不法侵入ですがどうぞよろしくお願いします!~警察呼んでいいですか?~

あいう

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➁西京裕貴の話

2話

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西京裕貴は持っていないものの方が少ない。
父は世界各地に会社を持つ企業の社長。母は有名女優。勿論その血を譲り受けた西京は、後光が差すと言われるほどの美形だ。金持ちなのは当たり前として、西京個人自体のスペックも高い。難関私立校に小学校から高校生まで在籍。大学は名前を言えばどんな女でも股を開くほどの国内最難関を卒業。次男なので変な跡取り強制も無し!
艶やかな黒髪にぱっちりとした二重。例えどんな安いスーツも超高級スーツに見せてしまうこの恵まれた身長と容姿。
そして極めつけは人生の勝ちを約束された顔!(二回言う)
 ああ、なんてことだろう。神は時に二物も三物も与えてしまうのだ。
 きっとこうして行きつけのゲイバーで酒を傾ける姿も様になっているに違いない。ここに画家がいれば、どうかそのお姿を描かせてほしいと首を垂れてしまうだろう。オレは生きているだけで賞賛される罪なオトコだ……。
 何の不安もない人生。
つまらないものだ、何をしても上手くいってしまうというのは……。
「でもお前無職じゃん」
 モヒートをマドラーでかき回しながら、旧友の中野はぼやく。
「当然だ。働くという事は、時間を金銭に変えるだけの行為だ。最初から金を持っている人間が働く必要はないだろう」
「いや~、ほら、いろいろメリットあるじゃん。地位とか、社会的な安心の証明とか、金とか。それに労働は国民の義務なんだぜ?」
「地位も名誉もオレは既に持っているからな。カードは使い放題で金の心配も無し。労働は国民の義務? くだらない話だ。そういうのはやる気がある奴だけやればいい」
 中野は「お前らしい答えだ」とため息をつくと、グラスからマドラーを引き抜くと、それで西京をさして言った。
「いいか? 社会に出ないと――、と言うかお前の中の世界から出ない事には、お前の理想の配偶者に会うチャンスも減るってことだ。お前はそれでいいのか?」
 品がないと人差し指で向けられたマドラーをさげる。
「確かにその意見も一理ある。だが、中野。オレが常日頃から言っているその理想の人間はどんな奴だと思う?」
 中野はうんざりしたように片手でナッツを摘まみながら答えた。
「若くてお前に三歩下がってついてくるヤマトナデシコ、だろ?」
「うむ。よくわかっているじゃないか」
「そんなお前に良い話を持ってきてやった」
中野は会社用の鞄から一枚の紙きれを取り出す。
「バーベキュー……?」
それは中野が所属している会社の福利厚生の一環なのであろう。『日々の疲れを労おう、バーベキュー会!』の見出しがついたチラシには前年度の社員たちが引き攣った笑顔を張り付けた写真が乗せられている。
「これにオレは関係ないだろう」
「まあココ見てみろよ」
 ほろ酔いの彼が指さした一文に、西京は首を傾げる。
『配偶者、友人同行もOK!』
「……オレはキミの配偶者ではないが」
「まだ友人ではあるだろ!?」
 それはそうかと、そのコピー用紙を手に取り詳細まで目を通す。
 中野の所属する会社も、西京の父親が経営する会社ほどではないが、大企業のくくりとは言える。参加費は八千円、参加は自由……。中野はどうやら西京にこのイベントに参加してほしいらしい。
「それはそうと、いったい何故そんなものにオレが行く必要が?」
「嫁探しだよ、嫁探し!」
「嫁探し」
「いつまでも伴侶を持たないお前にぃ、唯一のお友達の俺が協力してやろうって話!」
確かに西京は遊びの経験ならば数あるものの、特定の人間と交際はしたことがない。
それは金目当ての女や男ばかりだったからに他にはない。そんな有象無象は自分の娶る者にはふさわしくない。やはり日本男児に生まれたからには、立てば約癪、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。交際するのならそんな人間と結ばれたいのだ。
西京には確信があった。自分と言うケース、つまりこれだけ男の中の男のような人間が実在するのだ。なら逆もありなん。
「わかった。行こうじゃないか。そのバーベキューとやらに」
「よっしゃ決まり!」
 だが期待はしない。完璧な自分の妻となる者が、馬鹿にするわけではないが、中野などの所属している会社にいるわけがない。妻はもっと、自分と釣り合うような家柄で、価値観を持っていないといけない。
と、言う理想はこの日、一気に崩れ去った。
「あ、こんにちは篠原さん。今日は娘さん連れてきたんですね」
「園がお休みなので……。やっぱり迷惑でしたか」
「いえいえそんなこと。俺もツレと来てるんです。こちらが友人の西京」
彼等を見た瞬間、裕貴は雷に打たれたような衝撃を受けた。
柔らかそうで細い栗色の髪、つまようじが何本も乗るような長いまつげ、大きな黒目に薄いピンク色の唇……。
「キミはフリーか!? 一目惚れした! オレと付き合ってくれ!」
西京は膝をついて相手の手を握る。その瞬間、周りの空気が凍った雰囲気がした。
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