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後日談 断罪のその後

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 断罪から少しした後、王太子である俺は、貴族用の牢に拘留されている、ロベリアのところへ向かっていた。

「久しぶりだね。1ヶ月ぶりかな?」

「リゲル様…」

 俺が呼びかけると、呟くような声が聞こえてきた。

「君の罪状について話に来たんだ。」

「あら、わたくしは何もしていませんわ。」

 俺の言葉に対してそう弁明した。

「そうだね。まずは、カルミラとサフランの罪について話そうか。彼女達は、嫌がらせの実行犯だった。中にはリリアを階段から突き落としたり、リコリスを湖に突き落としたりもしたようだね。ただ話を聞いていると、君の命令だと言うことがわかった。2人は家格が低いから断れなかったそうだ。」

 もっともそれを盾にしていただけで、嫌がらせ自体は進んでやっていただろうと思う。彼女達については、命令に関係なくやったことは事実なため罪であることに変わりはない。

「あら、わたくしがそんなこと言った覚えはないですわ。今回の件、やったのは全てカルミラとサフランでしょう?わたくしは無関係ですもの。」

ロベリアはそう言いながら、無罪を主張する。けれど…

「確かに嫌がらせも突き落としも、やったのは彼女達。裏に君がいたとしても君の罪にはならない。けれど、これが見つかってね。」

 俺はそう言いながら香水の入った瓶を2つ取り出した。

「それが…どうしましたの?」

 一瞬だけ目が泳いだが、すぐに無表情に戻る。

「単体だと何にもならないが…2つ掛け合わせた状態で吸い込むと、思い込みが激しくなったりするそうだね。リコリスが花に詳しくてね。おかげで香水の仕掛けだと気づけたよ。」

「っ!わたくしは、そんなこと知りませんわ。たまたまですのよ!」

 言い訳をするロベリアの前に、もう一つの瓶を出した。

「これは、君の部屋にあった薬だね。効果は特定の香りにある毒性を無毒化するもの。君が毒について知っていた証拠だ。俺に対して危害を加えてくれたおかげで、リコリスやリリアを傷つけた分の償いを、させることができる。覚悟しておけ。」

 それだけ伝えると俺は、外に出た。すると、カストルが待っていた。

「来ていたのか…」

「ああ、首尾はどうだった?」

「認めたよ…これで3人とも修道院送りになるかな。それぞれの家に対しては、注意止まりだけど社交では辛いだろうね。」

「それは良かった。」

 カストルはそう言いつつも浮かない顔をしていた。

「良かったと言う表情には見えないぞ。」

 俺は肩をすくめる。

「薬の影響があったとはいえ、妹を傷つけたことには変わりないからな。…それに、学園に入るまでは、全くの素の状態なわけだ。」

 カストルは自重するよう言った。

「俺も婚約者として、リコリス自身を見ることができなかった。だからこそ、これからは表面上だけでなく内にあるものを見ていけたらと思う。俺とお前は義兄弟になるわけだ。これからもよろしく頼む。」

「リゲルが義弟か。不思議な感じがする… そうだな、2人でこれから先のことを大事に守っていこう。」

 2人で拳をつけ合わせて、新しい約束をするのだった。



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