異世界のんびり料理屋経営

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第5章 天界への旅と龍達との出会い

第123話 (後編) 地球の根菜料理は、やっぱりおいしい!

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息を整えた二人は起き上がる。 さっきの魔物も諦めたのか?もういなくなっていた。

「爺の所為で散々な目にあったわ。 見てよ...服がボロボロだわ...」

長旅と魔物から逃げる時に引っ掛けてしまい姫様も爺も服がボロボロになっている。 

「姫様申し訳ございません。 帰宅しましたら如何様な処分でも受けますじゃ」

それを聞いた姫様は、爺がさっきから何回も謝るのは、もう1つの芸なのではないか?あと、耳が遠くて聞こえないのもわざとではないかと思うようになってきた。

「はぁ...爺もう早く行くわよ。 あそこに、コチラって書いてあるから進むわよ」

小さいからちょこちょこと歩みを進める二人。
被っている帽子が左右に動き可愛らしい二人である。

「爺、爺、凄いわよ! 大きな家がいっぱいよ」

「凄いですじゃ。 魔境にこんな場所があったとは驚きですじゃ」

コロボックルからすると人間がビルを見上げるような感覚である。 なんせ30cmしかないのだから。
(※本当は3cmと言われている)

「あれ? 小人??」

たまたま通った拓哉が見つける。

「あわあわあわあわ、爺巨人よ巨人」

「姫様、爺を囮に逃げてくだされ。食べられてしまいますじゃ」

あれ?さっきも同じような光景を見たような...

それはさておき、人間の大きさに驚く二人。

「驚かせてごめんなさい。 小人さんここへは何をしにきたのですか?」

腰を抜かす二人に腰を落とししゃがみながら話す拓哉。

「食べないですじゃ?」

食人族じゃないんだから食べるかぁと思う拓哉。

「食べませんよ! 俺は料理人ですから作る方です。 名前は拓哉って言います」

料理人と聞いて爺が目を輝かせる。やっと出会えたと。

「おぉ~料理人を探して旅をしてきたのですじゃ。 爺はシオ爺と呼んでくださいじゃ。 姫様はシノ姫様ですじゃ」

「シ、シノよ。 よろしくしてあげるわよ」

自己紹介してくれた二人だがキャラが濃いなと思う拓哉。

「塩爺...シオ爺とシノ姫様は、どんな料理を食べたいのですか?」

「姫様はラベンダーの蜜しか食べないのですじゃ。偏食を治す為に、根菜の苦手な人でも食べられる料理をお願いしたいのですじゃ」

「根菜ぁぁぁぁ!嫌だわ!絶対食べないわよ」

根菜をおいしく食べられる料理を要求する爺に対して、拒絶反応を起こす姫様。

「わぁっ急に大声出すから驚きましたよ。シオ爺さん分かりました。 作りましょう。 それからシノ姫様、妖精も喜ぶお菓子があるんですがいらなかったですかぁ?」

お菓子で釣る作戦に出る拓哉。 姫様は、「う~ん?いや、でも...」とかなり悩んでいるようだ。

「仕方ないから食べるわ。 絶対に妖精が喜ぶお菓子出してよね?」

内心フフフお菓子にやられたなと不敵に笑う拓哉。 

店に向かう途中で光合成が終わったヤミンと会う。

「ヤミンくん、エネルギー補給?」

「うん。 魔力いっぱいだから短時間で回復出来ちゃうけど気持ちいいから3時間くらい植わっちゃうんだ。 横にいるのはお客さん?」

それを聞いて拓哉は長風呂する人間かよ!ふやけない?大丈夫?と思うのだった。

「その気持ちよさを分かってあげられないけど居心地いいんだね。 そうそう。お客さん...あ!ヤミンくん、この二人の服作れるかな? 長旅したみたいでボロボロなんだよ」

