練習

鵜海 喨

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 大樹は笑った。
 ここは平原。野原が広がり、流体は言葉を交わす。
 風は、大樹を靡かせ吹き抜けていく。
 水は、大樹を巡り姿を変え消えていく。
 このような美しい世界はここ以外にあるのだろうか。いや無い。
 小鳥は歌い。虫は奏でる。耳を傾ける者はいずれ幸せになる。幸せとは、希望だ。
 大樹。これ以上、面白い事はないだろう。
 身を犠牲にして他を育む大樹は、秋になれば果実を実らせ、生き物を養っていた。日の光が眩しい。そんな時、木陰を作るのは当然、大樹だ。
 ここに悪は無い。皆仲良く生きている。
 小川に光るのは小魚。宙を舞うのは蝶。皆、楽しそうに笑っている。
 罪など無い。自由に生きる。
 大樹は全てを受け止めた。
 この平原の平和は大樹によって維持された。
 蝕む音は遠く離れた場所から聞こえる。
 全て夢。
 大樹は笑った。
 ここは平原。野原が広がり、流体は言葉を交わす。天は暗く、終わりを告げる。季節は夏。しかし大樹には葉が無い。
 腹を見せた小魚が川に流されていく。大樹に登ったリスは地上に落ちる。 
 痩せ切った生き物は幸せを失った。
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