電車

鵜海 喨

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終わり

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 湿気の多い車両はその中を液体のような人で満たし、長い図体を床に擦りつけた。休み休み走っては、ゲップをして人を吐き戻している。
 そんな車内で立っている私は、異様に時の流れが遅いと気づきながらも、こうして、小さなキーボードを架空的に叩いている。物理的に暑いその場所と空間的に寒気のするほど、自身の世界に入り込んだ胃の内容物は俯き、私と同様、恰もキーを叩き、一方でスマホはそう錯覚させている。

 変わらない車内といえばそのようで、あまり感想は出で行く気すら私に見せなかった。ただ、透析患者のような車両は、私にグリーンな車両です。と訴えかけ続けるも、実際は遠く離れた機械で自身の穢を濾し出している。
 ただ、私にとってはどうでもいい。呆れが積もる。

 吐き戻しを繰り返す胃は当然、その容物の数を減らし満足する一方で、人は電車に、もっと食えと言っているようだった。しかし、車両は食えば食うほど、穢を機械から濾し出しては、もう動けないとため息を吐いた。

 時が過ぎればもう、走る線路はない。終点駅のトイレの座り心地がさぞ良いようで、車両もしばらくその場所から動こうとしなかった。出ていく物ももう、吐瀉物とは言えず下痢といったほうが良い気がして、この吐瀉物とも便とも言い難い、酸味を含む異臭は、バラバラに散って繊維や小さな塊が各々に動き回る悲惨を作る。

 車掌はそんなトイレに篭った衰弱者にムチを打ち、抵抗も虚しくのっそりと歩みを進めた。
 横目に流し、私は自宅までの道を見た。すっかり日も落ち、濡れた土とアスファルトの香った中、街頭の監視する中を歩く。たまらなく眩しいだけのLEDは、そのサボりを怠らないようで、その輝きに見合わない業務態度であった。

 車内があんなに蒸していたのは、直前に雨が降っていたかららしく、サボりを通報する雨粒が数滴、私に当たり落ちていった。
 生憎、傘は持っていない。ただ、湿っぽくも肌寒いこの空間は、先程の車内の蒸し暑さより幾分マシなように思え、まだ私の気分は損なわれていない。そのまま歩みを進める。数ある玄関を通り過ぎ、用のある玄関についた私は、これが自宅ではないと、思い込みたい衝動を抑え、その戸を開けた。

 ここでも人に接しなければならない事に思え、当然に気分のらない私は、この文を書くのを止めた。
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