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迷い込んだ料理人
第18話 過去と現在の料理と思い出
今となっては当たり前の光景だが、屋台の準備を始めると、自然と視線が集まる。
タクミは、机を置き、鍋をかまどに乗せる。火を入れると、ぱちりと薪が音を立てた。
「ねぇ、昨日の話、ちょっと考えてたんだけど」
ミリアは、椀を準備しながら話し始めた。
「何をだ?」
「片付けてる時に、続けるのは簡単じゃないって言ってたやつだよ」
タクミは、すぐには答えず、鍋の蓋を開ける。湯気が立ちのぼり、いつもの香りが広場に広がった。
「そう......難しいんだよ」
何かを思い出しながら短くそう言った。
ちょうどその時、いつも一番乗りで来る農夫がやってくる。
「おはようさん、今日も頼む」
「毎日来るな。こちらとしては、ありがたいが」
「そりゃ来るさ。もう身体が覚えちまった。それに、仕事前に力をつけないとな」
笑いながら銅貨を置く姿は、どこか嬉しそうだ。煮込みもだが、タクミと交わすやり取りも日課の一部となっているのだろう。
その後も客は途切れない。並ぶ人数は多すぎず少なすぎず、ちょうどいい流れだった。
「タクミさ、最初から得意だったわけじゃないんでしょ?」
「まぁな。最初は失敗ばっかりだ。師匠に、何度も怒鳴られたからな」
前世の若い頃の自分を思い出しながら話す。
「え!?ほんとに?それに、師匠がいたんだ」
ミリアからすると、そんなことはないと否定されると思っていたが、タクミにも失敗した過去があったことに驚く。
「味が決まらなくてな。何度も作り直したぞ。師匠が厳しい人だったからな」
「師匠に怒られてるのが、本当に想像つかないよ」
今のタクミを見ていると意外だったのか、ミリアが目を丸くした。
「今もそうだぞ!ここに来た時も、塩の強さも違ったし、火加減も分からなかった。何度か失敗したしな」
「全然そんな感じしなかった」
「見せなかっただけだ。それに、ミリアも言ってただろ?最初は、しょっぱかったってな」
老人が言っていたように、ミリアと距離が縮まってきたのが、前の世界の話も平然とするようになってきたのだった。
◆
少し客が落ち着いた頃、鍋をかき混ぜながら、なぜか死ぬ間際の記憶が蘇る。
閉店後の夜の誰もいない厨房でタクミは、もう少しで仕込みが終わる時に、記憶は途切れた。そしてなぜ、この世界に来たのかと意味を考える。
「タクミ!タクミ!どうかした?」
ミリアは、ボーッとするタクミを呼ぶ。
「いや......」
ミリアは、少し不思議そうに見ていたが、それ以上は聞かなかった。
そうしていると、常連の商人がやってきた。
「おう、順調そうだな」
「まぁな。おかげさまでな」
商人は椀を受け取り、ひと口すすって満足そうに頷く。
「やっぱり安定してる。これが続くのが強いんだ。これからも頼んだぞ」
「簡単じゃないけどな」
商人とタクミは、顔を見合わせて笑った。
「だろうな。続けるってのは、一番難しい!俺が知ってる店も知らず知らずに店を畳んでるしな」
世界が変われど、どこの場所も商売とは難しいものだと、タクミは再確認した。
「ねぇ、タクミ」
商人が去ったあと、ミリアが尋ねてきた。
「ん?」
「なんで、そんなにちゃんと食べさせたいって思うの?」
先ほどの前世の記憶に繋がる話なので、タクミは手が止まりかけた。
「さぁな。なんでだろうな」
本当にわからないといった雰囲気で答えて、鍋を混ぜる。
前の世界で、最後に仕込みをした料理を誰にも提供出来ず、思い残した何かを、この世界で得ようとしている自分がいる。そして目の前で誰かが食べている光景にやけに安心する自分がいるのだ。
「なんか、タクミらしい答えだね。もし、いつか言ってもいいと思えたら教えてね」
「どういう意味だ?」
