笑える心情と惜しむ命

鵜海 喨

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私と自分

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 何を知っているのだろう。意味もなく生きて入れば楽な世界で、面白みもなくただ、役目を負い続ける自分自身の重圧は確かな重たみでヤスリに精神を押し続ける事を認めたくはないが、そうでないと言えば嘘になる。何を求め、何を楽しみにし、何を自分自身にするのか、それが果たして正しいのか、わからず過去の経験と情景にすがり今を捻じ曲げて見ていた自分の責任と言えば確かにそうだ。

 只管だ。自分自身の自慰に似た役目など、終わってしまえば虚しい他ない事など痛い程知っている。只管自分自身が嫌いで、自分の為ではない、茨だろうが焼き石だろうがお構いなしに人の為に前へ歩く自分自身を笑い悦を得ていただけだ。情けない。自分自身を定義しなければ、自分なんて水に落ちた一酸化二水素と如く紛れて「らしさ」を失うのだろう。言われてみれば、そんなプライドじみた事など捨ててしまえば良いと言うかもしれない。事実確かにそうだと自分自身でも感じている。

 自分にかける重圧は、器用に逃げ道を簡単に隠す。見てもらえないであろう小説に割り込み「笑える」等と記載しては、それを私自身に読ませ執筆を止めさせる。読まれない小説など自己満足などの虚しい事と内なる私は言う。そう笑っているのだ。

 私は、小説を作り上げるのが好きだ。自分に止められなければ現実より最も遠い場所に踏み入り美しい世界を作り上げる事も叶う。しかし自分に止められる。理論的な未来を私に見せては、それを善とした。私のしたい事柄を制限しては思っても無い事をペラペラと人の口で勝手に喋る。私は、その発言を自分の考えだと言い聞かせ私が思い描いた世界の末だと、固形のまま腑に落とす事しか出来なかった。

 その結果がこれだ。面白いだろう。外に踏み入れば、喉がこじ開けられるような吐き気と嘔吐の代わりに出てくる咳、そしてモーターでも入っているのかと錯覚する程の動悸。

 人は理論で動かない。確かに私はそう思う。しかし自分はその机上空論を私に押し付けて来るのだ。私は私を殺し、私自身がしたい事などさせてもらえず、只管に理論的に何も言い返せないほどの正論で、私を縛り上げる。自分は上手くいかない、上手く動かない、上手く進まない私に苛立ちを込め、体調を崩してもなお動けと怒鳴り焦らせ首を絞めた。

 自分だけではない重圧。私ではなく自分が選んだ茨道。私は自分の言う大志を背負い相応の他者の圧力により潰れていく。今でも、自分は「しろ」「しろ」と不必要な焦りを怒鳴り続ける。

 私も壊れてしまったようで、私自身のしたい事がなにか忘れてしまったまま、疲弊して安息を求めた。「安息」と書かれた箱の中に何も物は入っていないのにも関わらず私は、その「安息」に何を詰めたらいいのかすら分からず求め続けた。

 次第に、私自身が凍っていくように思えた。感情が消え、ただ自分に従う従順な私に。それで、私が消えてしまえばよかったのかもしれない。私の往生際が悪いのだ。それでも、逃げ道を探して、疲弊して、疲れなど取れず、考え、動いて。

 結局、何を目指しているのかすら分からなくなる。只管だ。なにか今後の変わる希望を抱いた。抱いてしまったのだ。今となってはもう遅いと言え、既に私は「疲労感」を感じない。私は自分の消してはいけない、損傷して戻ってこれない制限を知らず知らずのうちに消してた。どちらが先かわからない。超えてしまったから希望を望めたのか。それとも希望を掴む為に領域に入ったのか。どちらにせよ、私は自分に従順な奴隷なままだった。

 明らかな、記憶力や判断力の低下。注意力の欠如や無力感、脱力感。自販機で飲み物すら選べなくなっていた。自分が何を飲みたいのか、その感覚すら拾えずただ時間ばかりが浪費され、自分に追われた。自販機の中は、柄のついた筒にしか見えなかった。良し悪しがなく、全て同じに見え選べない。

 当然、そんな状況で勉強に身が入る訳がなく自分の苛立ちが極まった時、私を吊るした糸が切れた気がした。

 以前から感じていた空を見る感覚、強制的に思考を止められるような、言えばボーっとした感覚が強くなり、動いている視界が、まるで紙芝居のように飛び飛びに見え始めたかと思えば、強烈な吐き気と動悸に襲われた。

 外を歩くだけ。それだけで、何回も嘔吐ができる。体が竦むようで脱力した感覚で、平衡感覚すらもおかしくなっていると思えた。それでも足は動き続ける。何故かは分からない。内容物の代わりに出続ける嗚咽混じりの咳を生じながら、歩き続けられる。依然として、思考は一つの筒のようにあ、思っては何処かに消えていく。言葉もそうだ。読めて意味もわかる。意味がわかるだけで理解は出来ない。そんなような感覚。

 それでも不思議なもので、このような文章は書くことができる。書きながら自分が次に何を打ち込むのか予想はできないが、なぜだかいつも通りに文章に起こす事はできるようだ。何を書いたか、私は知らない。自分が書いたのかそれとも、私の知らない脳の領域でずっと物事を考えているのか。それを知る術はないものの、確かに、確かな文章はこのように作り上げられている。

 私は何を思っているのだろうか。これを書いて何が起こるのだろうか。ただ、他のディスプレイに映し出された映像を眩しいと思っているのだろうか。何を感じているのだろうか。分からない。

 ただ私が別れて、拡散していくような感覚は残り続けている。私は何者なのだろうか? 私は。私は。私は。

 そうだな。私は特別ではない。もうどうでもいい。であれば、そんな特別ではない私が潰れる世界でどのようにして生きればいいのだろうか?

 代わりが有れば雑に扱われる。笑えた。笑える。笑わなければならない。そうだな。私の抱えているこの苦しみは平凡でありふれた物なのか。

 そうか、であれば私に意味など無いのか。そうなるのだろう。
 周りの者は、怪人だな。劣等。私に助けを求める資格もない。

 耐えなければならない。耐えて、耐えて、壊れるぐらいなら要らないと言われる世界で、私は自分自身の耐久テストを行う。

 平凡? 平凡か。救いの手など私にはない。
 人間は壊れる事は決してない。ただ、甘えているだけであり怠け者なだけである。役目不全は許されない。

 なんだか、わかった気がするよ。

 救いなど求めてはならない。只管に、役目を全うすればいい。そこに個々の感覚など考慮してはならない。


 そうなんでしょ? 
 僕が悪かったよ。ごめんなさい。
 まだ頑張るからさ。
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