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第二章 異世界でなんとか生きてます

第15話 ランタンの術式付与の代金を受取る

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「ホーッ、レイ殿はラナ殿と模擬戦をしたのですか。
 それは、観てみたかったですね。」

ニコルは、残念そうに言った。

「あぁ、レイは強かったよ。
 久しぶりに模擬戦をして、ポーションを使ったよ。」

ラナは、無表情ながらも少しだけ楽しそうに言った。

「ラナ、おにいちゃんは強いの?」

サーシャが、目をキラキラ輝かせながら聞いた。

「あぁ、強さだけならCランクの上位だな。
 剣などの武具を使わず体術のみなので、対戦相手との相性もあるだろうが。」

「おにいちゃん、すごいね。
 あんまり強そうにみえないのにね。」

「レイ、模擬戦では剣を使っていなかったが、なにか武器は使えるのか?」

「ある程度は使えると思いますが、実戦で使ったことはないので、どこまで使えるかはわかりません。」

剣術のスキルを適用してるけど、体術と違って元の世界では映画でも見たことがないので、実際どこまで使えるかは不明だった。
体育の授業でも剣道はなかったし、ゲームの中でも体術か銃撃戦を選んでたのでイマイチ自信がなかった。

「そうか、では明朝からちょっとみてよろうか。」

「あのぉ、手合わせはなしでお願いします。
 さすがに、毎日死にそうになるのはキツイので。」

「あぁ、今回はやりすぎたし、ポーション代もかかるから、指導のみでいいぞ。」

「じゃぁ、お願いします。」

さすがに、ボロボロになった状態から全快まで治癒するポーションは、ラナほどの冒険者であっても安い買い物ではなかったようだ。

***

「ところで、レイ殿。
 ランタンに上書きした術式の代金ですが、大中小の各30個で金貨90枚でいかがでしょうか。」

冒険者ギルドから宿に戻り、宿の裏の井戸で血やホコリを洗い流し、一段落したくらいにニコルとサーシャが市場から戻ってきた。
その後、ニコルに頼まれてアイテムボックスに入っている残りのランタン全てに、最適化された術式を上書きしたのだった。

「ニコルさん、ちょっと付与しただけで、そんなにもらえませんよ。
 せめて、その半分にしませんか。」

市場での相場をみると、この世界の貨幣単位は日本に換算すると・・・
 鉄貨1枚= 1千円
 銀貨1枚= 1万円
 金貨1枚=10万円
金貨90枚というと、900万円もの大金になる。

「レイさん、商人としていいますが、これは妥当な報酬です。
 最初は、貴族や富裕層、資金力のある冒険者への販売となり、ランタンの大きさで販売するつもりです。
  ランタン大 金貨1枚
  ランタン中 金貨2枚
  ランタン小 金貨3枚
 これ以下で販売した場合、市場が混乱するのと、ランタンの術式を書き込んでいる魔術師や職人が路頭に迷うことになります。
 どうか、この金貨を受け取ってもらえませんか。」

「そこまで言うのでしたら、わかりました。
 その変わり、最適化されたランタンの普及のために、なにか手伝わせてください。」

「レイ殿、私も明るいランタンを普及できたらと思い、お願いしようと思っていました。
 王都についたら、私と一緒に動いてもらえますか。
 それまでは、商人ギルド、魔術師ギルドなど複数の利害関係がありますので、秘密でお願いします。」

「わかりました。」

単純に付与の上書きを大量に行えば、この世界が明るくなっていいかと思っていたが、難しい話になってきた。
いたずらに混乱を招きたくはないので、ニコルさんの指示にしたがうことを決めた。

***

「では、難しい話も終わったようだし、今日は飲むか。
 今日は身体を動かしたらから、エールがうまいぞ。」

ラナが待ってましたとばかりに、声をかけた。

その後は、昨日と同じように夕食を食べ、ニコルとサーシャが部屋に戻った後も、エールを1杯だけ付き合った。




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