異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
158 / 203
第6章 開拓とエルフ国へ家族旅行!

第155話 エルフの王様は和食が大好き!

しおりを挟む
今日は、エルフの国の王様に料理を振る舞う日である。
昨日と同じで開店前に貸し切り状態にしてくれるということだ。ちなみに、娘たちは、リーリヤの案内で観光中である。

「サリアさん、王様は茂三さんの店に行ったことはあるのですか?」

「ありますよ。転移でフラッと現れて食べたら周りの人と話していて、途中で宰相様が迎えに来て連れて帰られるのがお決まりでしたね」

本当に自由気ままな王様だなと思う拓哉。
やりやすいし個人的にはありがたい。

「嫌いな物も、特にないですか?」

「ありませんね。好きな物は、なすと魚でしたね。茂三さんが亡くなってから、なすと魚を上手く料理できるやつがいないと嘆いていました」

嘆くくらいだから相当欲求が溜まっているだろうと感じて、昔を思い出すように、定食形式で出そうと考えている。

その時、ドアが開き、一人のエルフが入ってくる。見た目は、エルフの国でよく見かけた服装をしている。

「陛下!?まだ時間には早いと思うのですが?」

サリアが、陛下と呼ぶということは、この国の国王陛下なのだろう。あまりにも、普通の服装をしており、拓哉は全く気付かなかった。

「いや~サリア君以上の料理人が来ると聞いた日から居ても立っても居られないくてねぇ。今日も、日の出前に目が覚めちゃったんだよね。で、そこにいるのが、サリア君以上の料理人かな?」

王様は、子供のように我慢出来ずにいたみたいだ。
王様は、拓哉の方を向き話しかけてくる。

「はじめまして、この国の王様をさせられているバイエルン・ディ・ドルチェア・スカイノフと言うよ。よろしくねぇ」

王様自ら名乗ってくれたのだが、王様曰く無理矢理に王様をさせられているようだ。
それに、名前が長すぎると思う拓哉。

「わざわざありがとうございます。私は、拓哉と言います。よろしくお願いします。えっと...バイエルン様とお呼びすればいいですか?」

普通の王族なら、名前で呼ばれた時点で怒るが一切怒る様子もなく笑っている。

「うん。バイエルンで構わないよ。それより、楽しみにしてる料理を食べたいねぇ。今から作れるかい?」

「もう少し後に来られると思っていたので、少し時間はかかりますが、よろしいですか?」

2時間以上も早く来たので、野菜もまだ切れていない。メインの魚の料理は以前仕込んだのが、アイテムボックスにあるので、それを使おうと考えている。

「私が、早く来てしまったんだから気にしないでいいよ。サリアと話しているからゆっくりで大丈夫だからねぇ」

「ありがとうございます。早速作ってきます」

そう言って拓哉は、厨房に向かう。
茄子と言えば定番の茄子の煮浸しを作ろうと考えている。

「まずは、茄子のへたを取ってから縦に切る。それから斜めに切れ込みを入れるんだけど浅く入れないと煮崩れするから...って誰に言っているんだろう。いつもは、娘たちがいるからクセになってるな」

いつもは、桜花が横で学んでいるので、その癖で独り言のように話しながら作ってしまう拓哉。

「まぁ、教える練習と思って話しながら作りますかね。茄子は3等分にしてから、ボールで調味料作りをする。出汁 醤油 みりん すりおろし生姜を合わせる。それから、3等分した茄子をフライパンで焼いて、両面が焼けたら調味料を入れて弱火で蒸し焼きにする」

いい感じで柔らかそうな茄子が完成に近付く。その間に、アイテムボックスから臭み取りをした鯖を取り出して、フライパンに調味料と鯖を入れて鯖の味噌煮を作っていく。
白米も味噌汁も順次作っていき、着々と定食らしい食事が完成に近付く。

暫くしてから拓哉は、料理をさせて二人のもとまで運ぶ。バイエルンとサリアの前に、鯖の味噌煮 茄子の煮浸し 味噌汁 白米 たくあんの漬物を並べていく。

「バイエルン様、サリアさん、大変お待たせ致しました。鯖の味噌煮と茄子の煮浸しの定食でございます。ちなみに、飲み物は緑茶という少し渋みのあるお茶でございます。ごゆっくりお召し上がりください」

バイエルンもサリアも、茂三のところで食べた定食形式に心が躍るのである。見た目だけで懐かしさに感動して匂いを嗅いでお腹がグゥ~と鳴るのだ。
二人は、我慢出来ずに、器用に箸を使いながら口に運ぶ。

「う、うまい。これだよこれ。茄子の煮浸しの優しく包むような甘さに、口の中でとろけてしまうような柔らかさ。懐かしいねぇ。これに...うん。やっぱりライスがよく合う」

バイエルンは、思い出しながら茄子の煮浸しを味わっている。目尻が下がり、やっと味わえたという顔をしている。

「バイエルン様、鯖もおいしいですよ。甘い味噌に一切臭みのない鯖。それに、これもライスとよく合います。味噌汁も、ほっこりして落ち着きますね」

サリアも、和食を気に入ってくれたのか、食べるスピードが衰えることなく味わっている。それにしても、二人共箸の使い方はうまいし、魚の食べ方もうまいのである。下手な日本人よりもうまく食べるのではと思う拓哉。

「本当だねぇ。鯖の塩焼きは食べたことあるけど、この鯖の味噌煮も負けず劣らずのうまさがあるねぇ。ライスが進むよ。それに、箸休めのたくあんがいいねぇ。お茶も、心が休まるようだよ...何故ドリア様は、うちに来てくれなかったのか...エルフの国で店をしてくれていれば毎日通ったのに」

和食が大好きなエルフの王様、拓哉が居てくれたらよかったのにと嘆くのであった。ドリア様呼びをやめろと内心思う拓哉。

「もし、来られる時間があるなら、魔境でいつでもお店を開いてますからサリアさんと来てくださいよ」

「その手があったねぇ。よし、毎日通うことにしよう。昼はサリアの店に、夜はドリア様の店に。あぁ~1日が毎日楽しみで仕方ないねぇ」

この王様は、働かないのか?と思う拓哉であった。その後も、これが食べたいと注文をされてまた作ることになる拓哉。開店ぎりぎりまで色んな物を作らされて、腹がはち切れそうになり、裏の休憩スペースで寝ているバイエルン。

「うちの王様がすいません...」

「いえいえ、久々の和食に歯止めが効かなかったのでしょう」

サリアと拓哉が話す側で、満足そうな寝顔をしながら寝ているバイエルンであった。
しおりを挟む
感想 1,411

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...