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公爵様たちが来たあと私は少し眠っていたようだ。
目が覚めるともう夕食の時間だった。
夕食も軽めの物でこれが食べれれば徐々に、普通の食事に戻していくらしい。
不思議なもので昨日までとは違い空腹を感じることが出来た。
「お嬢様、どうされますか?客室のご用意が出来ておりますので今からそちらへ移動されますか?」
「今日はこのままでいいわ。明日の午前中に移ります。」
「かしこまりました。エリック様がこれをお持ちになられておりました。お嬢様の良い時間に伺うので何時でも呼んでほしいとのことです。」
ベッド横のサイドテーブルの上に薄紫の大輪のバラが数輪飾られていた。
このバラは公爵家の庭だけに咲く特別なバラだと聞いたことがある。
王家に慶び事があると必ず献上するのだと。
こうして切り花で見るのは初めてだわ。
「では、エリック様に来ていただいて。お食事中でしたらその後に。」
「はい。お伝えしてまいりますので、失礼いたします。」
侍女は今までキャサリン様と親しみを込めて呼んでくれていたのに、公爵家に通い始めた頃のようにお嬢様呼びに戻ってしまった。
何やら…一線を引かれたような。
未来の公爵夫人ではなく、公爵家のお客様という立場になったのね。
30分もしないうちにエリック様がやって来た。
エリック様は昨日とは全く様子が変わっていた。
髪は洗いざらしのようで整っておらず、目の充血は酷く声もしゃがれていた。
「まずは謝罪をさせて欲しい。本当に私の浅はかな考えで君を…キャサリン嬢に不快な思いをさせてしまい申し訳なかった。倒れてしまうほどキャサリン嬢に無理をさせていたとは考えもせずに…。本当に申し訳ない。」
エリック様はそう言うとベッドのヘッドボードにもたれて身体を起こしている私の側に跪いて頭を下げた。
ご自分のことを私と言うなんて…小公爵としての正式な謝罪をされているのね。
「私は、君と初めて会った時から伴侶にするならばキャサリン嬢しかいないと思っていた。でも、私の気持ちが一方的だと気がついていた。それでもここ数年は少し君との距離が近くなった気がしていたし結婚の話も出ていた。だからこそ3年も領地に行っていてはまた君との距離が出来ると不安だった。君に一緒に行ってほしいと言いたかったが急な話で断わられるだろうと思うと…。それで…。」
「私を騙して強行したのですね?」
「そうだ。その結果…私は君を失ってしまった。3年間を領地で過ごすことさえ頑張れば君と問題無く結婚出来ただろうに、その我慢も出来なかった情けない男だ。」
「どうしてこの時期に、半年後に結婚をという話が出ていましたのに、領地に行くことになったのですか?」
「領地で代官が大幅に交代することになって、良い機会だから私を直接支える者たちと一緒に仕事をしてみたらどうかと。私も座学だけだったから実際領地の事はよく分かっていない。それと実は父上の持病が悪化していて王都の方がその病に詳しい医師がいるんだ。その治療の目安が3年ぐらいで、もしかしたらそれ以上になるかもしれないが。」
エリック様はゆっくりと立ち上がった。
「私は嫁いでくれるキャサリン嬢のために私がやるべき事を君に押し付け、君やご実家が楽しみにしていただろう事柄を奪った挙句に、君の知らない人にそれをさせてしまった。この夫人部屋はいくらでも後から変える事ができるがドレスはそうはいかない。」
確かにそうだ。
あの酷いドレスを着て人前に出た事はすぐに許せるものではない。
目が覚めるともう夕食の時間だった。
夕食も軽めの物でこれが食べれれば徐々に、普通の食事に戻していくらしい。
不思議なもので昨日までとは違い空腹を感じることが出来た。
「お嬢様、どうされますか?客室のご用意が出来ておりますので今からそちらへ移動されますか?」
「今日はこのままでいいわ。明日の午前中に移ります。」
「かしこまりました。エリック様がこれをお持ちになられておりました。お嬢様の良い時間に伺うので何時でも呼んでほしいとのことです。」
ベッド横のサイドテーブルの上に薄紫の大輪のバラが数輪飾られていた。
このバラは公爵家の庭だけに咲く特別なバラだと聞いたことがある。
王家に慶び事があると必ず献上するのだと。
こうして切り花で見るのは初めてだわ。
「では、エリック様に来ていただいて。お食事中でしたらその後に。」
「はい。お伝えしてまいりますので、失礼いたします。」
侍女は今までキャサリン様と親しみを込めて呼んでくれていたのに、公爵家に通い始めた頃のようにお嬢様呼びに戻ってしまった。
何やら…一線を引かれたような。
未来の公爵夫人ではなく、公爵家のお客様という立場になったのね。
30分もしないうちにエリック様がやって来た。
エリック様は昨日とは全く様子が変わっていた。
髪は洗いざらしのようで整っておらず、目の充血は酷く声もしゃがれていた。
「まずは謝罪をさせて欲しい。本当に私の浅はかな考えで君を…キャサリン嬢に不快な思いをさせてしまい申し訳なかった。倒れてしまうほどキャサリン嬢に無理をさせていたとは考えもせずに…。本当に申し訳ない。」
エリック様はそう言うとベッドのヘッドボードにもたれて身体を起こしている私の側に跪いて頭を下げた。
ご自分のことを私と言うなんて…小公爵としての正式な謝罪をされているのね。
「私は、君と初めて会った時から伴侶にするならばキャサリン嬢しかいないと思っていた。でも、私の気持ちが一方的だと気がついていた。それでもここ数年は少し君との距離が近くなった気がしていたし結婚の話も出ていた。だからこそ3年も領地に行っていてはまた君との距離が出来ると不安だった。君に一緒に行ってほしいと言いたかったが急な話で断わられるだろうと思うと…。それで…。」
「私を騙して強行したのですね?」
「そうだ。その結果…私は君を失ってしまった。3年間を領地で過ごすことさえ頑張れば君と問題無く結婚出来ただろうに、その我慢も出来なかった情けない男だ。」
「どうしてこの時期に、半年後に結婚をという話が出ていましたのに、領地に行くことになったのですか?」
「領地で代官が大幅に交代することになって、良い機会だから私を直接支える者たちと一緒に仕事をしてみたらどうかと。私も座学だけだったから実際領地の事はよく分かっていない。それと実は父上の持病が悪化していて王都の方がその病に詳しい医師がいるんだ。その治療の目安が3年ぐらいで、もしかしたらそれ以上になるかもしれないが。」
エリック様はゆっくりと立ち上がった。
「私は嫁いでくれるキャサリン嬢のために私がやるべき事を君に押し付け、君やご実家が楽しみにしていただろう事柄を奪った挙句に、君の知らない人にそれをさせてしまった。この夫人部屋はいくらでも後から変える事ができるがドレスはそうはいかない。」
確かにそうだ。
あの酷いドレスを着て人前に出た事はすぐに許せるものではない。
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