閨から始まる拗らせ公爵の初恋

ボンボンP

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花束

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私は自室で朝食を取りながら考えた。
結局、夫は私の言いたいことを理解できただろうか? 

閨事の一件に関しては前世の私が強く出た気がするのだ。
私が昨日しでかしたことは夫のプライドを砕いたことでしょう。

そのせいか、夫は朝食前から出て帰りも遅くなるので夫婦の寝室には行かなくていいそうだ、それも1週間。
これは…昨日の事が原因で避けられてるわね…。

「奥様。昨日あれからいったい何をしたのですか?もしやとんでもないことをして、いえ既に拘束すること自体とんでもないことでしたね…。」
「何をしたかは言えないけど、旦那様が私を避けたくなる気持ちは分かるわ。」

ボニーはどうしようと頭を抱えて座り込んでしまった。

今更、無かった事には出来ないわ。
このまま離婚に向かって進むのかしらね。
いくら若くても離婚歴があると、私に良い縁談が来るとも思えないわ。

向こうの出方を見るしかない。

今日からは図書室にこもってジュビエ侯爵家について勉強するつもりなのだ。
閨事で役に立たないならそれ以外の仕事で侯爵夫人として頑張るしかない!

そう意気込んでいたのに仕立て屋がやって来てかなりの時間を費やすことになってしまう。



◇ ◇ ◇

俺は王宮の執務室で部下に案件を振りつつ仕事をこなす。

今、取り掛かっているのは皇太子妃を迎える為の警備についてだった。
色んな部署に伝令を出し、空いた時間で王太子と打ち合わせをし、書類にサインをする。

俺は1週間で出来る限りの仕事を終わらせて、数日間の休暇を取るつもりなのだ。
そういえばこの数カ月は王宮に来ない日は無かった。

普段から無表情な俺はさらに指示を出す声もきつくなり部下が怯えている。
執務室の中はギスギスした空気が漂っている。


軽いノックの後に返答も待たず王太子が入ってきた。
「どうされましたか?」
「アルベール、君結婚したの?さっき教えてくれたら良かったのに。」
「ええ。結婚しました。」
「私の事で忙しいのは分かってるけど、新婚なんだからできるだけ妻の傍にいてあげるほうがいいよ。奥方も寂しいだろうから早く帰宅したほうがいいよ。宰相は仕事のしすぎだよ。」
「…。」

「結婚のお祝いをしたいんだ。奥方は何をあげれば喜ぶかな?」
「…。わかりませんので聞いておきます。」
「…。うん分かったら教えてね。今度は上手く行くように祈ってるよ。取り敢えず公爵家に花でも贈っておくよ。」
「ありがとうございます。」

王太子が出ていくと同時に思った、俺のほうが先に花を贈ろうと。

婚約中、会わなくても花ぐらいは贈れたはずなのにしなかった。
いいや何も贈らなかった、手紙の一つもだ。

そう思うと居ても立ってもいられなくなり「出てくる。」といい城下の店に赴いた。



◇ ◇ ◇

夕食前にピンクの薔薇の花束が届けられた。
カードを見るとなんと、夫からだった!

「まあ、きれいですねえ!あの旦那様が花束を贈られるとは。」
「ピンクのバラには良い意味の花言葉がありますよ。上品、しとやか、感銘、神の祝福、夢叶うです。素敵ですわ~。」
マリーとメヌエットはきゃあきゃあ言いながら薔薇を飾ってくれた。

…昨日のあれで上品とか、しとやか何て、思うわけないでしょうが。
夫は多分、花言葉何て知らないと思うわ。

これはいい方に転がったということかしら。
カードには休暇を取るために詰めて仕事をするので会えなくて申し訳ないと書いてあった。
大きな進歩かもしれないわ。


私はカードに花のお礼を書くと薔薇を1輪取ってメヌエットに夫の部屋に置いてくるように渡した。


◇ ◇ ◇

日付が変わる頃、帰宅した。
家令に今日の報告を聞く。

「今日の奥様は午前中はドレスのオーダーをされていましたが、昼食の後は図書室におられました。その後は庭を散策され御夕食を召し上がり自室で過ごされました。そうそう、旦那様からのお花を喜んでおられたとメイドから報告されました。」

「そうか…。彼女が図書室に行っても女性が好きそうな読み物は無かっただろう。明日にでも書店に連絡して人気の本を入れておいてくれ。あと、何か暇潰しになりそうなものと趣味の物なども聞いて揃えてくれ。」

家令はじっと俺を見つめて言った。
「奥様の事を気に入られましたか?」
「まだわからない。だが俺の対応は紳士と言えるものでは無かったからな。今からでも礼節を尽くしたいと思っている。」

「安心いたしました。奥様は図書室にてジュビエ公爵家の領地特産品や産業の事など勉強しておられたようす。お若いのによくできたお方のようです。」

俺はセシルの結婚に対する真摯な思いを改めて感じた。

「そう言えば、ハロルド。結婚式でのアロウイ家への対応がよくなかったようだな。伯爵家に対して明らかにぞんざいな態度だったと聞いた。」
「…。申し訳御座いません。そのようなつもりは全くなかったのですが。」

「でも、態度に出ていたそうだぞ。今後はジュビエ公爵夫人として、夫人の実家として丁重に扱ってくれよ。俺も今後はそうする。」
「はい。肝に命じておきます。」

ハロルドが下がるとテーブルに置かれたトレーに入った手紙類を手に取る。
ふと、コンソールデスクに目をやると1輪の薔薇が飾ってあった。
今日、贈ったセシルの髪の色に似た淡いピンクの薔薇だ。
近寄るとお礼の書かれたカードがあった。

単純に嬉しかった。

明日も贈ればまたカードをくれるだろうか…。









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