一緒。

鵜海 喨

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「ずっと一緒だよ」
 布団の上、私は彼と指を絡めながら言った。
 しかし、彼は答えなかった。その代わり、私を抱き寄せ体に顔を押し付けた。
 そんな彼を見つめ、私は頭を撫でた。
 足の無い私を彼は求めている。そう思うと、心がドキドキして、キュンキュンする。こんな私で良いんだ。「普通」じゃないわたしで良いんだ。「普通」じゃない私が良いんだ。そうなんだ。
「ごめんね。いつも迷惑かけて」
 それを聞いた彼は絡めている手を離し、代わりに頬を撫でた。
 気づけば顔が目の前にあって、唇が交わる。
 彼の目はキラキラ輝いて、泣いているようだった。「そんな事言っちゃダメ」そう言っている気がする。
「ありがとう」
 私らしさを出した、ごめんねを伝える。
 体を密着させ、体温を共有する。これがまた気持ちよくて、すぐに眠ってしまいそうになる。彼もまた生きている。私の事を温かいと思ってくれているのかな? 私は温かいよ。あなたのおかげで、心も身体も温かいよ。好きだよ。大好きだよ。
 貴方は私に幸せを教えてくれた。これほどに近くにあった幸せをかき集めて私にくれたのは貴方だよ。
 青い空、白い雲、美しく舞う風達。小鳥達は歌い、木々は小さく揺れ笑っているよう。全ては貴方が私にくれたプレゼント。「普通」で汚れた世界から、連れ出してくれたのは貴方。
 貴方さえ居てくれればそれで良い。私を拾い上げてくれた貴方が居ればそれでいい。
 鮮明に映る世界は、私から、諦めを奪い取った。
 布団にいる私達は恋人同士。
 温もりは、私達が生きている証拠。
 彼は、可愛らしく寝息を吐いている。
 私もまた、寝息を吐いていた。
 手を繋ぎながら。
 眠りに落ちていた。
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