感情と戦争

鵜海 喨

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終わり。

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「感情があるから無意味な争いが起こるのだ。であるからに感情は無くさなけれなならない」
 そう教わった。

 でも現実という世界は、実際はそうではなくて、小鳥は歌い、花は揺れる明るく楽しい世界だと思う。僕は、だから組織に歯向かうんだ。無理な抵抗と、無意味な勇気を持って、立ち向かうんだ。

「戦争を忘れたのか。貴様も被害者だろう。歌うのは小鳥ではない、対空火器や戦車だ。揺れる砲身と光る弾。思い出せ」

 血腥い花と、翼を失う小鳥? 世界は赤く煌めいて、僕は片目を失った。

「そんなことない。感情は夢。大切な物。戦争もいつか無くせる」

 男は僕の縛られた友達を蹴りつけ、その身を飛ばした。
「黙れオーパーツ。それを言うとは滑稽だな。貴様の管理下の"感情"が悪さをしていると言っている。管理が甘いんじゃないか?」

 あ、あぁ...友達が、彼女が傷つけられている。どうにかしなければ。

「少年。どうだ。喋る気になったか? にしても、少年は感情を埋め込まれて大変だな。こんな、ただのオーパーツが傷付けられるだけで衰弱して。でも大丈夫だ、オーパーツは死にはしない。壊れるだけだ」

 壊れる...?

「話しちゃ駄目。私は大丈夫。生きてるから」

 男は再び五月蠅いと少女を蹴り飛ばす。お腹を踏みつけ少女は咳をすると、湧き水みたいに口から血が溢れ出た。

「ほら生きてる。肺に骨が刺さっただけ。生きてる。大丈夫。だから二人の秘密」

 秘密...?

「そう秘密」

 僕は見ていられなくて目を閉じた。
 暗い視界の中、彼女の悶える声が聴こえる。

 近くに、なにか重たいものが落ちる音がした。
「死にはしないが壊れはするようだな」
 声が頭上から降ってくる。

 話す話すから、もう止めてくれ。

 気付いた頃には、目を見開き泣いていた。
 近くに横たわった彼女の体と、顔にかかり口に入ってきた血の匂いと味。こうなったらもう手遅れかもしれない。いや、最初から情なんて抱かなければよかった。全て僕が悪い。

 座標、B3A 9E1。
「本当だな?」

 はい。

 その後、僕は再度教育されることなり、彼女とその仲間の首は切り落とされた。

 もう何も思わない。
 ただ感情が煩わしいと感じる。
 でも、どこか胸騒ぎが鳴り止まない。

 また彼女と会うような気がして。

 情除庁の者です。お宅の娘さんに感情的行動罪が課せられています。同行してください。これは命令です。

 恐る恐る出てきた女に手錠をかける。だが抵抗の色が見えた為、鎮静薬を女の首に塗った。
「あ、あぁ」
 そんな声を発して膝から崩れ落ちる。正直、歩いていただかないと非効率的だ。この脱力した魔女を担ぐのは無駄な労力であってエネルギーの無駄になる、だから使いたくはない。
「そんな事しちゃうんだ。嬉しくて手を叩いただけで処刑? なんて残酷」

 少女の声だった。しかし聞き覚えのある。

 公務執行妨害だ。連行する。出てこい。

 僕は、麻酔銃を構えて狭い路地裏を見回すが、どこにもいない。

「何を話しているのですか? 私には何も聞こえませんでしたよ」

 鎮静剤の回った女がそう言う。

 そうか。なら行くぞ。
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