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第13章 2度目の学園生活
25 レジーナの役目
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夕食を終えた後は各自で好きなように過ごすことになった。テントの内訳はアイリーンとティアとマリアで1つ、アスカルテとレジーナで1つの計2つだ。
アスカルテとレジーナが休むテントでは2人並んで横になっていた。
2人は野営や実戦に慣れているため疲れはそれほど感じていない。普段寝ている時間にもなっていないため、横になりながら話していた。
「とりあえず何事もなく終わりましたね。最近の事を考えると少し安心しました」
「ええ本当に。流石にこの二月で9回は多すぎると思うわよ?」
9回。
それはアスカルテが王立学園に入学してから襲われた回数だ。内訳としては王都で4回、学園都市で1回、街の外で4回となっていて学園都市の時はコルネリアスも一緒にいる時だった。
「……領地にいるときから年に数回は狙われていましたが、ここまで続くのは初めてですよ」
「ここ数年は殿下たちも刺客が向けられることが何度かあったみたいだけれど……いくら聖女と呼ばれる貴女でも異常だわ。誰かの恨みでも買っているのでなくて?」
「まあ、不正にした貴族を何人か摘発してますし国王派以外の派閥からは疎まれているとは思いますが……」
ティアと出会ったウルケール男爵をはじめコルネリアスと共に摘発した貴族は両手で数えるくらいある。王国全体から見れば少ない数と言ってもやましいことがある貴族にとっては敵と見なされていてもおかしくはないだろうと考えていた。
「お父様もぼやいていたわ。陛下の命で殿下たちを守るために手を打っているけど難しいって。コルネリアス様は貴女と共にお忍びで貴族の調査するうえに護衛も付けないから」
「仕方がないでしょう。わたくしやコルネリアスが身分を明かせば貴族たちは取り入ろうとしてきます。仮初の作られた光景なんて意味がないのですから」
「そうですわね。そしてわたくしたちの正体を知っていて何か行動を起こすということは、余程自信があるか知られても問題ないか……何にせよ大きな理由があるはずよ。今回の演習はいつも以上に警戒が必要だわ」
「……正直信じられないですけどね。王国軍や騎士団、調査団。その全てに敵が入り込んでいる可能性があるなんて」
今回の演習で野営の守りをいつも以上に固めているには魔物以外から襲われる可能性を考慮してのことだ。魔物であればどんなに頭が良くても罠を気付かれないように解除することはありえない。だが、人間が相手であればバレないように細工をすることもできるわけで相手の実力次第では寝込みを襲われることもあり得る。
「お父様も全容は掴んでいないらしいわ。相手も相当慎重みたいで尻尾すら掴めていないみたいだけれど可能性は高いみたいよ」
「どちらにせよ無関係な人が巻き込まれないように……せめて彼女たちだけでも守らなければいけませんね」
「貴族として当たり前のことよ。言われるまでのない」
演習に参加しているAクラスのメンバーで狙われる可能性が高いのはコルネリアスとアスカルテの2人になるが、他の高位貴族の子息も可能性がゼロではない。なによりも狙われる理由が一番存在しないロレアルやマリア、ティアのことは貴族として守らなければならないと2人は考えていた。
「話は変わりますけれど……貴方から見てティアはどうでしたか?」
「……どういう意味ですの?」
唐突に振られた話題にレジーナは思わず目を丸くした。
「言葉通りの意味です。陛下から頼まれているのでしょう?」
だが、続く言葉はレジーナが想定していないものだった。咄嗟の返事もできずに思わず固まってしまうとアスカルテは「当たっているみたいですね」と笑みを浮かべる。
「知っていたの?」
「お父様から話を聞いたわけではないですよ。ただコルネリアスが気に入っている相手を調べるとしたら貴方が適任でしょう」
王の影は文字通り王立学園にいる間もコルネリアスの事を影から護衛している。このことは学園長や公爵家くらいしか知らないため調査対象に接触することはない。
「ティアはそうね……敵ではないと思っているわ。どこか掴めないところがあるけれどね」
「その気持ちは分かりますよ。知識や剣術、魔術は高位の貴族に匹敵してもおかしくはないですからね。実戦経験も豊富なようですしエスペルト王国を訪れる前は色々とあったとも聞いています」
ティアからはコルネリアスやアスカルテと出会う前について幼い頃から囚われていたとしか聞いていない。だが細かい話を聞かなくても人身売買で売られてから長年囚われるということがどれだけ大変だったかは想像すらできないだろうとアスカルテは考えていた。
「だからなのかしら?あのコルネリアス様があの子に興味を抱くのは」
レジーナの知る限りコルネリアスの友好関係はそれほど広くない。王太子として貴族や他国の重鎮、有力な商会との付き合いは活発ではあるが、どちらかと言えば利益関係に近い。
少なくとも血縁関係が家族や親戚以外で親しくしているのはレジーナのように幼い頃から付き合いのある相手だけだ。
