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迷い込んだ料理人
第23話 新作大好評!新たな道へ
朝の広場に、再び机が置かれた。
昨日まで何もなかった場所に、鍋とかまどが戻る。石畳の上に立つと、ほんの少しだけ胸がざわついた。
「昨日から楽しみすぎて、全然寝られなかった。みんな、絶対驚くよ」
ミリアは、前よりも無駄なく椀を並べる。
「今日は、試すだけだ。だけど、俺も少し気になるな」
タクミは、試すだけとは言いつつも、新作が受け入れられるか気になる。
タクミは、早速薪に火を入れて、鍋の底で肉を焼き付ける。脂が弾け、表面にこんがりと焼き色がつく。そこへ、味噌を溶いたタレを落とした。ジュッと音が鳴った瞬間、広場の空気が変わった。
甘くて香ばしい香りが、朝の冷たい風に乗って広がる。
「わっ!すごい」
ミリアは、昨日も嗅いだはずなのだが、改めて香りの強さに驚く。
その横で、いつの間にかルイが立っていた。無言で鍋を見つめている。
「いい匂い」
言葉少なくだが、ルイの目は鍋に釘付けになっている。
「驚くのはまだ早いぞ!」
タクミは、出汁を少しだけ注ぐ。焼きの香ばしさを閉じ込めるように、ゆっくり煮立たせる。これが、今回からの新しい形である焼いてから煮るという調理法だ。
この方法のお陰で、香りは前よりも強く、遠くまで届く。そして、通りを歩いていた老人が足を止めた。
「なんだ、この匂いは!?」
更に、後ろを歩いていた旅人も振り返る。だが、最初に近づいてきたのは、食べ慣れたいつもの農夫だった。
「お、復活したか!待ってたぞ」
農夫は、近くで匂いを嗅ごうと、鍋を覗き込む。
「ん?前となんか違うな?」
「新作だ」
「じゃあ、それ頼む」
椀によそい、手渡す。農夫は、一口すすった直後動きを止めた。
「おい......前の比じゃないくらいうまくなってないか?」
農夫は、目を見開き驚く。後ろでは、ミリアが拳を握り喜ぶ。
「すまん、もう一杯くれ!一杯じゃ足らんぞ」
以前の農夫ならば、一杯食べれば満足だったが、強い香りと旨味のせいか、食欲を掻き立てられたようだ。
その様子を見ていた人々は、なんだなんだと寄ってきて、列が自然と伸びる。食べた人はみな、満足そうな反応をした。
「タクミ」
ルイが、小さく袖を引く。
「ん?どうした?」
「さっきより、甘い」
タクミは、ルイにも味見をしてもらって感想を聞いていた。そして、子供の舌はやはり優れており、一口で違いを見破る。
「味噌を少し変えたんだ。よくわかったな」
ルイは、もう一口食べて、こくりと頷いた。
「これ、好き」
タクミは、ルイの嘘偽りのない表情に、少し笑って頭を撫でた。
そして、昼が近づく頃には、列は以前より長くなっていた。村人だけでなく、旅人の姿も目立つ。
「なるほどな」
視線を上げると、一人の男が立っていた。落ち着いた服装。無駄のない立ち姿だ。
なぜか、空気が少しだけ張り詰める。ルイが、そっとタクミの背後に回る。
「いつものお客じゃない」
ルイは、少し怯えた。
「一杯もらえるか?」
男は、周りやルイの様子などお構いなしに、銅貨を置く。
タクミは、注文を受けた以上、客は客だということで、黙って椀を渡した。
男は、その場で立ったまま一口食べる。表情は動かないが、もう一口もう一口と静かに食べ進める。
「噂以上だ......」
表情は全く変わらず、褒める言葉は出ない。だが、否定もしていない。
「君が、作っているのか?」
「あぁ、仕込みから全てな」
「そうか」
そう言い終わると、しばしの沈黙が流れる。
「私は、街の飲食店組合の者だ」
ミリアは、息を呑んだ。ルイは、無言で男を見上げている。そして、タクミはやはりかと思う。
「このままでは、また問題になるぞ」
男は、淡々と続けた。
「そこで、提案なんだが、街で店を出す気はないか?」
その言葉に、広場の風が止まったように感じた。
タクミは、鍋から立ち上る湯気を見て考える。
最初は、腹を満たすために始めた屋台だったが、もう村だけの話ではないのだと感じた。
「条件はなんだ?」
タクミは、新たな一歩を踏み出す時が来たと、珍しく深く考えるフェイズを飛ばして条件を聞くのだった。
