸し暑い。
靴の中は湿気がこもり、まとわりつくような熱気が充満していた。まるでサウナのような息苦しさ。
匂いが強烈だ。
スニーカーの内側には、ほんのりと酸味のある汗の香りが染みついている。それだけならまだしも——
(これ……まさか、牛乳をこぼした雑巾を絞った後の匂いじゃないか!?)
ムワッとした匂いが鼻腔を襲い、思わず顔をしかめる。
(やめろ! 嗅ぐな! でも嗅がざるを得ない!!)
それだけではない。歩くたびに、靴底が大きく揺れる。
(ぐっ……! 酔う……!!)
アカシはまるで激流に流される木の葉のように、靴の内側で翻弄される。
井森の足が動くたびに、スニーカーの中の空気がわずかに入れ替わるが、それもまた微妙にぬるい。汗を含んだ湿気が動くだけで、状況が改善される気配はまるでなかった。
(最悪だ……このままじゃ俺、気を失うかもしれない……!)
必死に息を整えながら、アカシは靴の中でどうにか持ちこたえようとした。
やがて、美幸は交番で母親と無事に再会した。
「お母さん……!」
「美幸!!」
母親は涙を浮かべながら、娘を強く抱きしめる。
一方、井森の靴の中から這い出したアカシは、8センチほどのサイズになり、机の上に登った。
その様子を見つけた美幸が、ぱっと顔を輝かせる。
「……!」
アカシが手を振ると、美幸も嬉しそうに手を振り返した。
こうして、騒動の末——
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