「わたくしもコルネリアスがティアのことをどう思っているのかは分からないけれど……2人の友人として良い関係を築くことができればとは思います」
アスカルテとレジーナが休むテントでは2人並んで横になっていた。
2人は野営や実戦に慣れているため疲れはそれほど感じていない。普段寝ている時間にもなっていないため、横になりながら話していた。
「とりあえず何事もなく終わりましたね。最近の事を考えると少し安心しました」
「ええ本当に。流石にこの二月で9回は多すぎると思うわよ?」
9回。
それはアスカルテが王立学園に入学してから襲われた回数だ。内訳としては王都で4回、学園都市で1回、街の外で4回となっていて学園都市の時はコルネリアスも一緒にいる時だった。
「……領地にいるときから年に数回は狙われていましたが、ここまで続くのは初めてですよ」
「ここ数年は殿下たちも刺客が向けられることが何度かあったみたいだけれど……いくら聖女と呼ばれる貴女でも異常だわ。誰かの恨みでも買っているのでなくて?」
「まあ、不正にした貴族を何人か摘発してますし国王派以外の派閥からは疎まれているとは思いますが……」
ティアと出会ったウルケール男爵をはじめコルネリアスと共に摘発した貴族は両手で数えるくらいある。王国全体から見れば少ない数と言ってもやましいことがある貴族にとっては敵と見なされていてもおかしくはないだろうと考えていた。
「お父様もぼやいていたわ。陛下の命で殿下たちを守るために手を打っているけど難しいって。コルネリアス様は貴女と共にお忍びで貴族の調査するうえに護衛も付けないから」
「仕方がないでしょう。わたくしやコルネリアスが身分を明かせば貴族たちは取り入ろうとしてきます。仮初の作られた光景なんて意味がないのですから」
「そうですわね。そしてわたくしたちの正体を知っていて何か行動を起こすということは、余程自信があるか知られても問題ないか……何にせよ大きな理由があるはずよ。今回の演習はいつも以上に警戒が必要だわ」
「……正直信じられないですけどね。王国軍や騎士団、調査団。その全てに敵が入り込んでいる可能性があるなんて」
今回の演習で野営の守りをいつも以上に固めているには魔物以外から襲われる可能性を考慮してのことだ。魔物であればどんなに頭が良くても罠を気付かれないように解除することはありえない。だが、人間が相手であればバレないように細工をすることもできるわけで相手の実力次第では寝込みを襲われることもあり得る。
「お父様も全容は掴んでいないらしいわ。相手も相当慎重みたいで尻尾すら掴めていないみたいだけれど可能性は高いみたいよ」
「どちらにせよ無関係な人が巻き込まれないように……せめて彼女たちだけでも守らなければいけませんね」
「貴族として当たり前のことよ。言われるまでのない」
演習に参加しているAクラスのメンバーで狙われる可能性が高いのはコルネリアスとアスカルテの2人になるが、他の高位貴族の子息も可能性がゼロではない。なによりも狙われる理由が一番存在しないロレアルやマリア、ティアのことは貴族として守らなければならないと2人は考えていた。
「話は変わりますけれど……貴方から見てティアはどうでしたか?」
「……どういう意味ですの?」
唐突に振られた話題にレジーナは思わず目を丸くした。
「言葉通りの意味です。陛下から頼まれているのでしょう?」
だが、続く言葉はレジーナが想定していないものだった。咄嗟の返事もできずに思わず固まってしまうとアスカルテは「当たっているみたいですね」と笑みを浮かべる。
「知っていたの?」
「お父様から話を聞いたわけではないですよ。ただコルネリアスが気に入っている相手を調べるとしたら貴方が適任でしょう」
王の影は文字通り王立学園にいる間もコルネリアスの事を影から護衛している。このことは学園長や公爵家くらいしか知らないため調査対象に接触することはない。
「ティアはそうね……敵ではないと思っているわ。どこか掴めないところがあるけれどね」
「その気持ちは分かりますよ。知識や剣術、魔術は高位の貴族に匹敵してもおかしくはないですからね。実戦経験も豊富なようですしエスペルト王国を訪れる前は色々とあったとも聞いています」
ティアからはコルネリアスやアスカルテと出会う前について幼い頃から囚われていたとしか聞いていない。だが細かい話を聞かなくても人身売買で売られてから長年囚われるということがどれだけ大変だったかは想像すらできないだろうとアスカルテは考えていた。
「だからなのかしら?あのコルネリアス様があの子に興味を抱くのは」
レジーナの知る限りコルネリアスの友好関係はそれほど広くない。王太子として貴族や他国の重鎮、有力な商会との付き合いは活発ではあるが、どちらかと言えば利益関係に近い。
少なくとも血縁関係が家族や親戚以外で親しくしているのはレジーナのように幼い頃から付き合いのある相手だけだ。
「わたくしもコルネリアスがティアのことをどう思っているのかは分からないけれど……2人の友人として良い関係を築くことができればとは思います」
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