『異世界味噌料理人』〜腹を満たす一杯から、世界は動き出す〜

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迷い込んだ料理人

第2話 小さな村への案内

村の中に入ると、まず耳に入ってきたのは人の生活音だった。

木を割る音。遠くで誰かが呼び合う声。家々の間を抜ける風に、干した布がはためく。大きな村ではないが、人がちゃんと暮らしている空気がある。
タクミは歩きながら、周囲を静かに観察した。

「ここ、結構人いるんだな」

前を歩いていた少年が振り向く。

「小さいけど、みんなここで暮らしてる」

短い言葉だったが、その声には少しだけ誇らしさが混じっていた。

村の中央らしい広場に出ると、数人の大人がこちらに気づいた。見慣れない顔がいるのだから当然だろう。視線が集まる。

「ルイ、その人は?」

水桶を運んでいた女性が声をかける。
ルイと呼ばれた少年は、タクミの方をちらりと見てから答えた。

「森にいた。腹、減ってたから、パンあげた」

「逆じゃないの?」
 
女性が少し笑う。
タクミは軽く頭を下げた。

「通りすがりの者です。少しの間、ここにいてもいいでしょうか」

女性はタクミの顔を見て、それからルイを見た。

「ルイが連れてきたなら、変な人じゃなさそうね」

「たぶん」
 
ルイは、真顔のままうなずいた割には、適当な返事をする。いつものことかも知れないが、その答えに女性は、呆れた時に出す小さな息を吐き、広場の奥を指さした。

「しばらく滞在したいなら、村長に話を通した方がいいわ。あそこにいる家」

「ありがとうございます」

タクミが礼を言うと、女性は気にしなくていいと言って手を振って去っていった。
その後、案内されるまま歩きながら、タクミは小さくつぶやく。

「ルイっていうのか」

「うん」

「助かった。パン、半分もらったしな」

ルイは少しだけ考えるようにしてから言った。

「......うまかった」

「そうか」

その一言に、タクミはわずかに口元を緩めた。
村長の家の前に着くと、ルイが扉を軽く叩く。しばらくして、中から年配の男が姿を現した。

「どうした、ルイ」

「森に人いた」

簡潔すぎる説明に、男は少し眉を上げ、それからタクミに視線を向けた。

「旅人か?」

「そんなところです。しばらく滞在させてもらえないかと思いまして」

男は腕を組み、タクミを上から下まで一度眺めた。

「働けるか?」

「料理なら」

「料理?」

少し意外そうな顔になる。

「ここでは腕の立つ料理人は歓迎だ。滞在するなら、村の仕事を手伝ってもらうことになるが、それでもいいか?」

「構いません」
 
男はうなずいた。

「なら、炊事場を手伝ってもらおう。ちょうど人手が足りていなくてな」

その言葉を聞いて、ルイが小さくタクミを見た。

「料理、する?」

「ああ」
 
タクミは軽く肩を回しながら答える。

「せっかくだしな」

家を出ると、どこからか煮込み料理のにおいが漂ってきた。肉と野菜を煮た、素朴な香りだ。

タクミはそのにおいを吸い込み、何か思ったのか、少しだけ目を細める。

「まずは......ここの飯を見てみるか」

その一言が、この村での最初の仕事の始まりだった。
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