昨日まで何もなかった場所に、鍋とかまどが戻る。石畳の上に立つと、ほんの少しだけ胸がざわついた。
「昨日から楽しみすぎて、全然寝られなかった。みんな、絶対驚くよ」
ミリアは、前よりも無駄なく椀を並べる。
「今日は、試すだけだ。だけど、俺も少し気になるな」
タクミは、試すだけとは言いつつも、新作が受け入れられるか気になる。
タクミは、早速薪に火を入れて、鍋の底で肉を焼き付ける。脂が弾け、表面にこんがりと焼き色がつく。そこへ、味噌を溶いたタレを落とした。ジュッと音が鳴った瞬間、広場の空気が変わった。
甘くて香ばしい香りが、朝の冷たい風に乗って広がる。
「わっ!すごい」
ミリアは、昨日も嗅いだはずなのだが、改めて香りの強さに驚く。
その横で、いつの間にかルイが立っていた。無言で鍋を見つめている。
「いい匂い」
言葉少なくだが、ルイの目は鍋に釘付けになっている。
「驚くのはまだ早いぞ!」
タクミは、出汁を少しだけ注ぐ。焼きの香ばしさを閉じ込めるように、ゆっくり煮立たせる。これが、今回からの新しい形である焼いてから煮るという調理法だ。
この方法のお陰で、香りは前よりも強く、遠くまで届く。そして、通りを歩いていた老人が足を止めた。
「なんだ、この匂いは!?」
更に、後ろを歩いていた旅人も振り返る。だが、最初に近づいてきたのは、食べ慣れたいつもの農夫だった。
「お、復活したか!待ってたぞ」
農夫は、近くで匂いを嗅ごうと、鍋を覗き込む。
「ん?前となんか違うな?」
「新作だ」
「じゃあ、それ頼む」
椀によそい、手渡す。農夫は、一口すすった直後動きを止めた。
「おい......前の比じゃないくらいうまくなってないか?」
農夫は、目を見開き驚く。後ろでは、ミリアが拳を握り喜ぶ。
「すまん、もう一杯くれ!一杯じゃ足らんぞ」
以前の農夫ならば、一杯食べれば満足だったが、強い香りと旨味のせいか、食欲を掻き立てられたようだ。
その様子を見ていた人々は、なんだなんだと寄ってきて、列が自然と伸びる。食べた人はみな、満足そうな反応をした。
「タクミ」
ルイが、小さく袖を引く。
「ん?どうした?」
「さっきより、甘い」
タクミは、ルイにも味見をしてもらって感想を聞いていた。そして、子供の舌はやはり優れており、一口で違いを見破る。
「味噌を少し変えたんだ。よくわかったな」
ルイは、もう一口食べて、こくりと頷いた。
「これ、好き」
タクミは、ルイの嘘偽りのない表情に、少し笑って頭を撫でた。
そして、昼が近づく頃には、列は以前より長くなっていた。村人だけでなく、旅人の姿も目立つ。
「なるほどな」
視線を上げると、一人の男が立っていた。落ち着いた服装。無駄のない立ち姿だ。
なぜか、空気が少しだけ張り詰める。ルイが、そっとタクミの背後に回る。
「いつものお客じゃない」
ルイは、少し怯えた。
「一杯もらえるか?」
男は、周りやルイの様子などお構いなしに、銅貨を置く。
タクミは、注文を受けた以上、客は客だということで、黙って椀を渡した。
男は、その場で立ったまま一口食べる。表情は動かないが、もう一口もう一口と静かに食べ進める。
「噂以上だ......」
表情は全く変わらず、褒める言葉は出ない。だが、否定もしていない。
「君が、作っているのか?」
「あぁ、仕込みから全てな」
「そうか」
そう言い終わると、しばしの沈黙が流れる。
「私は、街の飲食店組合の者だ」
ミリアは、息を呑んだ。ルイは、無言で男を見上げている。そして、タクミはやはりかと思う。
「このままでは、また問題になるぞ」
男は、淡々と続けた。
「そこで、提案なんだが、街で店を出す気はないか?」
その言葉に、広場の風が止まったように感じた。
タクミは、鍋から立ち上る湯気を見て考える。
最初は、腹を満たすために始めた屋台だったが、もう村だけの話ではないのだと感じた。
「条件はなんだ?」
タクミは、新たな一歩を踏み出す時が来たと、珍しく深く考えるフェイズを飛ばして条件を聞くのだった。
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