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第1章 輪廻ノ郷
第壱話 由来ノ地
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バスを降りると、そこにはやはり何もなかった。
所謂、都会という場所から新幹線で3時間。そこから特急電車に乗り換えて1時間。更に、1時間に1本しかない鈍行列車に30分程乗車する。その後、1日に数本しか運行していないバスに揺られ、今に至る。
人っ子一人いない。周りは田んぼだらけだ。遠くには多分なんとか連峰とかいう名前が付いていそうな山々が連なっているし、空は抜けるような青さだ。たまに、ピーヒョロロと鳶が鳴き、旋回して去って行く。
古びたバス停の横には、これまた古びたベンチが置かれている。雨よけなのだろうトタンの屋根付きだ。しかし、それも錆びかけ所々穴が空いている。ベンチも傾いているため、座るには心許ない。
ーゆっくりおいでー
そう祖父母には言われた。しかし、教わった住所から交通手段を検索した時、愕然とした。逆算しても早朝に出なければ、足がなくなってしまうのである。とは言っても、早朝に出たところで昼過ぎには着いてしまうし、待ち合わせは夕方だから、3時間近く持て余す羽目になる。何もないところだろうとは予想していたが、予想通り過ぎて困ってしまう。
「さてと。どうしたもんかな。」
祖父母に電話をして迎えにきてもらうか。スマートフォンを取り出すと、画面を見てぎょっとする。
「おいおい!圏外って、まじか。」
がっくりと膝をつく。これは予想していなかった。
「・・・歩くか。」
幸い大方荷物は先に送っているので、持ち物は背に負ったリュックだけだ。
「ここに住むんだし、地形を知っておくのはいいことだよな!」
前向きに考える事にした。スマートフォンに保存した地図を表示する。祖母の手書きの地図だ。まずはバス停を背に右に進む。どれくらい先なのかは不明だ。とにかくまっすぐに道は続いており、田んぼに続く畦道が左右に伸びている。20分程歩くと、川に突き当たった。膝まで届くか否かの深さだろう。水は透き通って、魚が泳いでいるのが見える。鱗に日が反射してキラリと光った。
ー気持ち良さそうだな。今度入ってみようー
再度地図を確認する。ここを左に行くらしい。視線を移す。
「・・・ばぁちゃん。ここを行けって本気で言ってんの?」
視線の先にあるもの、それは鬱蒼とした森だった。細い石畳みが敷かれている。どうやら人の通りはあるらしい。その石畳みに沿うようにして川からの支流がちょろちょろと流れている。だが、目視できるのは数メートル先までだ。その先はまだ昼間だというのに暗くてよく見えない。はっきり言おう。怖い。とても怖い。ここを行くくらいならバス停で3時間待ったほうがましだ。引き返そうとした時、
ーりぃんー
と、なにか聞こえた気がした。耳を澄ましてみる。
ーりぃんー
確かに聞こえた。鈴の音だ。その音を認識した途端、この森に、いやこの先に進まないといけないという義務感に駆られた。自分のことを待っている人がいる。ずっと前から。
ーなんだろう。この気持ちー
嬉しいような、切ないような、胸が締め付けられるそんな感じがする。気がつくと森の中にいた。先ほどの恐怖は川に流してしまったらしい。全然怖くない。むしろ、先に進みたくて仕方がなくなっている。次第に小走りになって行く。森は入り口で見るより暗くはなかった。木々の間から太陽の光が注いでいる。
息が軽く切れてきた頃、それはは急に現れた。赤い大きな鳥居。その先に人が1人通るのがやっとの狭い石段が続いている。思わず立ち止まる。
ーりぃんりぃんー
鈴の音はここから聞こえている。息を整え、鳥居をくぐる。瞬間、雷に打たれたような激しい衝撃が身体を貫いた。次いで、大量の音、映像が脳裏を巡った。
ースマナイー