「秘密っぽいところ。だから、敢えて聞かないよ」
その言葉に、タクミは苦笑する。すべてお見通しなのかと感じたからだった。
タクミは、机を置き、鍋をかまどに乗せる。火を入れると、ぱちりと薪が音を立てた。
「ねぇ、昨日の話、ちょっと考えてたんだけど」
ミリアは、椀を準備しながら話し始めた。
「何をだ?」
「片付けてる時に、続けるのは簡単じゃないって言ってたやつだよ」
タクミは、すぐには答えず、鍋の蓋を開ける。湯気が立ちのぼり、いつもの香りが広場に広がった。
「そう......難しいんだよ」
何かを思い出しながら短くそう言った。
ちょうどその時、いつも一番乗りで来る農夫がやってくる。
「おはようさん、今日も頼む」
「毎日来るな。こちらとしては、ありがたいが」
「そりゃ来るさ。もう身体が覚えちまった。それに、仕事前に力をつけないとな」
笑いながら銅貨を置く姿は、どこか嬉しそうだ。煮込みもだが、タクミと交わすやり取りも日課の一部となっているのだろう。
その後も客は途切れない。並ぶ人数は多すぎず少なすぎず、ちょうどいい流れだった。
「タクミさ、最初から得意だったわけじゃないんでしょ?」
「まぁな。最初は失敗ばっかりだ。師匠に、何度も怒鳴られたからな」
前世の若い頃の自分を思い出しながら話す。
「え!?ほんとに?それに、師匠がいたんだ」
ミリアからすると、そんなことはないと否定されると思っていたが、タクミにも失敗した過去があったことに驚く。
「味が決まらなくてな。何度も作り直したぞ。師匠が厳しい人だったからな」
「師匠に怒られてるのが、本当に想像つかないよ」
今のタクミを見ていると意外だったのか、ミリアが目を丸くした。
「今もそうだぞ!ここに来た時も、塩の強さも違ったし、火加減も分からなかった。何度か失敗したしな」
「全然そんな感じしなかった」
「見せなかっただけだ。それに、ミリアも言ってただろ?最初は、しょっぱかったってな」
老人が言っていたように、ミリアと距離が縮まってきたのが、前の世界の話も平然とするようになってきたのだった。
◆
少し客が落ち着いた頃、鍋をかき混ぜながら、なぜか死ぬ間際の記憶が蘇る。
閉店後の夜の誰もいない厨房でタクミは、もう少しで仕込みが終わる時に、記憶は途切れた。そしてなぜ、この世界に来たのかと意味を考える。
「タクミ!タクミ!どうかした?」
ミリアは、ボーッとするタクミを呼ぶ。
「いや......」
ミリアは、少し不思議そうに見ていたが、それ以上は聞かなかった。
そうしていると、常連の商人がやってきた。
「おう、順調そうだな」
「まぁな。おかげさまでな」
商人は椀を受け取り、ひと口すすって満足そうに頷く。
「やっぱり安定してる。これが続くのが強いんだ。これからも頼んだぞ」
「簡単じゃないけどな」
商人とタクミは、顔を見合わせて笑った。
「だろうな。続けるってのは、一番難しい!俺が知ってる店も知らず知らずに店を畳んでるしな」
世界が変われど、どこの場所も商売とは難しいものだと、タクミは再確認した。
「ねぇ、タクミ」
商人が去ったあと、ミリアが尋ねてきた。
「ん?」
「なんで、そんなにちゃんと食べさせたいって思うの?」
先ほどの前世の記憶に繋がる話なので、タクミは手が止まりかけた。
「さぁな。なんでだろうな」
本当にわからないといった雰囲気で答えて、鍋を混ぜる。
前の世界で、最後に仕込みをした料理を誰にも提供出来ず、思い残した何かを、この世界で得ようとしている自分がいる。そして目の前で誰かが食べている光景にやけに安心する自分がいるのだ。
「なんか、タクミらしい答えだね。もし、いつか言ってもいいと思えたら教えてね」
「どういう意味だ?」
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