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夜、一人、電車に揺られながら

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「列車が参ります。ご注意ください」




ホームの奥からガタン、ゴトンと音を立て列車が近づいてくる。



友達に誘われ、慣れない都会に遊びに来た帰り。来る時と同じホームに立っていた。



疲れたせいか、体が少しだるい。



友達とは帰り道は別。

だから、今は、僕一人だけ。





空は日が完全に落ち、暗くなっていた。

けれど、街の灯りのせいで星が見えない。




都会特有の町の騒音が薄く響く。



周囲には乗車を待つ人が数人。

ほんの少しだけ会話をする雑音が聞こえる。



僕は一人



左手には、買った商品が入っている少しだけ重い袋を持っている。

持ちての部分が手に食い込んですこし痛い。





ホームに入ってきた列車が、キィーという甲高い音を立てブレーキを掛けながらゆっくりと、目の前に止まる。




ピーンポーンという電子音を鳴らし、列車のドアが開いた。



僕は列車の中に入る。



白く発光する連なった蛍光灯。

無数の手すり。




中にはほとんど人はいなかった。



対面にある横長の座席の一番端に座り、重たかった荷物を膝の上に置く。



目の前にあるドアの向こうから薄い騒音が響く。




「ドアが閉まります。ご注意ください」

という声と共にドアがプシューと音を立てて閉まっていく。




騒音が消える。










、、




、、、







列車がウオォーンと音を立てながら、徐々に速度を上げてゆく。



いつもより深めに座った体を少し傾け、仕切りに体重を乗せる。




ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン




窓から景色が見える。

遠くの方に輝く高層ビルがいくつかある。

周りには光る点が無数。

そんな景色が進行方向とは逆に流れてゆく。



ただそんな風景をボーっと見る。



ただ流れてゆく。




ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン




電車が揺れる。

体が、揺らされる。




ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン




都会から離れてゆく、景色がだんだんと暗くなってゆく。

光の粒が減ってゆく。



列車の進む音だけがする。




ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン





無数の手すりが、揺れている



列車は進んでゆく。





ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン





自分、ただ一人。



ただボーっと。





ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン





列車は進んでゆく。





ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン






終点が、近づいてくる。






ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン





ふと思う。




このままここに居られればいいのにな、と






ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン









ガタン、ゴトン





















-終-
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