カーテン

鵜海 喨

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終わり

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 カーテンから漏れる光など、その憂鬱さ以上に微笑んでいる気がする。少し隙間の空いた締めかけのカーテンを見て、私は以前の私の行動を後悔しつつ時がいつ頃かと、その身を起こそうと努力する。同時に健康の為と怠惰の為のスマートバンドが有る事を思い出し、その枷のように監視した機械に問い掛けた。

 刻はいつ頃か、答えは十時とある。欠伸を漏らした私は、布団から出ようと意思を固めるも、体はそう思っていないようで、惰眠を惜しむように羽毛布団の温かさを貪り続けた。

 しばし休憩といこうか。そう思う私にスマホは通知を鳴らし、その存在感をアピールしているが、その容貌はまるで愛欲むき出しのサキュバスのように弄られる事を快感としてまたそれを望むように、弄ってもらう事を乞い続けているようだった。そんな邪悪な物をここで触ってしまえば、戻れないと戒めの意を込め心を鬼にし、目に入らぬ場所に退かすため体を動かすも、なぜだかスマホを手に取った。

 画面に考えぬ人達の娯楽が投稿されたとのお知らせが表示され、恰も私をバカする表情をしたその板に、私は本当に何も思っていない。ただの憎悪も憎みも怒りも所詮はガラクタだ。いいだろう。その脳死とも評される娯楽を感じてみようではないか。

 チピチピチャパチャパ? 簡単に言えば、猫の動画に己の経験を投影した真にくだらない動画であった。それは、私が黙っていることを良しとし、次々に関連動画を再生する事でチピチピチャパチャパと下水のように無駄な電力を垂れ流す。そして、妙に品がない。失敗に品がない。成功に品がない。いや、思え方を変えてしまえば、浅くどうでもいい経験を語られたところで、ヤギに怒鳴られた猫のような心情以外に何を描写すればいいのか、といった話になり、果たしてそれが見たところで面白いかどうか、それすら念入りに審議する必要があろうと思われる。

 私以外の人間は、これをどのような感情で読み解いているのだろうか。いや、とりあえずこの制作側の感情を知るために私も作るべきなのだろうが、そのような公にできる経験等数少ない。いやあった。自称VTuber事務所と胸を張るヒルに飛び込んだ話がある。意外かと思われるかもしれないが、私自身こんな形相の文章を書こうが配信者をしている。「鵜海 喨」と調べて貰えれば私が出てくるはずだ。

 では作ってみようか。作り終えた。

 作ってる側は、経験を話せば楽になるという人間の特性を利用し悦に浸っているようだと結論付けた私は、半端な編集のままSNSに投稿する事にする。思いの外、編集難易度が低く作っていて楽しかったと率直な感想を記そうと思うが、時は既に一二時に差し掛かろうとしていた。腹の虫も、私のブドウ糖を人質に取り、食わないならコイツは出さねぇ、と物騒な事を言い始めている。おかげで頭が回らず、文が崩れてきた感覚が後を絶たない。

 この辺に留めておこう。潮時だ。
 たしか、冷蔵庫にスーパーで買った二百円ピザがあったな。
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