ヤミンは、服を自分で作っているのだ。 最近では、住人の服を作ってあげたりしている。

「うん。 そのくらいの大きさならすぐ作れるよ。 似合いそうなの作ってくるね」

どんな服がいいのか聞かずに走って行ってしまった。

「拓哉殿、あの方に任せて大丈夫ですかのぅ?」

「大丈夫かな...多分いい服を用意してくれると思いますよ。 それよりも、店に着いたので中でお待ちください。 椅子を用意しますから」

妖精や小さい種族用にバルトが作った椅子を用意する拓哉。 登るのもハシゴになっており楽である。

「ここから登ってお座りください。 俺は料理を作ってきますから」

拓哉は厨房で何を出そうか悩んでいた。 根菜はよく使うからこそ悩む。 

「よし! 鶏と根菜の炊き込みご飯と豚汁とポテサラだな。 これで無理なら惨敗だ」

姫様と爺はというと。

「爺、ここで無理なら私は一生ラベンダーの蜜しか吸わないから」

「わかったですじゃ...爺もこれ以上は長旅が辛いですじゃ。 どうにか今日冥土の土産に姫様がおいしく食べているお姿を見たいですじゃ」

姫様は、冥土の土産ってなんなの?無理矢理でも食べなきゃいけないじゃないと思うのだった。

「どうせここも一緒よ...」

本当は成長するに従って自分がわがままで凄い迷惑をかけていることも分かっていたのよ。 それも辛かったし、食べられない自分も嫌になっていたわ。 だから、爺から"長旅をしましょう"は嬉しかった...爺との旅の間は色々大変なこともあったけど、偏食家を忘れられたの...あれ?嗅いだことのない凄くいい匂いがするわ。 なにかしら?

「姫様、姫様、お腹を刺激するいい匂いですじゃ。 楽しみですじゃ」

「そうね...」

素っ気なく返したが、本当はこの匂いで腹が鳴りっぱなしの姫様。

「お待たせ致しました。 鶏肉と根菜の炊き込みご飯と豚汁とポテトサラダです」

姫様と爺は見たこともない料理に圧倒される。 二人は拓哉が用意してくれた小さなフォークを使って食べ始める。

「ふぉふぉ~なんですじゃこれは! 肉の旨味と脂の甘味がライスに溶け込み、根菜が持つ旨味がそこに合わさることで素晴らしいおいしさになってますじゃ。 爺はこんなおいしい料理が食べられて生きててよかったですじゃ。 姫様どうで...姫様ぁぁぁ」

「な、なによ。 おいしいんだから食べるに決まってるでしょ」

内心姫様は、なによ!?これ?里で食べていたのは料理だったの?あんなの料理じゃないわ。 根菜もお肉も、それぞれの甘みと旨味があっておいしい。香辛料なのか?味付けも食べたことがないし、一切根菜の苦味や渋みや独特の臭さがないわ。 お肉も血臭くないしおいしいぃぃぃ。 ラベンダーの蜜よりおいしいもの。 

「あぁぁぁ爺は感激ですじゃ。 もうこの世に思い残すことはないですじゃ」

大泣きする爺は泣き崩れる。

「爺...今までごめんなさい。 爺もみんなも困らせたわ。 爺は、最後まで私を見放さずありがとう」

「おぉぉぉ姫様が姫様が爺にごめんなさいとありがとうと言ったですじゃ。 感激ですじゃぁぁぁ」

姫様からの今までに言われたことのない言葉が飛び出して感動する爺。

「爺うるさいわよ。 拓哉に迷惑がかかるわ。 これ(炊き込みご飯)おかわりちょうだい」

なんとおかわりをする程にハマったようだ。

「ん~! これも(豚汁)柔らかい根菜に口ですぐ溶けるお肉に、それぞれの旨味が溶け出し合わさったスープがおいしい」

そこに、服を持ってきたヤミンがやってきた。

「服作ってきたけど...なんか凄い状況だね」

泣き崩れながら食べる爺と周りが見えていないのかというくらい集中して食べる姫様。

「ヤミンくんごめん。 食べ終わったら渡してあげて。 待っている間、ヤミンくんも食べていく?」

「うん食べる~」

こうして姫様は、偏食家を卒業することが出来たのだ。 だが、憩い亭に限る。 また明日から爺は大忙しなのである。 


あれ?お菓子は? 根菜料理でお腹満腹になり食べられなかったのはナイショである。
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