唯一はっきり聞こえた音。誰かが自分に謝っている。
「だ、れ・・・」
そこで、意識は途絶えた。
所謂、都会という場所から新幹線で3時間。そこから特急電車に乗り換えて1時間。更に、1時間に1本しかない鈍行列車に30分程乗車する。その後、1日に数本しか運行していないバスに揺られ、今に至る。
人っ子一人いない。周りは田んぼだらけだ。遠くには多分なんとか連峰とかいう名前が付いていそうな山々が連なっているし、空は抜けるような青さだ。たまに、ピーヒョロロと鳶が鳴き、旋回して去って行く。
古びたバス停の横には、これまた古びたベンチが置かれている。雨よけなのだろうトタンの屋根付きだ。しかし、それも錆びかけ所々穴が空いている。ベンチも傾いているため、座るには心許ない。
ーゆっくりおいでー
そう祖父母には言われた。しかし、教わった住所から交通手段を検索した時、愕然とした。逆算しても早朝に出なければ、足がなくなってしまうのである。とは言っても、早朝に出たところで昼過ぎには着いてしまうし、待ち合わせは夕方だから、3時間近く持て余す羽目になる。何もないところだろうとは予想していたが、予想通り過ぎて困ってしまう。
「さてと。どうしたもんかな。」
祖父母に電話をして迎えにきてもらうか。スマートフォンを取り出すと、画面を見てぎょっとする。
「おいおい!圏外って、まじか。」
がっくりと膝をつく。これは予想していなかった。
「・・・歩くか。」
幸い大方荷物は先に送っているので、持ち物は背に負ったリュックだけだ。
「ここに住むんだし、地形を知っておくのはいいことだよな!」
前向きに考える事にした。スマートフォンに保存した地図を表示する。祖母の手書きの地図だ。まずはバス停を背に右に進む。どれくらい先なのかは不明だ。とにかくまっすぐに道は続いており、田んぼに続く畦道が左右に伸びている。20分程歩くと、川に突き当たった。膝まで届くか否かの深さだろう。水は透き通って、魚が泳いでいるのが見える。鱗に日が反射してキラリと光った。
ー気持ち良さそうだな。今度入ってみようー
再度地図を確認する。ここを左に行くらしい。視線を移す。
「・・・ばぁちゃん。ここを行けって本気で言ってんの?」
視線の先にあるもの、それは鬱蒼とした森だった。細い石畳みが敷かれている。どうやら人の通りはあるらしい。その石畳みに沿うようにして川からの支流がちょろちょろと流れている。だが、目視できるのは数メートル先までだ。その先はまだ昼間だというのに暗くてよく見えない。はっきり言おう。怖い。とても怖い。ここを行くくらいならバス停で3時間待ったほうがましだ。引き返そうとした時、
ーりぃんー
と、なにか聞こえた気がした。耳を澄ましてみる。
ーりぃんー
確かに聞こえた。鈴の音だ。その音を認識した途端、この森に、いやこの先に進まないといけないという義務感に駆られた。自分のことを待っている人がいる。ずっと前から。
ーなんだろう。この気持ちー
嬉しいような、切ないような、胸が締め付けられるそんな感じがする。気がつくと森の中にいた。先ほどの恐怖は川に流してしまったらしい。全然怖くない。むしろ、先に進みたくて仕方がなくなっている。次第に小走りになって行く。森は入り口で見るより暗くはなかった。木々の間から太陽の光が注いでいる。
息が軽く切れてきた頃、それはは急に現れた。赤い大きな鳥居。その先に人が1人通るのがやっとの狭い石段が続いている。思わず立ち止まる。
ーりぃんりぃんー
鈴の音はここから聞こえている。息を整え、鳥居をくぐる。瞬間、雷に打たれたような激しい衝撃が身体を貫いた。次いで、大量の音、映像が脳裏を巡った。
ースマナイー
唯一はっきり聞こえた音。誰かが自分に謝っている。
「だ、れ・・・」
そこで、意識は途絶えた。
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